2026/7/14
病気は自分で選べません。高額な治療が必要になっても、医療費によって暮らしが壊れないよう支えるのが高額療養費制度です。ところが国は、8月診療分から多くの所得区分で自己負担上限を引き上げます。今回の変更で区民にどのような影響が出るのか、練馬区に確認しました。
高額療養費制度は、1か月の保険診療の自己負担が、年齢や所得に応じた上限を超えた場合、その超過分を払い戻す仕組みです。
現在、70歳未満で年収約370万円から770万円の方が、1か月に100万円の治療を受けた場合、最終的な自己負担は約8万7,400円です。8月からは約9万2,900円となり、1回の治療で約5,500円増えます。
年収約370万円以下の課税世帯は5万7,600円から6万1,500円へ、住民税非課税世帯も3万5,400円から3万6,900円へ上がります。所得が低い世帯も負担増の対象です。
70歳から74歳の一般所得者では、外来の個人上限が月1万8,000円から2万2,000円へ、年間上限は14万4,000円から21万6,000円へ上がります。外来と入院を合わせた世帯上限も、5万7,600円から6万1,500円となります。
国は今回の高額療養費改訂について、「主に療養期間が短期の方に追加の負担をお願いする」と説明しています。
しかし、手術や短期入院であっても、治療の必要性や家計への打撃が小さいわけではありません。病気になった方に、その時点でさらに負担を求める考え方には賛成できません。
一方、8月からは、毎年8月から翌年7月までを単位とする「年間上限」が新設されます。直近12か月で3回以上高額療養費に該当した場合、4回目から負担が軽くなる「多数回該当」の金額も基本的に据え置かれます。
長期療養者への配慮は必要であり、年間上限の新設自体は前進です。
ただし、年間上限の恩恵を受ける前に、月々の上限引き上げが家計を直撃します。年間上限を設けることと、患者負担を引き上げることは別の問題です。前者を理由に、後者まで受け入れるべきではありません。
令和6年度、練馬区国民健康保険の高額療養費は延べ8万6,710件、支給総額は約52億690万円でした。前年度から約1億945万円増えており、多くの区民の治療を支える重要な制度です。
練馬区によると、今回の引き上げで負担が増える区民の人数や総額、年間上限によって軽減される人数について、区では現時点で試算できないとのことでした。
8月診療分のレセプトが届くのは通常約2か月後で、実施後に前年同期と比較する必要があります。月額上限の引き上げ部分だけを見れば、保険者である区の給付費が減る一方、その分は患者の自己負担になります。
区には、データがそろった段階で、負担が増えた人数と金額、年間上限で軽減された人数、区財政への影響を公表するよう求めます。
今回の変更だけを理由に、区民が改めて申請する必要はありません。区がシステム上で新しい上限を計算します。
練馬区は7月1日号の区報とホームページで制度変更を周知しましたが、7月13日時点では、区民からの問い合わせは特に増えていないとのことでした。
しかし、制度が知られていないため、問い合わせがない可能性もあります。区報への一度の掲載だけで十分とは言えません。医療機関、薬局、地域包括支援センターとも連携し、繰り返し分かりやすく知らせる必要があります。
医療保険制度を持続させることは大切です。しかし、そのための財源を、病気になった方の窓口負担に求めるべきでしょうか。
負担増によって受診や治療を控え、病気が重症化すれば、本人の命だけでなく、社会全体の医療費にも跳ね返ります。
練馬区議会でも、制度変更後の受診控えや相談の状況も検証し、国に現場の声を届けることを求めます。練馬区は国に対しても、患者負担の引き上げを見直すよう訴えるべきです。
高額療養費制度は、病気になった時の命綱です。必要な治療を、お金のために諦める人を出してはいけません。

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