大分県警別府署の署員が民進党、社民党の選対が入る事務所を監視するため敷地に侵入してカメラを設置した事件ですが、これは単なるプライバシー侵害という次元の問題ではありません。
「警察権力による野党に対する選挙監視と介入 政治警察は健在だ」
ところがこの問題については、大分県警は、県警の関与を否定し、別府署署員の犯行としました。
別府署から報告はされていないというのです。
「隠しカメラ 別府署暴走「報告したら設置認められない」」(毎日新聞2016年8月26日)
「違法性に途中で気づきながら本部に報告せず、選挙運動を監視し続けた同署の「暴走」も判明。「報告したら設置を認めてもらえない」」
何としても大分県警本部、ひいては警察庁の関与はなかったということにならなければなりません。
仮に署員が暴走したのは何故でしょう。このようなことで野党候補の陣営から逮捕者を出し、ひいてはそれが野党候補の当選を阻止したということになれば、「大手柄」になるからです。
これに対する警察庁の対応があまりにもひどいものです。
「大分県警隠しカメラ、警察庁長官「不適正な捜査」」(TBS2016年9月1日)
「大分県警・別府警察署の署員2人が参議院選挙の公示前後に野党を支援する団体が入る敷地に無断で侵入し、隠しカメラ2台を設置し、録画していたもので、1日、警察庁の坂口正芳長官は不適正な捜査だとして再発防止に努める考えを示しました。」
「警察庁は、全国の警察に捜査用カメラの適正な使用を指示し、再発防止の徹底を指導していくとしています。」
警察庁は、捜査用カメラの使用の方法の問題に矮小化しています。
違います。野党の選対事務所に対して意図的に行ったことが一番の問題です。民主主義に対する警察権力による蹂躙こそが問題なのに、捜査カメラの使用方法の問題とすることは単にプライバシー侵害問題に矮小化させるものであって、絶対に許されません。
先に述べたとおり、これは警察の体質の問題です。
反体制的な主義主張を行う政党、団体、個人に対する監視行動を行っているということであり、それは警察全体が政治警察と化していることこそ最大の問題です。
こういった体質があるからこそ別府署の署員が「暴走」する結果になったのですから、再発防止というのであれば、警察庁は責任をもってこの政治警察そのものを解体しなければなりません。
何よりも安倍政権は、今、共謀罪を「テロ準備罪」(偽称名)に変えてその成立を狙っています。
「廃案になった共謀罪が「テロ等組織犯罪準備罪」で復活するという謀略 「偽称名:テロ準備罪」をよろしく」
テロ準備を未然に防ぐために逮捕するという名目で国民を監視する体制を作り上げようとしているのですが、この監視の主体となるのがまさに政治警察です。
この共謀罪の特徴は、どこからどこまでが犯罪となるのかが不明確なところにあります。捜査機関の恣意的運用を可能とするところに最大の特徴があります。
そのような警察のあり方は、日本の戦前の特高警察やナチスのゲシュタポと何ら変わりません。
※本記事は「弁護士 猪野 亨のブログ」の6月10日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。
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