先週月曜日、大阪・京都を中心に6000人以上の高校生に主権者教育を届けてきたivote関西と、関東を中心に笑いを通して主権者教育を届けている笑下村塾(お嬢様芸人のたかまつなな主催)がコラボし、京都橘高校で授業を行いました。
18歳選挙権が確定してからというもの、全国で様々な団体が「主権者教育」の名のもとに、中学、高校へと出向いて授業を行っていますが、2つの組織がコラボして行う授業というのは初めてではないでしょうか。参院選が迫るこの時期に、笑いやゲームを通して「民主主義とはなにか」、「18歳選挙権で何が変わるのか」などを、2年生・3年生約230人の高校生のみなさんと一緒に考えました。
笑下村塾さんの授業は、「そもそも民主主義とは何か」、「若者が選挙にいかないことはどういうことを意味しているのか」を体験的に学べる授業を提供しています。特に特筆すべきは、その考えぬかれたコンテンツです。カードゲームや若者に人気の「人狼」ゲームを取り入れ、言葉で聞くだけでは理解しにくい民主主義やシルバーデモクラシーについて感覚的に学ぶことができます。
一つ例を出しましょう。生徒たちを10代〜70代まで年代別に分けて同じ人数でグルーピングし、「50歳未満の投票権を剥奪する」という政策を投票にかけます。もちろん、50歳未満の有権者は「No!」に投票を入れるので、単純な数としてはNoの方が多くなります。しかし、ここで面白いのは実際の世代別投票率を掛け算して投票結果を出すんですね。するとなんということでしょう。結果は大逆転。この法案は通ってしまうんです。シルバーデモクラシーを体感できる興味深いコンテンツです。
一方私たちivote関西は、実際に問題となっている具体的な政治テーマを取り上げ、「アクティブラーニング」を通して「考える有権者」を育てる授業を行ってきました。例えば去年の夏には安保法制を取り上げ、高校生と安保法制に関する実際の記事を共有しながら、日本の安全保障を思考する授業を行いました。現在は参院選にむけて実際の新聞を用い、各党の主張を生徒が整理するという授業を行ったりしています。このような授業を通して、民主主義の一員として身に着けるべき力を養うことができます。
ivote関西が大切にするポリシーは「生徒イニシアティブ」です。これまで行われてきた「模擬投票」や選管による「出前授業」は基本的には講師陣による講演と知識教授が中心でした(もちろん、これも非常に大切な主権者教育です)。ですが、主権者となるためには、「今この社会では何が問題で、何を優先し、価値観の違う他者とどう議論して、どのような解決策を見出すべきなのか」をすべて自分たちの力で生み出す能力を養わなければなりません。そのためには、「問題設定」から「議論」、「意思決定」、「意思表示」のすべてのフェーズで生徒側が主体となる授業を設計する必要があり、ivote関西が理想とする主権者教育とはまさにこのような形の授業です。
このようにタイプの違う2つの授業ですが、共通するものがあります。それは「体験する」ということです。主権者教育については今も様々な取り組みがなされていますが、生徒が主体になって民主主義や主権者意識を体験できる機会はどれだけ教育現場にあるでしょうか。ただ机に座って、先生の話を聞く思考停止型の主権者教育は、生徒の心には残らない。そればかりか、大人が押し付けてくる「理想論の一つ」としてとらえられることもあるでしょう。
いま教育現場に必要なのは、生徒が実感的に民主主義を感じられる時間を作ることです。私たちivote関西も、笑下村塾さんも、そのような「体験型」主権者教育を日本に広めるために、これからも活動していきます。
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