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自民都連、小池知事と関係修復へ~年末・年始衆議院解散総選挙と都議会選挙が状況を一変させた

2016/10/14

児玉 克哉

児玉 克哉

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東京都議会定例会が閉会した。議会の始まる前は、小池知事と都議会、特に都議会自民党との激しいバトルが予想された。小池知事の初登庁の時には知事を出迎えたのは、かがやけTokyoのメンバーの3人だけだった。自民党だけでなく、民進党、公明党、共産党などもすべて出迎え拒否であった。自民党と公明党は増田氏を支援し、民進党と共産党は鳥越氏を支援して、小池氏に敗れたのだが、普通はそれらを乗り越えて儀礼として幹部だけでも出迎えてもいいものだった。また、小池氏が就任初日に挨拶に回ったとき、川井重勇都議会議長はメディア向けの写真撮影を拒否した。あまりにあからさまな「いじわる」であった。都議の一人が言ったように「幼児のような」対応が相次いだ。ほぼオール野党体制のもとで、小池都政は暗礁に乗り上げる、という懸念を持つ人が多かった。
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しかし終わってみれば、都議会はあっという間にオール与党化してしまった。2待機児童解消に向けた総額126億円の補正予算案や知事給与を半減させる条例案など都が提出した30議案をすべて可決した。かつてない注目度だ。都議会の議論が全国放映されるのはほとんどなかったのではないか。猪瀬元知事のお金にまつわる問題の時と舛添前知事の諸問題の時は特化した形でメディアの露出はかなりあった。しかし今回は、豊洲新市場問題、東京オリンピック問題、待機児童解消問題、知事の給与半減問題など、都政の課題そのものが注目された。議員にとってみれば、一言の失言が失墜につながるという状態だ。

ここまで劇的に状況が変わったのは、豊洲市場に関して新事実が噴出したことや東京オリンピックの予算問題が注目されたこと、そしてそれらに関連して内田茂都議などの「疑惑」がメディアで取り上げられたことなどがある。都議会自民党自体にも資金問題疑惑が報道されている。政治団体「都議会自由民主党」とは別の任意団体「東京都議会自由民主党」に約7500万円の寄付があり、政治団体でないことから公表義務を逃れていたというのだ。都議会自民党は完全に劣勢に立たされたことになる。

政治家が対応に苦慮するのは地元での後援会対策だ。来年の選挙のこともあり、都議らは頻繁に後援会を開いている。東京都のような大都市では、後援会に集まる人は「利権」に絡んだ企業や人は少なく、議員の知人や友人をベースにした「普通の人」の応援団だ。小池知事に共感する人も少なくない。テレビや新聞、雑誌が都議会が小池知事への「いじわる」をしていることを報じると、後援会で都議に厳しいおしかりの言葉がくる。後援会内部からの批判の声は政治家が最も避けたいことだ。外部からの批判には、後援会での闘争意識が高まることがあるが、内部からの批判は後援会を無能化させるのだ。現在、都議の多くはこの状態に入っている。

私は都議会自民党の議員の中にはこの状態に耐えられず、小池派になる議員も出ると予想していた。おそらく3分の1から半分が小池派になり、実質的に都議会自民党は分裂すると考えていた。しかしどうやら、分裂ではなく、一部を残してほぼ全体が小池知事の与党になる勢いになった。さすがに政治の世界は自らの利益と損失の算盤勘定には迅速に動く。予想以上のスピードだ。

この状況には衆院東京10区補選、噂される年末年始衆院解散総選挙、来年の都議会選挙が大きく影響している。まず衆院東京10区補選では、若狭氏が自民党公認候補となった。東京都連は小池氏を知事選で応援した区議7人に離党勧告を突きつけたのだが、自民党本部は若狭氏にはほとんど処分を下さずに、公認候補とさせた。つまり自民党本部は小池知事・若狭氏らと完全に手打ちをしたことになる。衝撃的だったのは二階幹事長と下村自民都連会長が揃って若狭氏の応援に出たことだ。

年末年始の衆院解散総選挙が自民党都連を動かしている。東京には衆議院小選挙区が25区ある。2014年総選挙では自民党は快調で、ほとんどの小選挙区で勝利した。敗れた人も比例復活で当選している。現職がいないのは12区の公明党の太田氏のところだけだが、これは自公の選挙協力があってのこと。つまり圧勝状態だ。東京都連が小池知事に反対しているという姿勢がみえれば、今の小池フィーバーからするとリスクが生じる。噂された小池新党の設立ともなれば、予期しない状態が生まれかねないのだ。自民党の議員もできれば、小池シンパのイメージで小池知事に応援演説してもらいたい。少なくとも応援メッセージをもらって、小池知事と一緒に都政改革、日本改革、オリンピック開催を行っているイメージを作りたいのだ。そもそも、小池氏とは一緒に自民党議員として活動したメンバーだ。彼らは敵対する必要はないのだ。つまり、衆議院解散総選挙によって東京都選出の自民党衆議院議員の多くが小池氏との手打ち状態になる可能性が高くなったのだ。自民党都連で衆議院議員は最も強い立場にいる。それが手打ちするとなれば、都連全体も方向を変えざるを得ない。
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年を明ければすぐに都議会選挙の準備になる。方向が決まれば、流れは一気に変わる。ローカルパーティとしての小池新党は排他的でない形で立ち上がる可能性がある。つまり自民党会派に所属しながら、小池シンパとして「都民ファーストの会」や「希望の塾」に加盟するといった形である。敵対的に残る議員の選挙区にだけ候補者を擁立するということもありえるだろう。

小池知事も都政改革を実りあるものにするには自民党の支援も必要だ。今の自民党と完全敵対の状態になってはオリンピックも豊洲市場問題の解決も厳しい状況になる。解散総選挙では、25の選挙区で応援のマイクを握るかも知れない。小池シンパに回るというのなら、都議会自民党の議員も受け入れるだろう。戦う相手を狭め、定め、完全勝利を狙う戦略がみえてくる。

 

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の10月14日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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