2026/9/7
こんにちは、田中ヒロシです。
昨日は土砂降りのなかの法事。気温は18度。吹けよ風邪よべよ嵐!って感じでした。
今朝も朝から雨ということで、電車が遅れていましたが、なんとか無事に有明まで辿り着きました。
ゲリラ豪雨?ゾンビ梅雨?線状降水帯?
迷走台風や復活台風?東から西へ向かう台風。
ピンポイントで狙われたかのような地震。
冷蔵庫を開けてドーナツを食べるクマ。
そして、真夏から始まるインフルエンザ。
そろそろ、「なんで?!」について考えましょう。
そして、「おかしいことは、おかしい!」と言える国にしましょう。
おかしな雨のせいでもありますが、朝夕は過ごしやすくなってきました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
これまで本ブログでは、日本の伝統的な年中行事である「五節句(ごせっく)」について取り上げてまいりました。
1月7日: 春の七草粥の起源歴史いつから?食べる意味由来を絵本など子供たちに伝えよう【1月7日は人日の節句】
5月5日: こどもの日柏餅など食べ物,菖蒲由来は?端午の節句歴史解説!
7月7日: 【7月7日は七夕】なぜ、そうめん?由来は?五節句、笹竹の節句の歴史
3月の桃の節句(上巳)はうっかり書きそびれてしまったのですが(笑)、いよいよ今回は、五節句の最後を締めくくる9月9日「重陽(ちょうよう)の節句」です。別名「菊の節句」や「栗の節句」とも呼ばれています。
現代の暮らしでは、こどもの日や七夕などに比べると少し馴染みが薄いと感じられるかもしれません。しかし重陽の節句は、かつて宮中から武家社会、そして農村や町人文化に至るまで、一年の中で最も重要な節目の一つとして盛大に祝われてきた豊かな歴史と精神性を持っています。
今回は、先人たちが重陽の日に託した「健康と延命長寿の祈り」、そして現代の私たちの暮らしや地域文化に息づく知恵について紐解いてみたいと思います。
「重陽」という言葉の根底には、古代中国の自然哲学である「陰陽五行説」の思想があります。
陰陽の考え方では、偶数を静かで受容的な「陰」、奇数を活動的で剛健な「陽」の数と捉えます。1桁の奇数の中で最も大きな数字は「9」です。その最大値である陽数「9」が月と日の双方で重なり合う9月9日は、天地の陽気が極限まで満ちる日として「重陽」と名付けられました。
ただし、古代の人々は単に「おめでたい吉祥の日」として無邪気に喜ぶだけではありませんでした。「陽極まれば陰に転ず」という言葉があるように、エネルギーが頂点に達した瞬間は、急激な反転によって災厄が起こりやすい境界の日(厄日)でもあると考えられたのです。
そのため、重陽の節句は「最大の慶事を寿ぐ」と同時に、「力強く邪気を祓い、無病息災を願う(避邪=ひじゃ)」という両面の大切な儀礼として執り行われてきました。
重陽の主役といえば「菊」の花です。菊は百花が枯れ落ちる晩秋の寒さや霜に耐えて凛と美しく咲き誇ることから、古来より強い生命力と邪気を退ける霊薬の象徴とされてきました。

中国には、菊の露をたたえた谷川の水を飲んで700年以上も少年の容貌のまま生きたという「菊慈童(枕慈童)」の伝説があります。この物語は日本にも能楽の曲として伝わり、流水に菊を配した「菊水文様」は、延命長寿を象徴する吉祥意匠として今も伝統工芸や染織に受け継がれています。
平安時代、宮中では前夜(9月8日)に菊花の上へ真綿(絹綿)を薄く被せて夜露にさらし、翌朝(9月9日)に菊の香りと露を含んだその綿で顔や肌を拭う「菊の被綿」という風雅な儀礼が行われました。菊の精気によって肌を清め、老いを拭い去って長寿を得られると信じられていたのです。
『紫式部日記』には、藤原道長の正室である源倫子から「老いを拭い捨てなさい」と被綿を贈られた紫式部が、次のような感謝と謙遜を込めた歌を返した場面が残されています。
「菊の露 わかゆばかりに 袖ふれて 花のあるじに 千代はゆづらむ」
(菊の露には少し袖を触れて若返る程度にしておき、千年の長寿は花の持ち主である倫子様にすべてお譲りいたしましょう)
