2024/7/2
こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。
今日は薬の話です。
最近は、糖尿病薬であるSGLT-2阻害薬を使ったダイエットも登場しています。ちょっとリスクが高いように思います。
以前書いたブログ記事:SNS広告で「やせる薬」と紹介 【メトホルミン】
ただ、このSGLT-2の仕組み自体が、人間の体のすごさ・面白さを感じさせてくれるため、ぜひ紹介したいと思います。
■ 糖を最も使う「脳」
人間の主要なエネルギー源であるグルコース(糖)は、小腸で吸収されます。糖を最も使う器官は「脳」であり、その栄養を確保するために体はすごい工夫をしています。そのひとつが腎臓での「糖の再吸収システム」です。
■ 糖の再吸収システム
血液をめぐって腎臓に到達した糖は、本来なら尿と一緒に排泄されてしまいます。しかし、腎臓は糖を尿として排泄される前に、体内へ再吸収する機能を備えています(だ・か・ら痩せられないの)。
『2型糖尿病』とは、血液中の糖が過剰になり、腎臓で再吸収しきれず尿に糖が漏れ出てしまう状態を指します。

■ SGLTとは
Sodium GLucose coTransporterの略で、「ナトリウム(Na)とグルコース(糖)を共に輸送します」という意味です。
■ 発見の歴史
1960年、ロバート・クレインが小腸でナトリウムと共に糖を吸収するメカニズムを発見しました。1970年代にその構造が明らかとなり、SGLT(ナトリウム・グルコース共輸送体)と呼ばれるようになりました。
最初に見つかったのは小腸に存在するSGLTでしたが、その後、腎臓にも同様の仕組みがあることが判明しました。当初発見された腎臓のSGLTは全体の10%程度の役割しか担っておらず、研究が進む中で、腎臓で90%の再吸収を担う別のSGLTが見つかりました。
先に見つかって小腸に多く存在するものをSGLT-1、その後に見つかった腎臓に多く存在するものをSGLT-2と命名しました。
■ SGLT1と2の違い
腎臓では、SGLT-2が大部分の糖を再吸収し、残りをSGLT-1がフォローする仕組みになっています。

■ SGLT阻害の発見
1835年、SGLTという存在が見つかる遥か昔に、リンゴの樹皮からフロリジンが発見されました。1886年には動物実験で血糖値を下げ、糖尿病を改善する効果が確認されました。
しかし、フロリジンはSGLT-1とSGLT-2の両方を阻害してしまいました。SGLT-1の大部分は小腸にもあるため、これを阻害してしまうと糖の吸収ができなくなり「下痢」を引き起こします。また物質自体が吸収される前に分解されるため、飲み薬として利用できませんでした。
飲み薬になるためには、①腸で分解されないこと、②SGLT-1を阻害しないこと、が必要条件だったのです。

■ 実用化には時間がかかった
1800年代に薬効が見つかりましたが実用化できず。1900年代にSGLT-1・2が発見され、2000年代になってようやく実用化に至りました。
日本では2014年に医薬品としての使用が始まりました。
SGLT-2阻害薬は、日本で5種類も販売されていますが(2024年現在)、いずれも分子構造内に糖(グルコース)を含みます。糖に似せることでSGLT-2に“間違ってキャッチさせる”という発想なのです。

■ 安全性の懸念が強かった
この薬は、腎臓での糖再吸収を抑え、余分な糖を尿と一緒に排出させるというコンセプトです。
そのため、当初は「脱水や低血糖のリスクが高く、死亡のリスクがある」と懸念されていました。
しかし想定とは異なり実際には、そうはなりませんでした。ここが人間のすごいところです。
■ SGLT-1のサポート能力
理由はSGLT-1の存在です。SGLT-2を阻害しても、SGLT-1が残りの糖を吸収します。通常はSGLT-2が大部分を担い、SGLT-1が残りを処理しますが、薬でSGLT-2が止まるとSGLT-1がフル稼働して、最低限の糖を再吸収するのです。
この働きにより、最も恐れられていた低血糖は起こりにくいことがわかりました。
「SGLT-2というメイン武器を失っても、SGLT-1というサブウェポンがフルパワーで戦う」という、人間の体の仕組みには本当に驚かされます。

■ 副作用
もちろん薬なので副作用もあります。
また、体重減少効果はあるものの、安易なダイエット目的での使用にはリスクが大きいと感じます。

■ 糖の吸収について
食事由来の糖分は小腸から吸収されますが、その主役はSGLT-1です。SGLTにはナトリウムが必須であるため、スポーツドリンクや経口補水液には必ずナトリウムが含まれています。
「塩を摂ると炭水化物が美味しく感じる(ポテチとか)」のは、吸収効率が上がることを体が示しているのかもしれませんね。なお、糖の吸収経路には他にも存在が示唆されていますが、詳細はまだ不明です。
いかがでしたでしょうか。
野生環境下では、なかなか糖分を潤沢に摂取することはできません。少しでも無駄にしないように人間の体は糖を脂肪としてため込み、少し流れ出ないように腎臓がしっかり働いているのです。ダイエット目的に、安易に自然の摂理を抑え込むのは、気持ちはわかるのですが少し抵抗を感じますね。
SGLT-1とSGLT-2の違いを解明し、薬として実用化されるまでにかなりの長い年月がかかりました。研究に携わった人々には、まさに「アッパレ」と言いたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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