9月16日夜から19日未明にかけて、言論の府たる国会、就中「良識の府」「再考の院」たることが期待されている参議院を舞台に、安全保障関連法案の今国会(第189通常国会)での成立を期す政府・与党と、「あらゆる手段」を講じて同法案の成立を阻止しようとする野党第一党の民主党をはじめ野党各党との間で、品が悪いとの誹りも免れないような激しい攻防が展開された。
この混乱の陰に隠れる形になってしまったが、15日に、自民・公明両党と日本を元気にする会・次世代の党・新党改革の野党三党との間で、法案の修正に関する協議がまとまった。政府が提出した法案そのものの修正は行わないものの、付帯決議をつけ、閣議決定を行うという形で、法案の内容に修正を加えることで合意したのである。これを受けて、野党三党は賛成に回った。
修正協議で合意した主な内容は次のとおりである(出典:読売新聞9月17日付朝刊)。
この修正合意について、マスコミ等の報道では政府・与党が「強行」採決に踏み切ったとの印象を薄めるために譲歩したという側面が強調されがちである。しかし、肯定的に評価されるべき側面も同時に持ち合わせていることを見過ごしてはならない。すなわち、衆議院の「カーボンコピー」に過ぎない(から不要である)との批判にさらされ続けてきた参議院が、その存在意義を一定程度示したということである。
政府・与党が野党三党の提案を一部受け入れたことで、参議院で可決された法案の内容は、衆議院で可決された法案の内容と全く同一ではなくなった。自衛隊の海外派遣に際して国会が関与する度合いを強めることを主眼に置くこの修正は、決して十分ではないものの、国民の不安を低減させる一助となるものと言えるが、仮に我が国が一院制をとっていたら実現しなかった。その意味で、安全保障関連法案の審議過程で参議院、そして修正合意にこぎ着けた元気・次世代・改革の野党三党が発揮した存在感は、過小評価されるべきではないだろう。
参議院研究の第一人者である竹中治堅氏がかねて指摘するように、衆議院で二大政党化が進む裏で、参議院では多党化するのが理想的である。そして、政府・与党の政策に何でも反対するのではなく、「政局」的な争いからは距離を置き、「是々非々」で政府・与党と向き合う、現実的な野党が参議院で一定の議席を占めるのが望ましい。そうした状況の下、参議院を舞台に現実路線を歩む野党が政府・与党から譲歩を引き出すことで、国民の多様な意見を政策に反映させることがまさに、参議院に期待される役割なのではなかろうか。
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