現代でも、京都をはじめとする老舗和菓子店では、重陽の時期になると菊花の上に繊細なそぼろを真綿のようにあしらった上生菓子「着せ綿」が店頭に並びます。先人たちの優美なアンチエイジングの願いを、お茶席やおやつの中で味わうことができます。
1月の「人日(七草粥)」、5月の「端午(菖蒲湯・柏餅)」、7月の「七夕(笹竹・そうめん)」と振り返ってみると、春から夏にかけての節句は、新緑のようにぐんぐんと育つ子どもたちの「成長」や「育成」に主眼が置かれていました。
これに対し、秋深まる重陽の節句は、自然界が豊かな実りを迎える時期と重なります。そのため、儀礼の焦点が「成熟」「命の持続」、そして「これまで生きてきた歩みへの感謝」へと向けられている点に大きな特徴があります。
その代表例が、江戸時代に定着した「後の雛(のちのひな)」という風習です。春の桃の節句で飾った雛人形を、秋晴れの重陽の時期に再び取り出して飾る行事です。大切な人形を風に通して湿気や害虫から守る「虫干し」という生活の知恵であるとともに、春が子どもの健康を祈る祭りなら、秋は成熟した大人の女性が自身の厄除けと健康長寿を祈る「大人の雛祭り」としての役割を果たしていました。
旧暦の9月9日は、現在の暦でいうと10月中旬から下旬のまさに収穫期にあたります。そのため、重陽の節句が庶民の間へ広がるにつれ、秋の収穫感謝祭と深く結びついていきました。
ホクホクとした実りを喜ぶ「栗ご飯」を炊いて祝うことから「栗の節句」とも呼ばれ、さらに「9日に茄子を食べると中風(病気)にかからない」という言い伝えから、秋茄子の煮浸しや焼き茄子をいただく習わしも生まれました。
また、九州北部を代表する秋祭りである「長崎くんち」「唐津くんち」「博多おくんち」などの「くんち」という言葉は、重陽の節句の日付である「九日(くにち)」が訛ったものと伝えられています。大地の恵みに感謝し、神々に収穫を奉納する地域の秋まつりにも、重陽の精神がしっかりと息づいています。
さらに、京都の世界遺産・上賀茂神社では菊花を供えて長寿を祈る「重陽神事」とともに、烏の鳴き真似をして子どもたちが相撲を奉納する奇祭「烏相撲」が行われるなど、各地の社寺で個性豊かな伝統行事が今に伝えられています。
明治の改暦以降、新暦の9月9日はまだ残暑が厳しく、菊の自然な開花期とのズレから少し行事として触れにくくなってしまいました。しかし、夏の疲れが出やすく、季節の変わり目である今だからこそ、心と体を労わる「セルフケアの日」として過ごしてみてはいかがでしょうか。
ご家庭でも手軽に取り入れられる工夫をいくつかご紹介します。
菊花を浮かべた一杯(菊酒)
冷酒に食用菊の花びらを数片浮かべるだけで、風雅な香りが広がります。お酒が苦手な方やお子さまは、冷茶や炭酸水、温かいハーブティーに花びらを散らすだけでも季節の情緒を楽しめます。
秋の味覚を食卓に
旬の栗を使った栗ご飯や、食用菊(もってのほか等)のおひたし、秋茄子の料理を囲み、夏の胃腸の疲れを癒やしながら滋養を蓄えましょう。
一輪の菊を飾る・菊湯に入る
最近はおしゃれなピンポンマムや洋菊(スプレーマム)も豊富です。玄関やリビングに一輪生けるだけで、空間がすっきりと引き締まります。また、端午の「菖蒲湯」のように、湯船に菊の花を浮かべて入浴する「菊湯」は、爽やかな香りで心身をリフレッシュさせてくれます。
慌ただしく過ぎていく毎日の中で、先達が遺してくれた節句の知恵は、「立ち止まり、巡る季節と命の尊さに感謝する時間」を私たちに与えてくれます。
厳しい冬を越える前に、咲き誇る菊の生命力にあやかり、健康長寿を祈った人々の祈り。
9月9日の重陽の節句には、ぜひご家族や大切な人と一緒に、秋の味覚を味わったり、菊の花を愛でたりしながら、穏やかで健やかなひとときをお過ごしいただければ幸いです。
皆さまの健やかな毎日と、ご長寿を心よりお祈り申し上げます。
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