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都知事選で小池氏支持の7人のサムライはどうなるのか~困っているのは7人の区議ではなく自民党都連だ

2016/10/5

児玉 克哉

児玉 克哉

7月の東京都知事選は異例の選挙となった。舛添氏の急な辞職があったことと、参議院選挙が直前に迫っていたので、都知事選への対応がすぐにはできなかったことなどが重なった。舛添氏の知事の辞職を発表したのは6月15日で、実際に辞職届けを出したのは6月21日だ。都知事選の告示日は7月14日で投開票日は7月31日。その前に参議院選があり、公示日は6月22日で、投開票日は7月10日となっている。まさにドタバタの選挙だ。小池氏の立候補の表明会見は6月29日で、増田氏は7月11日であった。

(写真は知事の部屋より)

(写真は知事の部屋より)

舛添氏の正式な辞職から3週間くらいで告示日がやってくる。しかもその間に参議院選の公示と投開票が入っているとなると、まともなプロセスで立候補者の擁立をするのは非常に難しいことは目に見えている。

結局、自民党が正式に推薦したのは増田氏であり、自民党の衆議院議員であった小池氏には推薦はなかった。小池氏がしっかりと相談して立候補をしなかったからといわれるが、この日程であれば、完全な手続き論はあまり意味をなさないように思える。

結果として、小池氏が圧勝し、自民党推薦の増田氏は落選した。この知事選で、若狭勝衆院議員と自民党豊島、練馬両区議7人が小池氏を応援した。若狭氏への処分は、自民党本部が行い、口頭での厳重注意処分で終わり、衆院東京10区補選の自民党公認も決まった。ほとんど処分がなかったようなものだ。それに反して、7人の区議には自民党東京都連が離党勧告処分を出した。あまりの差に驚かされる。むしろ、影響力の強い若狭衆院議員に重い処分がなされ、区議に軽い処分ならまだわかるが、反対は理解しがたい。当の小池氏にはまだなんのお咎めもないようだ。

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これからの展開を考える上では小池新党の可能性が重要になる。小池知事はすでに、政治団体「都民ファーストの会」を立ち上げているし、小池塾ともいわれる「希望の塾」の開設を発表した。まさにいつでも小池新党を立ち上げることができるという体制を作った。

自民党本部としては、小池新党が本格的に立ち上がり、日本維新の会などと連携するとなると、東京都だけの問題ではなく、政界全体にも大きな影響を与える。また、東京五輪をスムーズに行うためにも、小池知事を「自民党の枠」の中に入れておいたほうがやりやすいといことだ。自民党本部は最大限の譲歩を小池知事にしたということだ。

東京都連は感情的なしこりととともに、小池知事に真っ向から反対して、知事の好きなようにはさせない、という意思がありそうだ。これまでの知事は、力でねじ伏せ、都議会自民ファーストの政治文化を確立させた。今回も同様なやり方を考えたのだろう。あの石原慎太郎元知事でさえ、都議会自民党、そしてそのドンといわれる内田都議とは戦いを避け、譲歩を重ねたようだ。同じような手法で小池知事をコントロールできると思ったのだろう。言うことを聞かないのなら、潰してやろう、ということだったのだろう。

しかし、今回は、いくつものことが重なっている。まず、築地市場から豊洲市場への移転で、豊洲市場の問題があまりにクリアに出現してしまった。しかもドン内田都議の利権疑惑まで報道される状態になった。メディアの関心は高く、連日、東京都問題が報道される。小池知事と仲間たちが善玉で、都議会自民党が悪玉扱いだ。これではまともに戦えない。また東京五輪などもあるし、小池新党の全国展開を避けたいことから、自民党本部は小池知事と手打ちをしてしまった。都議会自民だけが悪者なる構図になってしまった。そして、来年6月には都議会選挙があることが重なってしまった。このままいけば、ローカルパーティとしての小池新党はできそうで、都議会自民党は大幅に議席を減らしそうだ。つまり来年6月にはかなりの議員が「ただの人」になってしまっている可能性が高くなっているのだ。全く状況が異なった。

7人の区議に対しては、離党勧告処分が出され、10月30日までに離党届を提出しなければ除名するとしている。都連は、10月の衆議院東京10区の補欠選挙への貢献次第では、区議7人の処分軽減も検討する考えというが、明確ではない。7人の区議は若狭氏とともに小池氏の知事選を支援したわけであり、当然のことながら若狭氏の選挙は全力で応援するだろう。もし別に自民党の公認・推薦候補者がいるのであれば、葛藤があるのかもしれないが、若狭氏への応援をすることは全く問題ない。そして、この選挙では若狭氏が圧勝すると見られている。つまり、若狭氏の当選と7人の区議の応援とは完全に既定路線だ。これで処分を軽減するとなれば、あまりの出来レースで、重い処分を出さなかったほうがいいくらいだ。これだけ騒がせておいて、馬鹿にしたような話だ。

ではどのレベルの処分にまで軽くなるかを考えてみよう。処分は重い順に、1.除名、2.離党勧告、3.党員資格の停止、4.選挙における非公認、5.国会及び政府の役職辞任勧告、6.党の役職停止、7.戒告、8.党則の順守勧告となる。4以上の重い処分だと、離党して小池新党で活動したほうがいいということになるだろう。戒告くらいの処分に落ち着くのだろうか。

分かりにくいのは手続きだ。補選が終わって、若狭氏が当選していたら、都連の方から処分軽減通知が来るのだろうか。7人の区議が処部軽減措置をお願いするのだろうか。何もしなくても、10月30日までに離党しなかったら、「除名処分ではなく、○○処分にします」という通知が来るのだろうか。最初から処分の軽減のつもりなら、10月30日までに離党届けを提出しない場合には、同日付をもって除名処分とする、などと書くべきではない。7人の区議は都連は本気で除名する可能性があると疑っているはずだ。

あまりに考えられない処分であり、考えられない「軽減策」だ。どうなるのか誰もわからない。こういう状態だから、若狭氏が「7人の区議が除名されるのであれば、補選に勝っても、自分も離党する」などと言わざるをえなくなるのだ。

地方議会や地方政治では、「党」の拘束はあまり現実的でないことが多い。会派と政党が一緒でないこともかなりある。地方の選挙では自民対自民の争いは一般的だ。公認や推薦で、それのない人を応援したら除名というのは地方議会ではなじまないスタイルだ。今回の処分があまりに厳しすぎるという感じだ。選挙中にいわれた「家族や親戚も応援したら処分」というのはまさに民主主義の原則を歪めるようなものだった。

立場としては、むしろ7人の区議の方が強い。彼らは除名されても、次の選挙は当選するだろう。自民党都連の議員の方が危ない状況だ。都民を敵に回しかねない。自民党都連の信頼が崩れつつある。7人のサムライの処分は自民党都連にとって対応を間違えてはならない重要な課題となっている。

※本記事は「行動する研究者 児玉克哉の希望ストラテジー」の10月4日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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児玉 克哉

児玉 克哉

三重大学副学長・人文学部教授を経て現職。トルコ・サカリヤ大学客員教授、愛知大学国際問題研究所客員研究員。専門は地域社会学、市民社会論、国際社会論、マーケティング調査など。公開討論会を勧めるリンカーン・フォーラム事務局長を務め、開かれた政治文化の形成に努力している。「ヒロシマ・ナガサキプロセス」や「志産志消」などを提案し、行動する研究者として活動をしている。2012年にインドの非暴力国際平和協会より非暴力国際平和賞を受賞。連絡先:kodama2015@hi3.enjoy.ne.jp

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