2025/6/20
薬剤師(薬学博士)の一宮市議会議員の中村かずひとです。
2005年にイングランドで記憶喪失の男性が保護され、名前がわからなかったのですが、ピアノが上手であったことから「ピアノマン」と呼ばれて話題になりました。後に記憶喪失は芝居であったとも言われていますが、一般的に健康な人における記憶喪失の多くは仮病であるという説があります。一過性全健忘は、仮病なんでしょうか。

■高血圧で記憶がなくなることも
急に記憶がなくなったと言いはじめた50歳代の男性が、心配した家族に連れられて受診。名前も生年月日も言えるのですが、朝からの記憶がなく、今ここにどうやって来たかわからず、さらには診察して頭部CT検査をしましたが、その説明をしている間に頭部CTを撮ったことさえ忘れていました。この男性は血圧が200mmHg以上に上がっていましたことから高血圧との関連が推測されましたが、MRIや脳波検査などを行っても異常はなく、片頭痛や頭部外傷、てんかんの既往もないことから、一過性健忘の診断基準を満たしました。失った記憶がよみがえることはありませんでしたが、翌日には全く正常に戻ったそうです。
ちなみに、一過性健忘は海馬周囲のてんかん発作、もしくは、虚血によって起こることが多いそうです。

■アルコールに弱い人はご注意を
別の一過性健忘として、泥酔してさんざん暴れた人がきちんと自宅に戻り、翌日には全く覚えていないといった話をよく聞きます。
記憶には海馬にある2つの神経細胞間で起こる長期増強というプロセスが大切なのですが、ラットを使った実験で、長期増強に関与するNMDA受容体の活動がアルコールによって半分まで低下することが分かっています。
アルコールで記憶をなくすことをBlackoutと呼ばれますが、これが起きやすい状況として、急激な血中アルコール濃度の上昇、胎児期のアルコール曝露、精神安定剤の併用などがあります。
オーストラリアの興味深い研究では、一卵性と二卵性双生児でBlackoutに差があるかを調べたところ、飲酒の習慣なども考慮した上で、Blackoutの半数以上は遺伝性であることが報告されています。
「記憶にございません」と言うことがないよう、記憶をなくしやすい状況をつくらないことが大切ですね。

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