
【11月28日に天文館で行われた松永陣営の街頭演説。松永の右隣が森博幸市長。この後、森市長はスタッフジャンパーを来て街宣車に同乗。マイクを握って松永への支援を呼びかけた】
選挙では、どの陣営もやれることはすべてやろうとする。勝つために必死だ。だから選挙の現場では、思いがけない瞬間との出会いがある。
元副市長の松永には強力な応援団がついていた。4期16年を務めた現職の森博幸市長だ。森は10月15日の事務所開きにも出席し、「松永さんが次期市長にもっともふさわしい」と挨拶をしていた。事務所開きでは塩田県知事からのメッセージも紹介された。松永は塩田が7月の県知事選で事務所として使っていた物件を選挙事務所にしていた。
選挙戦の最終日、松永は鹿児島市内の繁華街・天文館で大きな集会を開いている。アーケードの下には松永が到着する前から多くの人が集まっていた。そこに滑り込んでくる街宣車のアナウンスを聞いて私は驚いた。
「松永でーす! 松永ノリノリのりよしです! 松永ノリノリのりよしです!」
ノリノリのりよし!?
街宣車が目の前を通り過ぎた時、マイクを握る人物の顔を見てさらに驚いた。なんと、必勝のはちまきを締めた松永本人が「松永ノリノリのりよしです!」と叫んでいた。
聴衆が大きな拍手で松永を迎え入れると、スーツ姿の森市長が遊説隊に合流。ウグイス嬢は大きな声で松永を紹介した。
「マスクがまだ手に入らなかった時に、『市長、市民に5枚、早くマスクを渡しましょう。保育園、幼稚園、児童クラスに消毒液をいち早く届けましょう』と声をかけたのが松永のりよしです!」
それに呼応する形で聴衆が拍手する。地元出身の俳優・西田聖志郎、そして森市長の応援演説が終わると、さらにウグイス嬢が聴衆を盛り上げる。
「今日の南日本新聞に載っておりました! リーダーとして尊敬する著名人、その第3位に、森市長の名前が上がっておりました。こんな素晴らしいリーダーから、しっかりバトンを受け取って、ゼロからスタートするのではなく、同じ速さで、全速力で鹿児島を担っていきます」
これは嘘ではない。確かに森市長は「リーダーとして理想の著名人」ランキングの第3位に名前が挙がっていた。私も実際に南日本新聞の記事を見た。しかし、記事には名前を挙げた人の数も載っていた。その内訳を見ると、このアナウンスから受ける印象は少し変わるかもしれない。実際の新聞に載っていたランキングは次の通りである。
1位 吉村大阪府知事=12人
2位 橋下徹=8人
3位 森博幸、田中角栄、小泉純一郎、池上彰=5人
4位 西郷隆盛=4人
5位 鈴木北海道知事、工藤公康、イチロー=3人
ウグイス嬢の勢いあるアナウンスに続いて松永はマイクを握った。
「松永のりよし、松永ノリノリのりよしでございます。今、まさにノッております。松永のりよしでございます!」
演説場所は土曜日の繁華街。しかし、聴衆にはスーツにネクタイ姿の人が目立っていた。
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