来年の参議院議員選挙で選挙権を得る年齢が18歳に引き下げられるという70年ぶりの大改革に伴い、高校生への主権者教育が始まっている。21日放送されたNHKクローズアップ現代では、教育現場の実態をふまえ、「若者が政治を身近に感じるために必要なものは何か?」について取り上げていたので、内容をまとめてみた。
昨年の衆議院議員選挙の投票率は、20歳代では3人に1人以下。多くの若者にとって、政治は遠い存在であり、町でインタビューした高校生の中には、「あまり興味ない。むずかしい」「誰に投票したらいいのかわからない」という声も多い。
そのような中で、番組は、全国にさきがけて、民主主義を育て政治への関心を高める主権者教育に取り組んでいる神奈川県立湘南台高校で取材を行った。ここでは、身近なニュースを取り上げ生徒同士で討論を行うなど積極的な教育が行われているが、生徒のひとりは、「さまざまな問題について真剣に討論するうちに、政治や社会の見方が変わってきたと感じる」と授業による効果を実感しているという。
一方、教員たちの間では、意見が対立することが予想される現実の政治課題「集団的自衛権」について取り上げるかどうか、という議論が行われていた。「授業の進め方が微妙になってくる」「生々しく政治に近づきすぎてしまう」「私たち教員が不用意に言ったことが、彼らを先導してしまうのではないか」という懸念の声が上がり、政治的中立が義務付けられた教育現場で抱える問題が浮き彫りになった。

しかし、このような状況の中で、前向きな意見を主張する教員(黒崎教諭)がいた。「意見が対立する問題だからこそ、議論する価値がある」「自分の力で考えて公正に判断する力を身に着けて世に出て行って欲しい」という黒崎教諭の熱心な働きかけにより、湘南台高校では、来月、この問題を扱うことを決定。しかし「どう授業を進めるのか」については今後の課題となっている。
この取り組みに対し、ゲストの2名からは、次のようなコメントがあった。

野村総合研究所顧問
増田氏:
「大変素晴らしいことだと思う。今、主権者教育がいかに重要か、ということを全国民がわきまえることが必要。また、教員によって、若い人たちがこういう問題に目覚め、政治に参加していくことが重要だと思うが、中立性を保つには、多様な意見があるということ、そしてそれを伝えていくことが大切である。たとえば、複数の新聞を題材にするなど、やり方の試行が必要だろう」

東京工業大学准教授
西田氏:
「これは、一番理想的なケースなので、全ての学校で展開できるのかと思うとやや不安が残る。また、全ての先生に求めるのは難しい。それができるようにする仕組みが必要である。こういう取り組みができるように、どうすれば中立性が担保されるのかも考える必要がある」
お二人のコメントからは、18歳選挙権引き下げをきっかけとし、教育現場でひとつひとつ積み重ねていくことが必要だと実感できる。
また、18歳選挙権を実りあるものにするために動いているのは、学校だけではない。愛知県新城市の自治体では、若者に政治に参加してもらおう、という取り組みを行い、若者が積極的に意見を述べ、それを取り入れたイベントなどの開催が検討されている。
これを受けて増田氏は、
「若い人たちが自分の意見を固めようとしている。それを見た政治家がその声を受け取ることが大切である。また、前回の選挙の投票率は52.6%であり、大人全般が1票の重さをないがしろにしているのではないか。そういう大人の背中を見て、若者が棄権したりする。大人が、若者がしている取組に近づいていくこと、また家庭でもっと議論ができるような場をつくっていくことも大事だろう」
西田氏は、
「仕組みの問題もある。若い人が自分たちの中から立候補できるような被選挙年齢を引き下げる、また供託金を引き下げるなど、社会全体で政治について考えることが重要である」と語った。

主権者教育を主体となって行う基本的な場所は、学校である。しかし、本来は大人ひとりひとりが行動を示すことで積み重ねていくものであり、社会全体で考えていくべきことなのだ、ということを、私たちはもっと真剣に考える必要があるだろう。本当の意味で18歳選挙権を実りあるものとするための打開策は、ごく身近なところにあるのかもしれない。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします