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おときた駿都議が語る「マーケティングの基礎を間違えた自民党と小池陣営の選挙戦略」



選挙ドットコム編集部
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女性初の都知事となった小池百合子氏。7月中盤の調査では、1位鳥越氏(支持28%)・2位増田氏(24%)・3位小池氏(16%)と、当選から最も遠いと言われていました。しかし、選挙戦が進むにつれて情勢が変わってきます。最終的には2位の増田氏に100万票以上の差を付けて当選。

小池氏は一体なぜ、ここまでの大差を付けることができたのでしょうか? その背景にあった戦略を、今回の小池陣営の情報参謀として活躍し、日本一のブロガー議員であるおときた駿都議会議員に伺いました。
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「オープンで開かれた政治」か「ブラックボックスな自民党」か。争点設定に成功


―編集長 増沢:おときた都議は、小池陣営ではどのようなポジションだったのでしょうか?

―おときた駿都議会議員:選対(選挙対策本部:選挙を取り仕切るチーム)には入りませんでした。小池百合子知事はこれまでの国会議員としての経歴もあり、すでに秘書や支援している後援会の方もいらっしゃいました。そこで、選対の中に入って仕切るのではなく、周りから応援するポジションを選びました。こういった、外からの応援を「勝手連」と呼びますが、今回の都知事選では勝手連のリーダーとしてボランティアの方の対応をしていました。
また、これは後で触れますが、選挙戦略全般も考えていました。

―編集長 増沢:今回の選挙では、増田ひろや候補と比較される形で「政党からの支援を受けず、ボランティアの力で選挙を作っている」という様子がメディアを通して伝わってきましたね。

―おときた駿都議:「ボランティアの力で盛り上げた選挙」であることは間違いないのですが、実は小池氏の選対ではボランティアを受け入れていませんでした
これは、選挙戦中に小池氏に殺害予告が出されたことによく表れていることですが、見ず知らずのボランティアの方が小池氏本人とも接触する可能性もあり、どうしても安全面がクリアになりません。
そこで、小池氏の選対としてボランティアを受入れるのではなく、私の事務所(おときた駿事務所)が中心となってボランティアを受入れる形を取りました。選挙期間中には150名を超える方が集まり、ポスターやチラシの配布、ハガキの宛名書きなど、人手が必要な作業を分担してくださいました。

―編集長 増沢:増田寛也陣営との比較で言えば、選挙戦では「政党にいじめられる小池氏」という絵をよく見ました。こうしたこともメディア戦略だったのでしょうか?

―おときた駿都議:政党を攻撃する意図があったわけではありませんが、「オープンで開かれた政治」か「ブラックボックスな自民党」かという点を争点化する戦略を取ってきました。
小池氏は、政策のキモ、ボーリングで言えばセンターピンを見つけ出す能力が天才的です。今回の都知事選の発端となった舛添前都知事の辞任の原因は政治とカネの問題ですが、しっかりと説明し謝罪していれば、辞任までは追い込まれなかった可能性もあったのではないかと思っています。辞任に追い込まれたのは、情報を隠そうとして、発表する資料を黒塗りしたことや、曖昧な言葉でごまかしていた点です。この問題に代表されるように都政には様々な課題がありますが、そのほとんどは、「情報を公開」することで解決できます。

小池氏は、いち早くそのことに気付きました。「都政のブラックボックス=都議会自民党、都議会のドン」と都民に分かりやすい形で提示し、「オープンで開かれた政治」か「ブラックボックスな自民党」という選択肢を明確にしました。実は、私も3年前から都政のブラックボックスについては自分のブログで取り上げてきましたが、これまではあまり多くの人には見られていませんでした。それが今回、小池氏が争点として位置づけたことで、多くの都民が知るに至り、メディアでも大きく取り上げられるようになり、過去の記事が今になって多くの人に読まれています。

小池氏が分かりやすい争点を設定したことで、ブラックボックスな都政に対して不満が溜まっていた都民が投票に行き、小池氏が勝利を収めたのでしょう。これは投票率からも推測できます。参院選のすぐ後の選挙ですから、「選挙疲れ」で投票率は下がると言われていましたが、その予想を裏切って前回より13%も上がっています
都知事選を1回行うためには職員の人件費などで50億円程かかると言われていますが、都政のブラックボックスに都民が気付き、メスが入れられていくことを考えると、十分に50億円の価値はあったと思います。

 

 

「誰に・どう見られているか」マーケティングの基礎を抑えた選挙戦略


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―編集長 増沢: 「オープンで開かれた政治」か「ブラックボックスな自民党」という大きな争点を作ることに成功していた小池陣営ですが、日々の選挙戦略はどのようなものだったのでしょうか?

