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【鹿児島市長選挙】畠山理仁の現地ルポ!「政治家は『どこにいるかわからない有権者』への訴えを、決してやめてはいけない」

2020/12/22

畠山理仁

畠山理仁

選挙に大切な3つの「時」

【鹿児島県の県都である鹿児島市の人口は約60万人。写真は鹿児島市役所本館】

【鹿児島市長選挙のポスター掲示場。4候補で争われるのは16年ぶり】

 選挙は時代を映す鏡である。それゆえ3つの「時」が大切だ。「時間」「時流」「時運」──。これらすべてを味方につけた者でなければ選挙に勝つことは難しい。
 日本の選挙運動期間は短い。だから「時間」との勝負になる。有権者の心をつかむには「時流」をとらえることが必要だ。そして、やるべきこと、やれることをすべてやった者にだけ「時の運」が転がり込んでくる。
 私がそのことを強く感じたのは、鹿児島市長選挙で当選した下鶴隆央の選挙を見たからだ。
 投票日が2日後に迫った11月27日金曜日の夕方17時すぎ。私は鹿児島市内北部に位置する大型スーパー・「タイヨー花棚(けだな)店」の前にいた。あと10分もすれば、ここに下鶴がやってくる。
 市内を南北に走る県道16号線は片側2車線で交通量が多い。金曜日の夕方は買い物客の出入りも増える。間違いなく不特定多数の目に止まる時間と場所である。有権者を乗せた車が勝手に街宣車に近寄ってくるのだから、抜群に効率がいい。
 私が強風の中で立っていると、揃いの羽織に身を包んだ男女5人が緑色の「のぼり旗」を持ってやってきた。羽織の柄は「緑と黒の市松模様」だ。
 ピンと来た人もいるだろう。これは人気マンガ『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)を想起させる羽織だ。しかも、一度に5人いる。これだけいれば遠くからでも目立つ。彼・彼女らが手にしている旗には「若さでつくる 新しいかごしま 40歳」と書かれていた。
 選挙において、各候補がイメージカラーを打ち出すことはよく知られた戦術だ。その目的は、短期間で有権者への認知度を高めること。もう一つの理由は、公職選挙法が候補者の名前を掲示することに多くの規制を設けているからである。
 投票所で有権者に名前を書いてもらうためには、少しでも多くの「引っ掛かり=フック」があったほうがいい。街中で多く目撃した色と候補者の名前を結びつける作戦がイメージカラーなのだ。
 今回、下鶴陣営のイメージカラーは緑だった。事務所や街宣車の看板は緑を基調としており、ポスターの背景色も緑。通常であれば、スタッフは廉価な緑一色のジャンパーを着れば事足りる。
 しかし、下鶴陣営は緑色のスタッフジャンパーの上に、あえて「緑と黒の市松模様」を重ねていた。
 一部の市民からは「遅れてきたハロウィン」という揶揄も聞こえてきたが、市長選挙は7日間しかない。一瞬で存在を認識してもらうためには、利用できるものは何でも利用する。そんな意識が見て取れる。下鶴が大切にしていたのは「時流」である。


【11月27日金曜日の夕方にスーパー前で演説をする下鶴隆央】

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畠山理仁

畠山理仁

フリーランスライター。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者。他に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)など。興味テーマは選挙と政治家。

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