安全保障関連法案を審議する参議院の平和安全法制特別委員会が、本日午後6時から始まり、安倍晋三首相が出席して締めくくりの質疑を行う予定です。
これに先立ち自民、公明両党と、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革の野党3党首が会談し、自衛隊を派遣する際の国会の関与を強めるための付帯決議と閣議決定を行うことで合意し、3党は参議院で法案採決に賛成することとなりました。
安保法案に対する野党の立場は、「反対」多数派と「賛成」少数派に分かれますが、その理由や立場は様々です。特に集団的自衛権の閣議決定に対する衆院選時の各党の公約を比較すると、以下の3つに分かれていました。
1.集団的自衛権行使を容認、具体的な安全保障法制の整備を検討する方針(維新・次世代・改革・減税)
2.集団的自衛権行使についての賛否に係わらず、閣議決定による解釈改憲という手続きに異議(民主・生活)
3.集団的自衛権の行使容認そのものに反対(共産・社民)
その後、政府案に対案を提出していた維新の党は、修正案作成のための審議が不十分などとして、現政府が提出する安保関連法案の採決拒否も辞さないとの立場をとるようになりました。
野党各党の態度と主張を簡単に振り返りたいと思います。
最大野党の民主党は、政府の法案を「立憲主義に反した便宜的・意図的な解釈変更であり、専守防衛の原則から明らかに逸脱している」と批判。「専守防衛に徹する観点から、安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」との立場をとっています。
維新や他党が対案を提出し、与党との審議の動きを見せるのに対し、対案を提出しない民主党に自民党側からは対案の提出を促す発言が連発。安倍首相も「野党にも対案、独自案を出してもらい、できる限り一致点を見いだす努力を重ねていくことが与野党を問わず政治家の責務だ」と発言しました。枝野幸男幹事長や参院議員の蓮舫代表代行は「違憲法案への対案などあり得ない」などと反論していましたが、朝日新聞は7月24日、民主党内でも、国会論戦で政府・与党を徹底的に追及する「批判野党」か、対案をまとめて政権担当能力を示す「責任野党」か、対応が分かれていることを詳報しています。
その後、党内では責任野党路線を行く党員らの動きによって、党として法案の一部の対案を作成することを了承しました。来年参院選での共闘を視野に入れる民主党の細野豪志、維新の今井雅人両政調会長は8月12日、国会内で会談し、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処する領域警備法案、国連平和維持活動(PKO)協力法改正案、周辺事態法改正案の3法案を参院に共同提出することも視野に協議を開始。今月4日には、グレーゾーン事態に対処するための「領域警備法案」を維新の党と共同で提出しました。
「責任野党」を掲げる維新の党は、8月20日、安保法案の対案8法案のうち、5法案を参院に提出しました。政府が集団的自衛権行使の条件とした「存立危機事態」を認めず、個別的自衛権を事実上拡大する「武力攻撃危機事態」を新設するのが柱。5法案は、武力攻撃危機事態の新設▽在外邦人の救出規定▽米軍に対する武器弾薬以外の物品・役務提供の拡充▽武器を不正使用した自衛官の処罰規定▽非戦闘地域への自衛隊海外派遣を規定(恒久法)――のそれぞれの関連法案です。
また今月3日には、政府の安全保障関連法案への対案となる国連平和維持活動(PKO)協力法改正案と周辺事態法改正案を単独で参院に提出。4日には、グレーゾーン事態に対処するための「領域警備法案」を民主党と共同で提出しました。
しかし、その間、維新は橋下徹元最高顧問ら大阪組の離党などの内紛が勃発し、修正協議は難航。今月11日、産経新聞は「維新の党は国会内で自民、公明両党と安全保障関連法案の対案に関する修正協議を行ったが、平行線に終わった」と報道しました。同紙によると、松野頼久代表は10日の記者会見で「(与党に)われわれの案が全く入れられない場合」と前置きした上で「違憲の法案を強行採決で国会を通過させるということだから当然不信任に値する」と強調したといいます。
法案に真っ向から反対しているのは、共産党と社民党です。終戦の日、各政党が声明を発表する中、共産は「安倍政権は平和の歩みを断ち切り、戦争法案を強行し、日本を米とともに『海外で戦争をする国』につくりかえようとしている」と批判。社民も「憲法解釈をねじ曲げて『戦争できる国』に突き進む、安倍独裁政治を断じて許すわけにはいかない」と訴えました。
国会審議では、共産党の小池晃政策委員長は8月11日の参院平和安全法制特別委員会で、自衛隊統合幕僚監部が安全保障関連法案の成立を前提に、今の法律ではできないPKO派遣部隊の運用についての内部資料を作成していたと指摘。9月2日には、共産党仁平聡平議員が防衛省の内部資料として、河野克俊統合幕僚長が昨年12月に訪米した際の米軍幹部との会談記録とされる文書を提示。その中で河野氏が安保法制は夏までに終わる見通しを伝えていたことを指摘しました。自民党はこれらの文書の存在を認め、国会では波紋を呼んでいます。
9月3日、次世代、元気、改革の野党3党は、自衛隊を海外派遣する際の国会承認規定をより厳格にするなどを求めた「修正案」を提出しました。その結果、自民、公明両党は修正協議に入り、本日5党での合意に達しました。合意事項の詳細は以下のPDFをご覧ください。
次世代の党の和田政宗幹事長は、Twitter上で「我が党などが求めていた国会による例外なき事前承認について、法案の修正はしないものの閣議決定で法案修正と同様の内容を担保する。国会が全て事前にチェックするため「戦争法案」にはならない」と発言。
日本を元気にする会の松田公太代表は「心腸寸断の思いながら、政府を縛るという意味においては極めて強い効力がある「閣議決定」を受け入れることにしました」とブログで発信し、同じく日本を元気にする会の山田太郎政調会長は「今回、この“歯止め”修正案を提出したのは、このまま通ってしまうのであれば、政府に要求を飲ませ、それが、将来的な“歯止め”にすることを目指したからです」と、今回の修正協議がセカンドベストであるとして、“歯止め”を勝ち取ったことを強調しています。
次世代、元気、改革の参院会派は計14人に過ぎませんが、与党にとっては、野党の一部に理解を求め採決に参加してもらうことで、国民への強行採決というネガティブなイメージを防ぎたいという狙いがあったと見られています。与党は民主党などの出方を見て、今夜中に法案の採決に踏み切る構えです。
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