
11月20日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」は、今話題の「台湾有事」や「存立危機事態」、そして日本の外交・安全保障のなどについて知っておくべき基礎的知識を、永田町でも日本の安全保障分野に詳しい存在として知られる自由民主党の長島昭久衆院議員に解説してもらいました。台湾有事を巡る各国の複雑な状況、日本の法的枠組み、そして平和的解決への課題とは?
中国が台湾に軍事侵攻することを想定したシナリオの「台湾有事」。11月7日の衆議院予算委員会で高市早苗総理が、台湾有事の具体的なケースについて「存立危機事態になり得る」と答弁したことから、中国が強い反発を示して話題になっています。
第二次安倍政権下の2015年に成立した平和安全法制では、危機レベルに応じた「事態区分」と武力行使の3要件が設けられました。憲法上の規定を設けるために段階的に歯止めをかけている形です。
長島氏はまず、今回の件について「大きく二つの誤解がある」と指摘します。
まず、台湾有事が起これば即「存立危機事態」の認定ではないという点です。国会で答弁したことで有事が起これば即武力行使に移るという懸念が上がっていますが、長島氏は「台湾有事が起こったらいきなり武力行使するわけではない」ときっぱり否定します。

「存立危機事態」とは、第二次安倍政権下の2015年に制定された平和安全法制で定められた、日本が集団的自衛権を行使しうる「事態区分」の一つです。この平和安全法制では、危機レベルに応じた「事態区分」と武力行使の3要件が設けられており、集団的自衛権や武力行使には歯止めをかける形になっていると説明します。

長島氏が示すもう一つの誤解というのが、台湾に対する日本のスタンスです。「日本は日中共同声明(1972年)で台湾を中国の一部と認めている」という意見に対して、長島氏は日本の外交的立場を詳細に説明しています。
日中共同声明の第2項で、日本は中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」として「承認」しました。
しかし、第3項では、中国側が台湾を領土の不可分の一部であると繰り返し主張していることに対し、日本政府はそれを「十分理解し、尊重」すると表明するにとどまり、「承認」という言葉を使っていないことがポイントだと指摘。これは中国と台湾との問題が平和的に解決されることを大前提に置いた上で、「台湾が中国の一部であると承認はしないけど、あなた方がそのことを繰り返し言っていることについては理解していますよ、そして尊重しましょう」という意味が含まれていると紐解きます。
つまり、日本の立場としては、中国政府を唯一の合法政府と認めている一方で、台湾を中国の一部だとは認めていないということになります。

そもそも、なぜ中国は台湾統一を目指しているのでしょうか?
長島氏は1840年の阿片戦争以降に中国が西洋列強や日本による侵略や圧迫によって国の尊厳を失った時代があることが背景にあると解説します。その後、中国は国力を回復していく過程で、香港、ウイグル、チベットなどでの統治強化などを進め、領土的・国家的統一性を回復してきましたが、「最後のピース」として台湾を位置づけており、防衛上も絶対に譲れないレッドラインだと主張してきたのです。このため、今回の国会質疑の中で台湾に触れたことが中国側の強い反発を招いたといいます。

中国と台湾の緊張関係は深刻な状況になっており、米国情報機関は、習近平主席が2027年までに台湾への行動準備を完了するよう指示したと見ており、頻繁に行われるようになった軍事演習についても米軍司令官が単なる演習ではなく、本番に近い「ドレスリハーサル」の段階にあるとの見解を示しています。長島氏は、台湾を囲むような演習が常態化したことで、有事との境目が分かりにくくなっている点も懸念材料だといいます。
台湾有事のシナリオの中でも、現在は平時と有事の中間にあたる「グレーゾーン事態」になっていると見立てます。

長島議員は、アメリカが介入しない場合、日本単独での介入は法的にも能力的にも「難しい」という現実を認めつつ、国際社会と連携して中国に1日1日侵攻を踏みとどまらせるよう、抑止力を維持することが最も重要だと強調します。
最後に長島氏は、多くの努力とアメリカからの経済的・軍事的庇護、憲法9条のもとで築かれてきた戦後80年の日本の平和は「奇跡に近い」もので、今や状況が変わりつつあると緊張感を高めます。「だからこそ我々は当事者として自分たちの生存・繁栄・安全というものを認識していく必要がある」と締めくくりました。
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