選挙ドットコム

【鹿児島市長選挙】畠山理仁の現地ルポ!「政治家は『どこにいるかわからない有権者』への訴えを、決してやめてはいけない」

2020/12/22

畠山理仁

畠山理仁

LINEやYouTubeへの反応

【桂田美智子は市長選挙3度目の挑戦。団地を中心にきめ細かく演説を重ねていた】

 私には鹿児島在住の友人がいる。彼には市長選前から協力を仰ぎ、地元紙・南日本新聞に掲載された市長選関連の記事をスクラップしてもらっていた。
 選挙期間中の朝刊には、その日に予定される各陣営の「主な動き」が掲載されている。その記事を告示日からチェックしていた私は、11月26日の「主な動き」を見て驚いた。桂田陣営の予定として、びっくりするような情報が書かれていたのである。
「桂田氏は休み。」
 思わず二度見した。しかし、新聞に印刷された文字は変わらない。繰り返しになるが、市長選挙は7日間しかない。桂田陣営は代理弁士を立てていたが、なにか重大な問題でも生じたのかと心配になった。
 しかし、私が選挙戦最終日に現地で見た桂田は、元気いっぱいに演説していた。桂田は団地を中心に、一日に何カ所も細かく回っていた。決して手を抜いていたわけではない。
 私はもちろん自民党が推薦する上門秀彦の活動も現地で見ている。上門の活動を見たのは選挙戦最終日の午前と午後の2回。いずれも豪華な顔ぶれによる街頭演説だった。上門は自身の街宣車に自民党鹿児島県連が所有する大型街宣車「あさかぜ」を伴い、車上から演説を行なった。
 午前中に行われた鹿児島中央駅での演説には、次期衆議院議員総選挙で鹿児島1区の公認を争う2人が車上に現れた。宮路拓馬衆議院議員(比例九州ブロック)と、前回総選挙で鹿児島1区から出馬して落選した保岡宏武だ。2人の演説を聞けたことで、次期総選挙取材のポイントが見えた気がした。
 新型コロナ禍での選挙では、SNSの重要性が増している。上門の演説で気づいたのは、自民党がしっかりとSNSを活用しようとしていたことだ。
「みなさん、ビラの後ろをみて下さい。そこにQRコードがあります。LINEのお友だち登録をぜひお願いします!」
 午前中に行われた鹿児島中央駅での街頭演説で、マイクを持って前説をする男性が力強く叫んだ。ところが会場に集った人びとの多くは年配の男性が多く、呼びかけに反応する人は少ない。
 私がさっそくQRコードを読み込んで「お友だち」登録すると、LINEの画面に上門の公式サイトへのリンクやマニフェスト、ツイッターやFacebookのリンクが表示された。
 よく見ると魅力的なコンテンツが盛り込まれている。
「漫画うえかどサイド物語(ストーリー)」
「あの曲がきけるよ! うえかどさん」
 漫画は全4ページでオールカラー。上門のこれまでの歩みが描かれていた。
 そして、もっと気になったのが「あの曲」だ。
 なんだろうと思ってリンク先に飛んでみると、YouTubeからギターのイントロが流れてきた。上門が32年前の初選挙のときから使っているテーマソング「うえかどSAN」だという。

 一度聴いたら頭の中で何度もループする印象的な曲だ。しかし、残念ながら再生回数は800回ほどにとどまっている。ちなみに私は50回以上聴いてしまった。それくらいクセになる曲なのに、YouTubeでわざわざ聴いている人が少ない。あまりにももったいない。
 ちなみに今回の鹿児島市長選挙に立候補した4人のうち、LINEを使っていたのは上門だけだ。上門はツイッターとFacebookとLINE、下鶴はツイッターとFacebook(※下鶴も漫画で政治家としての半生を紹介していた)。松永はツイッターとFacebookとInstagram、桂田はFacebookを使っていた。
 どうやら、上門の街頭演説に集った支援者とLINEを使う層は合致していないようだった。それでも挑戦は悪いことではない。自民党は過去にもネットサポーターズクラブを早くから立ち上げ、ネット上でアクティブな活動をする支持者を増やしてきた。その意味では、なんでもやる。この姿勢は他の候補者も学ぶところがあるのではないだろうか。
 上門が午後に行った天文館での街頭演説には、自民党鹿児島県連会長である森山裕国対委員長も同席し、車上から応援演説を行なった。午前中に応援演説をした宮路は午後も車上で応援演説を行なった。しかし、ここでは保岡の出番は訪れなかった。

【選挙戦最終日、上門秀彦は天文館で街頭演説を行なった。森山裕国対委員長も車上で応援演説】

【選挙戦最終日・天文館での演説を終え、遊説に出発する上門秀彦】

この記事をシェアする

畠山理仁

畠山理仁

フリーランスライター。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者。他に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)など。興味テーマは選挙と政治家。

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

採用情報

記事ランキング

ホーム記事・コラム【鹿児島市長選挙】畠山理仁の現地ルポ!「政治家は『どこにいるかわからない有権者』への訴えを、決してやめてはいけない」

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode