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安定政治の終焉?自公連立解消が示す「多極型多党制」への大転換と今の選挙制度の限界とは?(鈴木邦和×政治学者・中北浩爾教授)

2025/11/13

選挙ドットコム編集部

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26年ぶりに解消された自公連立政権は、単なる与党間の対立ではなく、日本の選挙制度と社会構造の変化を背景とする、重要な転換点を示しています。自民党と公明党の連立政権の構造を長年研究し、『自公政権とは何か』の著者としても知られる政治学者で中央大学教授の中北浩爾氏に解説してもらいました。

(この記事は2025年10月19日公開の選挙ドットコムちゃんねるをベースに作成しています)

調整の幅を超えたーー連立解消の核心的要因

中北氏はこれまでも自公政権の間には紆余曲折がありましたが、その度に調整をして長続きしてきたものの、今回の連立解消は「調整の幅を超えて振り切れてしまった」結果だと分析しています。その背景には、いくつかの要因が重なっています。

第一に、昨年の衆院選と今年の参院選での敗北が公明党に大きなダメージを与えたことに加え、自民党の裏金問題を発端に、規律を重んじる公明党の支持者から自民党に追随することへの不満が募っていたと紐解きます。

第二に、連立を組むメリットの喪失が挙げられます。自民・公明だけでは過半数に届かず、日本維新の会国民民主党など他の政党との部分連合(パーシャル連合)による政策実現が常態化していました。結果として、政策決定のポイントが妥協した野党側に取られ、連立パートナーである公明党の存在感が埋没し、連立の妙味が薄れてきていたと分析します。

そして決定的だったのは、人事を巡る信頼関係の崩壊です。公明党とは距離のあると言われている麻生太郎氏を中心とする自民党執行部の新体制や、高市氏の党運営経験の不足によって両党間のパイプづくりができていなかった点、そして国民民主党との連携を強化する姿勢などから「公明党外し」に動くのではとの疑心暗鬼が募り、「このままでは希望が見い出しにくい」という判断から、公明党側が関係を改めるために連立解消に至ったというのが中北氏の分析です。

柔軟な連立組み替えとは両立し難い小選挙区制度のもとで不安定化する政治基盤

今回の解消は、戦後長らく維持されてきた日本の政治システムにおける安定のブロックを崩壊させました。

自公ブロックが崩壊したことで、自民党は今後、少数与党政権の運営を強いられる可能性が高まります。法案や予算の可決には、野党となった公明党や他の野党からの協力をその都度得なければならないため、政策決定のハードルが極めて高くなり、政治運営のコストも増大します。公明党は、自民党候補に2万票前後を上乗せできる強固な組織票を持つ特殊な政党であり、その力を代替できる政党は他に存在しないため、自民党が安定した多数派を形成するのは極めて困難な状況です。

これは現行の小選挙区比例代表並立制が持つ構造的な問題でもあります。小選挙区では政党が議席をかけて真正面から競合するため、政党同士の連携関係を築きにくくする側面があり、「小選挙区制と連立の柔軟な組み換えはなかなか両立しがたい」とし、柔軟な連立の組み換えを可能にするためには、選挙制度も中選挙区制のような比例中心制度に変える必要に迫られていると指摘します。唯一持続可能な連立を築いてきたこのシステムが崩れたことで、政権運営の難しさが露呈しています。

中北氏は、現行制度が想定した「2つのブロックに分かれる多党制」ではなく、「多極型の多党制」へと移行しつつあると指摘します。なかなか形成されなかった野党ブロックよりも優位を保ってきた自公ブロックも崩壊したことで、「責任ある統治する主体」が不在になりつつあります。有権者が政権の枠組みを直接選ぶのではなく、選挙後の連立協議で決まってしまうため、国民の意思が反映されにくい状況がさらに進むことになります。

弱くなる組織と強くなる個人、政権基盤の安定化に求められるのは?

連立解消の背景には、日本の社会構造の変化が深く関わっています。日本社会は、かつての利益団体や宗教団体といったあらゆる組織が弱体化し、個人化が進んでいます。組織力をベースに機能してきた従来の民主主義、そしてそれを前提とした選挙制度が、うまく機能しなくなってきているのです。ネットの影響力増大も相まって、有権者の考え方や投票行動は流動性が極めて高くなり、政治が安定した基盤を失いつつあります。

現状の小選挙区比例代表制では、不安定な少数与党政権と、その都度の連立交渉による意思決定の困難さが続くと予想されます。中北氏は、中選挙区制的な集約機能と政党単位の維持を両立させる手段として、都道府県単位の非拘束名簿式比例代表制のような、より柔軟で安定した政権基盤を作りやすい制度設計の議論が必要であるとの見解を示しています。

政策面への影響はトレードオフ!?自公の復縁は「ゼロではない?

自公復縁の可能性はあるのでしょうか?中北氏は「復縁の可能性はゼロではない」とする関係者の話を紹介します。現時点では今回の解消は執行部レベルの話であり、地方組織での自公連携は継続しているケースも少なくないからです。自民党が選挙で公明党の対立候補を擁立するなど決定的な亀裂が生じない限り、経済的なショックなど危機的な状況が起これば、過去の例(金融危機後の自公連携樹立)のように、再び連立関係に戻る可能性も示唆されているいいます。

政策的な影響としては、公明党への配慮が不要になることで、スパイ防止法など保守的な政策が進む可能性はあります。しかし、憲法改正の発議に必要な議席要件を満たすには、公明党の賛成が不可欠であり、「確かに公明党がはがれてできるってことかもしれないけど、でも公明党の議席がなくなるととできないことも増えてくる」というトレードオフの関係にある点を指摘します。今回の自公連立解消は、日本の政治が長年機能してきた安定の仕組みを失い、予測不能で流動的な局面へと突入したことを明確に示しています。

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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