2025/4/16
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
マンジャロ®(糖尿薬)が、名前を変えてゼップバウンド®(医療用の抗肥満薬)として発売。それってどういうことなんじゃろ?最近、この手の市場が大人気で「GLP-1ダイエット」と呼ばれています。
今日はかなり詳しく歴史とともに解説します。
=目次=
1.歴史
2.蜥蜴
3.進化
4.激化
5.功罪
食事をすると吸収した糖を細胞内に入れるため、すい臓からインスリンが出ます。
これはなんとなく理解できますが、実はこれ以外にも腸管からすい臓に対して分泌される物質がありました。これをインクレチンと呼びます(1932年発見)。ただ、結局何だかよくわからず研究が頓挫します。約30年後の1960年以降にブレイクスルーが起こり、それらはGIPとGLP-1と呼び、膵臓からインスリンを出す手助けをしていることがわかりました。より詳細はこちらを参照
・GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)
・GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)
下図で細胞の中身のごちゃごちゃは無視して、★マークのところがGIPとGLP-1です。すい臓の細胞に作用して、最終的にインスリンを出して血糖値を下げます。

GLP-1はインスリンを出す手助け(増幅)だけではなく、腸管運動の抑制、食欲抑制、グルカゴン(肝臓から糖をつくるホルモン)分泌の抑制作用なども有します。また、低血糖状態だとCaイオンが細胞内に入りにくくなりインスリンを出せないため、GLP-1は血糖値を下げるが、低血糖になりにくいとされます。
つまり、GLP-1は糖尿病にとっていい事づくめであることがわかりました。
ではGLP-1を飲んだり、注射したらいいんじゃね?と思いきや、体内にはDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ4)というものがあり、GLP-1を速攻で分解してしまうのです。うーん…と研究者を悩ませました。そこに福音が訪れます。それは蜥蜴(トカゲ)のヨダレでした。

アメリカドクトカゲのヨダレ成分が、DPP-4で分解されにくいGLP-1であることがわかりました(驚)。このトカゲは絶食状態でも低血糖にならなかった…そこに研究者が着目したそうです。動物のマニアックな基礎研究が、ブレイクスルーとなった良い例です。
アメリカではさっそくこの成分を医薬品にして、成分名をエキセナチド、商品名をバイエッタ®として販売しました。これが世界初のGLP-1作動薬となります。
バイエッタ®は画期的とはいえ、1日2回の自己注射が必要でした。長く効いて1日1回なれば便利なのに…と開発されたのが、ヒトGLP-1を改造したリラグリチド(商品名:ビクトーザ®)です。糖尿病界のトップ企業であるノボノルディスク社が作りました。

トカゲの成分とは違い、人間のGLP-1を使っているのでアレルギー反応が起こりにくく、かつ”1日1回”ということで市場が奪われていきます。自分が営業だったら「トカゲじゃなくてヒトのGLP-1使いましょうよ~」とか医者に言ってそうだ…。
バイエッタ®は巻き返しを図るべく、技術を駆使して1日1回製剤(ビデュリオン®)を販売しましたが、市場奪還とはならず販売中止となっています。フランスのサノフィ社が、トカゲ成分自体を改造したリキシセナチド(リキスミア®)を開発・販売しましたが、今年に販売終了となりました。
売れるとわかれば開発競争が激化します。
週に1回投与製剤デュラグルチド(トルリシティ®アテオス)が登場します。リリー社と大日本住友の共同開発品で、お腹に当てて押すだけの注射器デバイスなので、アテオス®。オシャレなのかダジャレなのか^^
さらに効果を強力にしたセマグルチド(オゼンピック®)が登場します。再びノボノルディスク社が出しました。しかも注射薬だけではなく、口から飲める経口薬(リベルサス®)も続けて開発したのです。私もこれには非常に衝撃的でした。
リリー社も負けていません。なんと、さらにさらに進化させたチルゼパチド(マンジャロ®)を登場させました。これはセマグルチドよりもさらに効果を上げ、GLP-1だけではなく、GIPにも効果があるという世界初のデュアル作動薬なのです。

このように、リリー社 vs ノボノルディスク社の激しい競争が続きます。

冒頭、GLP-1には食欲抑制の効果があると書きました。その他、GLP-1は非常に多くの作用を持っているのです。心保護作用などは今後、適応拡大される可能性も十分にありそうです。
効果が高いGLP-1作動薬ほど、ダイエット効果も高いことが分かっています。

もうこの際、ダイエットに使おうZE!となったわけです。ここから少しややこしいですが。
ビクトーザ®は糖尿病薬として日・米・欧で発売されています。
同じ成分(リラグリチド)で用量を変えた製剤(サクセンダ®Saxcenda)が抗肥満薬として、米・欧では販売されています。一方、日本では未承認薬となっていますが、欧米で使用されていることもあり、ダイエットの自費診療に使いやすくサクセンダ®がよく宣伝されています。
2024年、セマグルチド(オゼンピック®)がウゴービ®と名前を変えて、抗肥満薬として発売されました。マジンドールという飲み薬が唯一の肥満症薬でしたので、約30年ぶりの保険適応の医薬品となります。そして、2025年4月11日に、チルゼパチド(マンジャロ®)が、ゼップバウンド®として発売されました。
【よくない事態に・・・】
GLP-1ブームで、トルリシティ®アテオスが品薄となりました。代替品として、オゼンピック®の処方が増えました。加えてGLP-1ダイエットブームにより、糖尿病で使用されるオゼンピック®やマンジャロ®が超絶不足の状態となりました。使い切りタイプのキット製剤を中止して、従来品を製造することで供給量を確保したそうですが、この期間、薬局は薬剤確保に翻弄され、医師・患者には文句を言われて大変だったことは容易に想像がつきます。
確かにGLP-1作動薬は痩せます。私も使いたいぐらい・・・。発見した経緯や研究者の熱意も感じます。けども、肥満症に関しては特殊例を除き、食べなければ良い話です。つまり、飽食の国がもたらした結果ですよね。そんなところにバカスカ税金すらかけているわけですが、食もままならない貧困国から見たらどうでしょうか。
何がSDGsなの?GLP-1系薬が「ダイエット」で使われてる国と、感染症すら満足に治療できない国との差は、その矛盾はどう考えるのでしょうか?それを見ないで考えないで”SDGs!”とか綺麗ごとを並べている製薬会社が、関係団体が、政府が、いったい何かを考えているのか私にはわかりませんね。

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