2026/8/11
8月7日、練馬区国民健康保険運営協議会に委員として出席しました。今回報告されたのは、国民健康保険料の収納や滞納の状況と、薬剤師による服薬健康相談です。
収納率や相談の参加率も重要ですが、本当に大切なのは「なぜ保険料を払えないのか」「なぜ薬の不安を抱えたまま相談につながれ ないのか」などを分析すること。背景にある生活苦や孤立、生きづらさに向き合う必要があります。
「収納率」とは、区が請求した保険料のうち、実際に納められた割合です。令和7年度の練馬区の収納率は、その年度に請求した「現年分」が93.39%、過去から持ち越した滞納分を含む全体では89.19%。過去最高となり、23区でも3位でした。
Webでの口座振替やスマホ決済の導入など、納めやすい環境を整えてきたこと、職員が相談や徴収に取り組んできた成果は評価します。
一方、「収入未済額」、つまり年度末までに納められず、翌年度へ持ち越される保険料は約18億7,600万円でした。前年度から減ったのは約500万円にとどまり、過去から持ち越された滞納分は逆に約4,100万円増えています。
区によると、前年度に納められなかった保険料が翌年度の滞納分に積み上がったことが主な理由です。滞納が重なると、現在の保険料を払いながら過去の分も返すことになり、生活を立て直すのは一層難しくなります。

(出典:練馬区)
区への納付相談は年間約1万件とのこと。背景には、病気、失業、廃業、収入の減少など、さまざまな事情があります。
区は、生活状況を聞いて分割納付を案内するほか、暮らしそのものが厳しい場合には、生活サポートセンターや福祉事務所へつないでいます。以前は案内のチラシを渡すだけで終わることもありましたが、現在は本人の希望に応じて職員が相談窓口まで同行することもあるとのこと。逆に、福祉の窓口から国保料の相談へつなぐ場合もあります。徴収部門と福祉部門が一緒に支える、大切な前進です。
もちろん、納付する力がありながら納めない場合には、公平な対応が必要です。しかし、食費や家賃、必要な医療を削らなければ払えない方を、督促や差押えだけで追い込んではなりません。
私は、未納率の高さだけを問題にするのではなく、なぜ払えない状態になったのかを丁寧に確認し、生活困窮、病気、孤立など、その背景を解消していくことが必要だと考えます。収納率だけでなく、相談を通じて何人が福祉につながり、生活を立て直せたのかも、国保行政の成果として示すべきです。
服薬健康相談は、多くの薬を処方されている方や、複数の医療機関を受診している方などに区が案内を送り、薬剤師が無料で相談に応じる事業です。
対象者は「レセプト」と呼ばれる、病院や薬局が保険者に提出する診療・薬剤費の明細をもとに選ばれます。自宅訪問、薬局、相談会、電話などから相談方法を選べます。
令和7年度は、国保加入者286人に案内を送り、相談につながったのは16人、参加率は5.6%でした。令和5年度の13.4%、令和6年度の7.6%から下がっています。

(出典:練馬区)
国保と、主に75歳以上の方が加入する後期高齢者医療を合わせた参加者58人のうち、アンケートに答えた24人では、22人が「参加してよかった」と回答しました。
区は今年度、案内文を分かりやすくし、スマートフォンなどから申し込める電子フォームも導入しました。現時点では、前年度を上回る申込みがあるとのことです。制度を知らせるだけでなく、「相談すると何が変わるのか」を具体的に伝えることが必要です。
この相談の大きな特徴は、薬剤師が時間をかけて話を聞くことです。会議では、普段の薬局は忙しそうで声をかけにくい方や、複数の病院に通っていることを知られたくない方もいると紹介されました。
相談では、お薬手帳などを見ながら全体を整理し、同じような薬が複数の医療機関から出ている「重複処方」や、飲み合わせに問題がないかを確認します。必要があれば主治医への相談を勧めたり、薬剤師が医師宛ての手紙を用意したりします。介護や生活上の困りごとが見つかれば、高齢者の介護や暮らしを支える相談窓口である地域包括支援センターなどにつなぐこともあります。
多くの薬を飲んでいること自体が、直ちに悪いわけではありません。「ポリファーマシー」とは、薬の数が多いだけでなく、そのために副作用や飲み間違い、飲み残しなどの問題が起きている状態を指します。目的は薬を機械的に減らすことではなく、本人が納得し、安全に治療を続けられるようにすることです。
保険料の未納を減らすことも、服薬相談の参加者を増やすことも大切です。しかし、数字を改善することだけが最終目的ではありません。
保険料を払えないほどの生活苦、薬への不安を誰にも相談できない孤立、制度があっても一歩を踏み出せない生きづらさ。国保は、そうした困難を見つけ、医療や福祉につなぐ入口にもなるはずです。
徴収、医療、福祉が縦割りを越えて連携し、「払えない」「相談できない」背景そのものに寄り添う国保行政を、引き続き求めていきます。
・練馬区「国民健康保険運営協議会」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/kaigi/kaigiroku/hoken/kokuminkenkouhoken/index.html
・練馬区「ねりまの国保」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/nenkinhoken/kokuminkenkohoken/hoken_tokeishiyo/nerimanokokuho.html
・練馬区「納付相談について(国保)」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/nenkinhoken/kokuminkenkohoken/hoken_hokenryo/nofusodan/noufusoudank.html
・練馬区「多数の受診記録や処方薬がある方への服薬健康相談」
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/nenkinhoken/kokuminkenkohoken/iryohitekiseikajigyo/tyouhukukenn.html
・厚生労働省「高齢者におけるポリファーマシー対策の普及啓発資材について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74909.html

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