―おときた駿都議:一言で言うなら、「誰に・どう見られているか」というマーケティングの基礎的な視点を持つという点です。 私自身は「選挙戦略」 を考えていたことは確かですが、立場としてはアドバイスをしていただけなんです。最終的に、細かい行動はおそらく小池氏本人が決めていたのだと思います。
キャスター出身、そして政治家としての実績もあり、小池氏本人が「誰に・どう見られているか」を選挙活動の判断基準を小池氏本人がしっかりと持っていました。例えば、選挙戦2日目は八丈島へ、その後もかなり早い段階で、私の同僚都議・両角穣都議会議員の案内で奥多摩にも足を運んでいます。これは、舛添元都知事が「自分の別荘は奥多摩よりも近い」と発言し、奥多摩まで足を運ばなかった姿勢への批判です。奥多摩に住んでいる方からは歓迎されましたし、ニュースでも大きく使われました。他の候補も後を追いましたが、ニュースにはなりませんでした。これは「都民からどう見られているか」を常に考え、他の候補よりも早く行動してきた成果だと思います。 築地に行ったのも、主要候補の中では最速でしたからね。

さらに、「良いと思ったものを取り入れるのが早かった」という点も、勝因の1つです。
今回の選挙では、私は選挙戦略、特にネット戦略を考えてきましたが、これは特に肩書があったわけではありません。今回の都知事選では、都議会議員の中で小池氏への支持を表明していたのは私の所属する「かがやけTOKYO」だけでした。そのため早い段階から小池氏本人と戦略について話す機会があり、本人や側近の方に様々な提案をしてきました。
例えば、今回の選挙で話題になった「金魚鉢」と言われる選挙カーも、私の提案です。
(金魚鉢:車体が透明になっている選挙カー。どの方向からも候補者の様子が良く見える。)

選挙戦初日に使っていた選挙カーはマイクの音も悪く、Twitterなどでも批判的なコメントが見られました。「金魚鉢」に変えたところ、道行く人からの反応も良くなりましたし、さらにはテレビでも何度も取り上げられるようになりました。また、ネットで話題になった小池氏のコスプレ写真もそうです。選挙戦中盤に、ネット上で「小池氏は漫画やアニメの表現規制を進めている」という意見が目立っていたので、小池氏に相談したところ「子どもたちのことを考えると行き過ぎた作品は流通経路などを検討すべきだが、創作活動は応援したい」という話になりました。小池氏の地元である豊島区はアニメイトや「乙女ロード」と呼ばれる通りなど、オタク文化の発信地です。そこで、「懸念点も含めて創作活動に対する思いを伝えてみてはどうか」と提案したところ、すぐさまコスプレの写真を公開されました。提案した私自身、街頭演説で触れていただければ程度に思っていたので、まさかコスプレ写真を掲載するとは、非常に驚くとともにその決断力に感心しました。
こうした例からの分かるように、テレビやTwitter、Instagramといったようなメディアを使うのがうまかったのですが、良いと思ったものは柔軟・迅速に取り入れていました。

―編集長 増沢:キャスターでテレビや新聞などのメディアを知り尽くした小池氏と、ブロガー議員であるおときた駿都議の相性が良かったのも大きかったのでしょうか?

―おときた駿都議:選挙期間中は候補者は情報収集する余裕もありませんから、私がアンテナになり、「今、ネットではこういったことが話題になっています」「こう発信すると、ちゃんとメッセージが伝わる」と伝えてきました。そして、判断は小池氏がするという関係性がうまくできていたように思いますね。

 

 

 

都民を見ている小池陣営と内側を見ている自民党都連


―編集長 増沢:「都議会のブラックボックス、都議会のドン」と言えば、小池知事が初登庁した際に自民党が塩対応したことも話題になっていましたね。
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―おときた駿都議:これも、「周りの人にどう見られているか」という視点の違いです。都政は都民のためのものですから、「都民にどう見られるか・都民のためになるか」が最優先されるべきですが、自民党の場合は内側を向いていたんだと思います。

小池氏を出迎えない、またテレビ局のカメラがある前で握手を嫌がる素振りを見せるのは、都民からは「悪役」にしか見えません。しかし、都議会自民党内部の価値観では、「都知事に毅然とした態度を取った」「一言釘を差してやった」と好評価されると思っている。これは完全にマーケティングのミスで、「誰からの支持を得るのか」がズレている証拠です。さらには、時代が変わってきていることに気付いていないんです。今はすぐにネットで情報が拡散される時代で、その結果、握手を嫌がった都議会自民党の川井しげお議長の事務所には翌日から電話が殺到しているそうです。都議会議員自民党のHPもサーバーが落ちるほど、アクセスが増えていました。
もちろん、都議会自民党の中にもこうした党の対応に違和感を持っている都議会議員はいると思います。それでも、年配の議員やOB・OGの圧力には勝てない。石原慎太郎氏が初当選した1999年の都知事選の際も分裂選挙になっていましたが、この時も石原氏を支持していなかった半数の議員は出迎えていません。こういった過去の慣例に従い、「OB・OGたちが守ってきた都議会自民党のルールを破ってはいけない」という考えを持つ議員たちの意見が通った形でしょう。

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