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政党要件は2022年まで- 危機的状況の社民党の行く末は|次期党首 又市征治氏インタビュー

2018/2/23

宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

政権与党が民主党(当時)から自民党へと代わり、第2次安倍政権の発足から5年が経過しました。この5年の間、民主党と維新の党の一部が合流し民進党となり、さらに立憲民主党、希望の党などに分かれるなど政界は大きな動きを見せています。

一昨年2016年の参院選と東京都知事選、昨年2017年の都議選と衆院選。そして来年2019年の統一地方選と参院選に挟まれて大型選挙が予定されていない2018年。各党は現在の政治状況をどのようにとらえ、どんな準備をしているのでしょうか? それぞれのキーパーソンにお話を聞きます。インタビュアーは選挙ウォッチャーの宮原ジェフリーが務めます。今回は社民党 新党首への就任が決まっている又市征治氏にお話を伺いました。

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新党首就任までの経緯

-選挙ドットコムライター 宮原ジェフリー(以下、選挙ウォッチャー 宮原)
次期党首への就任おめでとうございます。社民党の党首選では、現在の吉田忠智党首が引退することが決まったものの当初は候補者が不在となり、各種メディアでは「立候補者ゼロ」と報道されました。そしてその後、立候補の届け出期間が延長され、又市氏に決まったという経緯が伝わっていますが、どのような背景があったのでしょうか?

-社民党新党首 又市征治氏(以下、社民党 又市氏)
次期党首への就任が決まってから「おめでとうございます」と言っていただくことが多いのですが、「めでたい」というより肩にずっしりと重い責任を背負った気分です。

まず、今回の党首選挙にあたって各種報道では「党首の成り手がなかった」といったネガティブな報道がなされましたが、実際の経緯はそうではありませんでしたのでお話させてください。

2016年の参議院選挙で現党首の吉田忠智氏が落選してしまい、議員バッジを失うことになってしまいました。来年の参院選に再び候補者として臨むとなると、党首として自由に身動きが取りにくくなります。吉田氏本人はそうした状況に責任を感じており、辞意を示したのです。私たち国会議員は全力で支える意向だったのですが、党首選挙の告示前日にやはりどうしても固辞されるということになり、話し合いの結果私が立候補することになりました

私たち社民党は理念をしっかりと共有している党ですので、それぞれの議員に理念・基本政策の違いがありません。ですので、私を含めて全ての国会議員は、話し合いで決まれば自分が党首として立つ覚悟はできています。同時に、話し合いによるプロセスを重視しているため、きちんと全国の仲間や私の地元の党員たちに説明するためには数日必要で、結果的に再告示ということになった、ということをご理解いただければと思います。

野党共闘。民進党分裂で社民党の存在感が重要に

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-選挙ウォッチャー 宮原
過去には総理大臣を輩出した社民党ですが、現在は衆議院2議席・参議院2議席と支持が伸びていない印象ですが、社民党が現在置かれている状況についてどのようにお考えでしょうか?

-社民党 又市氏
去年の衆院選は異例な選挙でした。民進党から分裂した希望の党と立憲民主党ばかりをマスメディアが取り上げましたので、他の党への注目が薄れ、結果として社民党の固定票の3割前後が立憲民主党に流れたと見られます。政党要件の1つである「得票率2%」を割ってしまい、後がなく非常に厳しい状況だと認識しています。
編集部注)政治団体が政党と認められるための条件として国会議員が5名以上所属しているか直近の総選挙、直近とその前の参院選挙のいずれかにおいて全国で2%以上の得票を獲得している必要がある。社民党は2016年の参院選で2.74%を得票しており2022年までは政党要件を満たしている。

-選挙ウォッチャー 宮原
そのような厳しい状況で臨む今国会での取り組みについて教えてください。

-社民党 又市氏
大きく2点で、私たちの存在感を出していきます。1つは安倍首相が言う「働き方改革」、もう1つは憲法改正です。

「働き方改革」については、1%の大企業や富裕層を優遇し、働く人々にしわ寄せする政治をなんとしてもやめさせます。憲法改正については9条を改悪し、集団的自衛権を行使して海外で戦争ができる自衛隊を憲法に明記するという流れを止めないといけません。
社民党としては、万が一わが国への侵害があった場合に備えた実力組織であり、常日頃の災害支援部隊としての自衛隊は大筋で認めるものの、2016年の安保法制で集団的自衛権の行使を容認された現状の自衛隊は違憲状態だと考えています。この大きな歴史の転換点に立ち向かうのが私に課された課題であり、党としての従来からの方針です。

-選挙ウォッチャー 宮原
又市氏といえば、従来から野党共闘のかなめ役として他党との調整に奔走していた印象があります。党首に就任されてからも、野党共闘は進めていくのでしょうか?

-社民党 又市氏
残念ながら国会では与党である自民党と公明党が議席の2/3を占めていますので、これを止めるためには野党共闘を進めていく必要があります。しかし、民進党は立憲民主党、民進党、希望の党、無所属の会に分裂し、数が増えてしまい共産党や自由党を含む野党共闘の距離が開いてしまった印象です。これまでも私は調整役でしたが、今後さらに私たち社民党が「接着剤の役割」を果たす重要な位置にいると認識しています。

野党再編は起こるのか?立憲民主党との合流は?

