2025/1/6
こんにちは。兵庫県川西市議会月議員の長田たくや(ながたく)です。
インスリン製剤の開発競争について第2回です。
※インスリン開発競争シリーズは3部
①世紀の大発見
②超スピード型への挑戦
③なが~く効くために
前回は動物抽出インスリンからヒトインスリンへの進化を紹介しました。今回は、そのヒトインスリンに対する「もっと早く効いてほしい!」という欲求不満から始まった開発競争物語です。
■ 人間のインスリンパターン
下図のように、人間のインスリン分泌は基礎分泌と追加分泌があり、食後にピークが出ます。
インスリン製剤も、この人間の動きに近いものを目指そうと研究が進みました。

なお、欧米人のインスリンピークは日本人より立ち上がりが急激です。

食文化の違いによる影響が大きいと考えられます。ただ、日本の食も西欧化した今、日本でも急激な立ち上がりが必要となってきました。
「アナログ」とは「類似物質」の意味。ギリシャ語の analogos(対応する・類似する)から来ています。
デジタル⇔アナログの用語とは別物(ここ大事)。化学では「似たもの」というニュアンスで使われます。
ヒトインスリン合成が確立されると、「じゃあ、アミノ酸をちょっといじってみよう!」という発想が出てきました。
ちなみにスペルは米国で analog、英国で analogue が一般的です。
■ 超即効型インスリンの誕生
1995年にイーライ・リリー社(以下、リリー)が、インスリン・リスプロを有効成分とする「ヒューマログ®」を発売。またしても世界初はリリーでした。
次に、1999年にノボ・ノルディスク社(以下、ノボ)がインスリン・アスパルトを有効成分とする「ノボラピッド®」を発売。しばらくはこれらが業界ツートップを走ります。2004年にアベンティスファーマ社(現サノフィ)は、インスリン・グルリジンを有効成分とする「アピドラ®」を発売。
歴史は繰り返すもので、初めてのインスリンではリリー社が先行し、その後ノボ、サノフィと続きました。
それぞれアミノ酸の一部を下図のように改変した製剤で、名前にも速さをイメージさせる言葉が使われていますね。

インスリン・リスプロなど有効成分は、いじったアミノ酸からもじった名前になっていて、商品名は速さを表す言葉が使用されていますね。
■ なぜ早くなるのか
通常、インスリンは皮下注射後に六量体(6個の分子の集合体)から単量体に分かれないと血中に入りません。ここに時間がかかるのです。
アミノ酸を改変することで、この六量体が分解しやすくなり、即効性が実現しました。なお、六量体の安定には亜鉛が関与しており、インスリン製剤には保存安定のため亜鉛が添加されています。

【亜鉛フリーのインスリン:アピドラ】
世の中には亜鉛アレルギーの人もいます。そうした人でも安心して接種できるのがアピドラ®です。アミノ酸配列を改変することで、亜鉛なしでも安定化。これは大きな成果でした。
■ 元祖とアナログの差
ヒトインスリンと加工したアナログ製剤とでは、立ち上がりとピークが大きく違います。

ちなみにヒューマログ®とノボラピッド®には有効成分の違いはあれど、臨床的な差はほぼなし。入院時に切り替えられることも普通でした。
■まぜちゃえば便利じゃね?
超速効(アナログ)、速効R(ヒトインスリン)、中間Nがラインナップされ、それぞれを組み合わせた混合製剤が生まれました。
これらの調剤がややこいの。最近はより便利な製剤も生まれ、使用頻度もかなり減りましたが…

下記は、ヒトインスリン型を使った各種製剤です。需要がなくなってきて、販売中止となっているものも多いですね。

混合製剤はプロタミンを含むため沈殿します。投与前にやさしく振る必要があり、手技上の注意が必要でした。
■ 最新のスーパー超速効型
2020年には、超速効型を超えるものが登場したのです。
ノボラピッド®注→フィアスプ®注(2020年2月登場)
ヒューマログ®注→ルムジェブ®注(同年6月登場)
ポケモンのように進化していますね。今回は鼻先でノボが勝利(笑)。
実はどちらもインスリン自体には変化がありません。注射に含まれる添加剤の変更だけです。
その結果、投与方法まで変更可能に。食後でも打っていいのは画期的。

さて、添加剤の紹介です。
フィアスプ®は、ニコチンアミド(ビタミンB3)を加えただけ。
ルムジェブ®は、添加剤クエン酸とトレプロストニルを加えただけ。
ノボとリリーのライバル関係がおもしろいですね。会社としてはリリーの方が化け物級に大きいですけどね。
フィアスプは、Faster insulin aspartから命名されていますが、ルムジェブには由来がありません。
理由があるほうが愛を感じるので、ノボの勝利!!
人間のインスリンパターンを模倣するために、超速効型が誕生しました。
次回は、持続型インスリンについてお話しします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日でありますように。
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