8月2日に都知事に就任した小池百合子都知事の動きが憶測を呼んでいます。12日には「都政改革本部」として都や関連団体の組織や予算などを見直す部署を立ち上げることを表明しました。他にも、10日には、小池氏周辺から新党設立が示唆されるなど、話題に事欠きません。小池都知事は一体何を考えているのでしょうか?
今回は、橋下前大阪市長を参考に小池都知事の動きを分析したいと思います。
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橋下氏との関連について憶測を呼んでいるのには理由があります。それは、「都政改革本部」のメンバーです。現在学者や経営者など10名が任命されていますが、その中に現在大阪府・大阪市特別顧問を務める上山信一氏の名前があ入っています。
上山信一氏は元々コンサルタントで、近年では橋下氏の下で大阪府・大阪市の改革に取り組んできました。とりわけ、行政改革のプロフェッショナルとして、数多くの書籍を執筆するなど著名な人物です。橋下市政・府政の改革を理論の面から支えたと言って良いでしょう。
このような人物を抜擢したということは、橋下流の行政改革を行うのではないか、と思われています。
もう一つは、現在の小池氏の置かれた立場が橋下氏と似ているという点が指摘されています。橋下氏は2008年の大阪府知事選挙で、自民党などの推薦を得て当選しました。しかし、同年に大阪府庁移転計画を巡り自民党府議団と対立。その後、2010年に大阪都構想を打ち出し、大阪維新の会を設立します。自民党府議団を改革の「抵抗勢力」と批判することで、2011年の選挙で圧勝しました。
小池氏はというと、早くも都知事選の段階から自民党都連を批判しています。当選した後の挨拶回りでは、都議会議長に写真撮影を拒まれるなど、早くも関係は悪化。都知事と言えども、実際に議案を議会で通すには都議会の協力は欠かせません。都議会では自民党が最大会派ですから、自民党を敵に回してしまえば、都政に障害が出てしまいます。その場合、橋下氏のように新党を結成して議会で優位に立つというのは、ある意味で合理的なのです。
とはいえ、新党については、小池氏本人はまだ何も言っていません。現在では、反発を強める自民党都連への牽制にとどまると言って良いでしょう。今の時点では、自民党都連との関係を修復するということも不可能ではありません。
以上のように、小池氏は自民党都連との対立や新組織設立など、独自の動きを強めています。こうした動きの背景には、「世論の支持を受ければ上手くいく」という思いがあるのでしょうか。
しかし、実際には都知事であることには様々な制約があります。まず、条例などの議案を審議するのはあくまで都議会で、都知事は介入できません。議会を通過した条例案を一度拒否する権限はありますが、特定の条例を通すように求める権限はありません。通常、都知事は議会最大会派と協力せざるを得ませんが、現在は都知事と自民党とは対立しています。仮にこのまま議会が始まれば、小池氏は思うように政策を展開できなくなってしまうでしょう。
また、小池氏は選挙で「都議会解散」を主張していましたが、実際にはそのような権限はありません。都議会は都知事に対して「不信任」を突きつけることは可能ですが、都知事が議会を解散できるのはその時くらいです。つまり、解散するには、都議会に不信任を可決させなければなりません。現実には余程の失敗をしない限り厳しいでしょう。そして、その時には小池氏自身が人気をなくすこととなり、議会選挙の結果も小池氏にとって好ましいものとならないでしょう。橋下氏も、あくまで府議会の選挙のタイミングを待ちました。
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このように見てくると、改めて橋下氏のやり方の合理性がわかってきます。橋下氏は自民党と対立した後、新党を結成して自民党を批判し続けました。そして府議会選挙で圧勝することで、府議会で自身の政策が通りやすくしました。
小池氏が今後このような経過を辿るのは十分予想できる話です。
しかし、小池氏と橋下氏では置かれた状況が違います。まず、第一に、小池氏には橋下氏ほどの強烈な個性があるのかが未知数という点です。橋下氏は元々弁護士をやりながらタレント活動も行なっていましたが、その時から彼は個性的なキャラで人気がありました。そして雄弁であり議論を何より得意としていました。一方で、小池氏はそのようなキャラではありません。元々自民党の国会議員として活動し、環境大臣や防衛大臣を務めてきましたが、大きく目立ったというわけではありません。小池氏が橋下氏のような熱狂を作りだせるかは、まだ分かりません。
そして第二に、自民党都連批判の報道が続いているという点です。都知事選前から、猪瀬元都知事による告発など、都連批判の報道が続出していました。振り返ると、今回の都知事選自体も、都連と小池氏の対立が大きくクローズアップされました。その意味で都連にとっても小池氏は脅威です。上で挙げたように、小池氏人気が続くかはまだまだ怪しいですが、人気が続く限りは、都連は強くは出られないでしょう。
以上のように、小池氏と自民党都連との関係は小康状態が続きそうです。しかし、この状態が長続きするかどうかは不明です。都連に何かスキャンダルが起きれば、小池氏は都連批判を畳み掛けるでしょうし、逆もまたありえます。そして、10月には小池氏の辞職に伴う衆議院東京10区補欠選挙が待っています。そこでは、小池氏が自身に近い人物を擁立する動きを見せるなど、早くも対立の兆しが出てきています。しばらく小池氏の動きから目が離せません。
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