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-選挙ウォッチャー 宮原
「野党共闘」に関連して、例えば、社民党は他党との合流について検討はされているのでしょうか。

-社民党 又市氏
社民党がこれまで成し遂げてきたことや私たちの掲げる理念を考えたとき、「合流ありき」ではなく、まずは自分たちの力で党勢を拡大していこうと考えています。同時に、「政策理念が似ている立憲民主党と合流したらどうか」という声が党内外から聞こえることもあります。ただ、それには条件が3つあります。

1つ目は平和・自由・平等・共生という社民党がかかげる4つの理念、言い換えれば憲法理念の実現が共有できること。
2つ目は理念を実現するための9条改悪阻止をはじめ脱原発、米軍基地問題、自衛隊の位置付けなどの基本政策が一致すること。
3つ目はそれを実現するための運動論を共有できること。

いずれにしても立憲民主党とは様々な政策課題が大筋一致しますので共闘の重要なパートナーで、その信頼関係を積み上げてくことが重要ですので、安易な合流の議論は進めていきません。

党員とともに活動を盛り上げ、野党再編も進め、参院選で3議席を目指す

-選挙ウォッチャー 宮原
自力での再建・党勢拡大を目指すというお話が出ましたが、「国会議員が衆参2人ずつ、政党要件は2022年まで」という危機的な現状の中で、具体的にはどのような計画を立てられているのでしょうか?

-社民党 又市氏
社民党は脱原発や反戦・反基地などを訴える協力組織を全国に持っています。これは共産党を除いた他の政党にはないものです。社民党の各党員はこうした国民運動が、政権の暴走を一定程度抑止してきたという自負を持っています。こうした全国の仲間と共に党勢を拡大していきます。
具体的には、社民党だけでなく労働団体や市民団体と一緒に展開している「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が3000万筆を目標としている署名運動に党として全力で取り組んでいます。来年の統一地方選や参院選に向けて、市議会議員で当選に2000票必要なら2000人分の署名を、県会議員なら10000人分の署名を集めるくらいの運動を大々的にやっていこうと呼びかけを進め、参院選での比例2議席にあたる240万票を目標にします。
また、参院選では32の1人区の野党一本化は不可欠であり、その中で社民党公認の候補者を1人ないし2人を立てるように努力し、党として3以上議席獲得を目指します。

-選挙ウォッチャー 宮原
党勢拡大には若年層の取り込みも必要になってくると思います。若い世代に向けた党勢拡大はどのようにお考えですか?

-社民党 又市氏
まずは最低限、社民党のウェブサイトはきちっとリニューアルしなければなりません。例えば、エネルギー政策や北朝鮮問題などについて私たちの見解がすぐにわかるような文書を掲載するようにする予定です。
この他、格差・貧困の是正の問題だけでなく、外交問題でも社民党は過去に6ヵ国協議の下地になった「北東アジア総合安全保障機構構想」を提案するなど優れた政策を提案していますが、あまり知られていませんので、インターネットを通じた発信にも努力していきます。

さらに私が正式に党首に就任したら、土日を中心として可能な限り支援者や有権者の方が集まってくれるところに出向いて生の声による対話を進めていこうと思っています。

「憲法改正に賛成か反対か」はナンセンス

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-選挙ウォッチャー 宮原
最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

-社民党 又市氏
近年、「憲法改正に賛成か反対か」という世論調査がメディアで出回ることがよくありますが、これは問いの立て方がナンセンスだ、ということに気付いていただきたいと思います。

具体的に「どの条文にどんな問題があってそれを変えよう」という議論なら理解できるのですが、そういった議論にならず、「憲法が作られてから70年も経つ。古いから変えてもいいんじゃない?」と安易な議論になってしまっている印象があります。

日本は太平洋戦争で戦地・内地で310万人の国民を失い、アジアで2000万の人々を殺戮し、国土は焼け野原となりました。その反省の下、主権在民・基本的人権の尊重・恒久平和という3原則を憲法に明記し、なおかつ2度と戦争しないことを決意すると前文に書き込んだ憲法の歴史的経緯を考えないといけません。単純に自衛隊を認めるかどうか、という簡単な問いであってはなりません。

教育無償化を憲法に書き込む、という議論もありますが、憲法第26条で十分です。2009年の民社国連立政権時代に高校授業料を無償化して子ども手当を出したのを猛烈に批判したのは自民党でした。必要なのは「財源手当て」であって改憲ではありません。

若い皆さんには安易な議論に惑わされることなく、現行憲法の成立過程とその理念についてしっかりと理解していただきたいし、訴えていきたいと思います。

-選挙ウォッチャー 宮原
本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。

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宮原ジェフリー

宮原ジェフリー

選挙ライター、キュレーター(現代美術)。 1983年東京都出身。中学生時代から衆参の選挙の度に全選挙区の当落予想を続ける。ポスターデザイン、インディーズ候補、政見放送、選挙公報、街頭演説など選挙に関わること一切が関心領域。著書に『沖縄〈泡沫候補〉バトルロイヤル』(ボーダーインク)がある。

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