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「選挙」と「メディア」の今!変わる情報源、進化するネット戦略の最前線【西田亮介氏×米重克洋氏】

2025/8/29

選挙ドットコム編集部

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近年の日本の選挙は、もはや過去と同じ形ではありません。有権者の投票行動から政治家の戦略まで、そのあり方は大きく変化しています。この激変の背景にあるのが、私たちの情報源が大きく転換した「メディアシフト」です。ここでは、8月24日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、社会学者の西田亮介氏とJX通信社の米重克洋氏の対談から、このメディアシフトが選挙に与える影響、ネット選挙の進化、そして報道機関の果たすべき新たな役割について深掘りします。

新聞はもはや「マス」メディアではない!「メディアシフト」の衝撃

米重氏は、現代社会のメガトレンドとして「メディアシフト」を挙げます。これは、一般消費者や有権者が情報を得るために使うメディアの時間が変化していることを指します。かつて新聞やテレビが中心だった時代は終わりを告げ、スマートフォンやSNSを中心としたデジタルメディアが主流となり、相対的にテレビや新聞の接触時間が減少しています。

西田氏もこの見方に同意し、メディアシフトの具体的な兆候を指摘します。

  • マスメディアの影響力低下:2023年には、新聞の1世帯あたりの購読部数が0.5部を割り込み、世帯単位で見れば新聞はもはや多数派のメディアではなくなりました。地方では新聞社が撤退する事例も出てきています。
  • 高齢者層もネットに移行:以前は若年層のメディアとされていたインターネットですが、現在では高齢者層もネット利用にシフトしています。
  • 情報源の文字から動画への転換:ネットの中心はテキストコンテンツから動画コンテンツへと移行し、YouTubeのような動画プラットフォームの影響力が増大しています。

ネット選挙は数十パーセントの得票を狙う「フェーズ2」へ

2013年のネット選挙解禁以降、その活用方法は大きく進化してきました。米重氏はこれを2つのフェーズに分けて説明します。

  • フェーズ1(2013年〜約10年間):全体の数%の得票を狙うための、ニッチなテーマに特化した選挙戦略が中心でした。特定のテーマに関心を持つ熱心な有権者を集める手法として、ネット選挙が有効だとされていました。
  • フェーズ2(2024年以降):ネットを通じて全体の数十%の得票を動かせるほどに、ネット選挙の影響力が拡大しました。

フェーズ2の最大の特徴は、一方通行ではない「双方向」のコミュニケーションです。

  • サードパーティー(切り抜き職人など)の存在:政党や政治家のコンテンツが切り抜かれ、拡散されることで、それを見た人々の投票行動に影響を与えます。
  • 有権者との直接対話:ライブ配信などを通じて、政治家と有権者が直接コミュニケーションを取る機会が増えました。
  • 象徴的な事例:2024年の参院選では、YouTubeやXを参考に投票先を決めた割合が高い「参政党」や「国民民主党」が躍進しました。特に参政党は、都市部だけでなく、地方の保守層からもネットを通じて票を集める傾向が見られ、メディアシフトが地域や世代を超えて広がる「閾値」を超えたことを示唆しています。

メディアの変化がもたらす課題と懸念

しかし、このメディアシフトは新たな課題も生み出しています。

  • ポピュリズムの台頭:アルゴリズムによって「バズる」コンテンツや、多くの人に好まれるような政策が優先される傾向があり、政策立案が票集めのための道具と化す「アテンションエコノミー」の側面が指摘されています。
  • 政治の意見聴取機能の「変容」:かつては地縁・血縁、その後は政策(争点投票)が投票行動を規定していましたが、現代では「いかにコンテンツとして関心を引くか」という点に軸足が移っています。これは「劣化」ではなく、時代の変化に伴う「変容」と捉えられています。
  • 無党派層へのアプローチ:既存の支持層が減少する中で、無党派層の関心をいかに引くかが政党の課題となり、短期間に大量の情報発信を行う選挙運動が主流になっています。
  • 情報過多と不信感:ネット上にはデマや偽情報、誹謗中傷が氾濫し、有権者は適切な情報にたどり着くことが難しくなっています。さらに、「敵対的メディア認知」という現象が広がり、中立的な報道であっても、支持政党によって受け止め方が異なり、「マスメディアが報じているから信頼できない」というメンタリティを持つ層が増加しています。

報道機関の役割と今後の展望:信頼できる情報のライフラインをどう維持するか

このような状況下で、マスメディアを含む報道機関の役割はどのように変化すべきでしょうか。

米重氏は、報道機関が「信頼できる確かな情報を大量に供給するライフライン」として社会に求められているにもかかわらず、その機能が維持できなくなっている現状を指摘します。広告収入や購読料の減少により、記者組織の縮小や取材網の弱体化が進んでいるためです。

西田氏は、報道がコスト部門となっている実態に触れ、国が情報の「ナショナルミニマム」を保障すべきではないかと提言します。

  • 情報のナショナルミニマム:適切な信頼できる情報が、我々の生存権に関わるという認識に立ち、国がその保障に参画すべきという考え方。
  • 報道機関への補助と育成:編集権から遠い分野(地方局の施設維持、共同利用、人材育成など)への補助金導入や、報道スタートアップの育成に注力すべきだと主張します。書店が文化の担い手として振興されているように、報道機関も民主主義の担い手として振興されるべきだという考えです。

また、報道のあり方についても変革が求められています。

かつてマスメディアが社会に大きな影響力を持っていた時代には、各政党に平等な報道時間・スペースを割く「量的公平」が重視されていました。しかし、米重氏はメディアがマスでなくなった今、量的な公平性よりも、内容の確かさや事実と意見の切り分けを重視する「質的公平」に移行しつつあるとし、各社も踏み込んだ選挙報道やスタンスを明確にした上での視聴者とのコミュニケーションをを行うべきだと提言します。

結論として、マスメディアの影響力が相対的に小さくなったとしても、組織ジャーナリズムとしての「事実と意見を切り分け、裏付けを取った確かな情報を安定的かつ大量に供給する」という本来の強みを発揮し、いかに信頼できる情報をネット上で適切に流通させ、有権者に届けるかが、今後の選挙報道における最大の課題であり、日本の民主主義の未来を左右する重要なポイントとなるでしょう。

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