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内閣支持率を調べている”世論調査”ってそもそも信頼できる?世論調査を一歩先から読むには調査方法を知ろう

2016/5/15

渋谷壮紀

渋谷壮紀

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2016年は参議院選挙があることもあり、政治や選挙の話題がテレビでも頻繁に出てきており、みなさんの否応にも目に付いていることだと思います。

失言や「政治とカネ」問題や、はたまた政治家の個人的な資質の問題から、経済政策に関わる指標や内閣・政党支持率まで多くの政治情報がメディアによってほぼ毎日みなさんの目に届くと思います。

テレビや新聞、インターネットなどのメディアからの様々な政治情報を参考に有権者は、各政党や内閣に対して、「支持」・「不支持」や「投票する」・「投票しない」、「好き」・「嫌い」といった「ある種のイメージ」を持ち、「意思決定」を行います。事件や出来事などはストーリーがありますので、イメージがつきやすいと思いますが、解説などのニュースはイメージがつきにくいと思います。

なので、多くのメディアは調査による数字、つまりパーセンテージやグラフなどで分かりやすく可視化しています。
そのような中で、有権者の意見を可視化した世論調査が大きな役割があります。ではその世論調査とはどのような形で行われ、どのように読み取れば良いのでしょうか?

 

世論調査の調査方法は?

世論調査のやりかた

主に、世論調査などの人々の意識を調査する場合には、日本社会の有権者(=母集団)を想定した「社会の縮図」にできる限り近づけようと、様々な統計的な手法を用いて無作為に調査する人を選び、調査員が色々なツールを用いて質問するという方法が行われています。

例えば、調査員が住宅に訪れ、質問を行う「面接調査」や、郵送で送られてくる質問票を回答者に送り返してもらう「郵送調査」などがありますが、多くのメディアで用いられている方法は、電話がかかってきて質問される「電話調査」といったものが挙げられます。

今回は、世論調査のニュースを観るためということで、「電話調査」に焦点を合わせて、説明していきたいと思います。
一般的に「電話調査」は、「RDD(Random Digit Dialing)方式」と呼ばれる方法が用いられています。これは、コンピューターによって無作為に選ばれた電話番号リストを使って電話をかけ、企業の番号ではない一般家庭に対して調査を行います。

さらに電話を受けた人に調査を行うのではなく、あらかじめ「家族のうち、年齢が高い順に並べた◯番目の方に回答してもらう」と決めていることや、電話したときに調査対象者が家にいるように、会社などが休みの週末の朝から夜に行っています。このように電話を受け取る層の回答の集中や若者が回答者に含まれないなど、みなさんが世論調査と聞いた時に思い浮かぶ問題を解消しようとしています。

RDD方式の他には、「層化二段無作為抽出」という属性や地域・環境要因などのグループに分け、その中で人口構造などを参考に回答者数を決め、そのグループ内で無作為抽出による回答者を決めるというものもあります。

いずれにせよ、「社会の縮図」の意見分布を目指し、あらかじめ想定される「回答者の偏り」をできるだけなくそうとする努力を各世論調査では行なっています。

 

電話調査のメリット・デメリットは?

電話調査のメリットデメリット

では「電話調査」を行うことのメリット・デメリットはどのようなことが考えられるのでしょうか?

まずメリットは、電話をかけ続けるだけなので他の調査方法と比べても手間がかからず、コストを低く抑えられ、短時間で行えるため、すぐに刻々と変わる政治状況に対して、常に質問を修正できるなど対応力が高い調査であるといえます。

ですがデメリットとしては、皆さんも経験があると思いますが、長電話や電話口で長い会話や質問は難しいので、質問数や質問の文字数が限られてしまうということです。

また、あくまでも回答するのは自由参加ですので、調査対象者の時間があるときでなければなりませんし、質問の途中で辞められてしまうこと。顔が見えず本当に信用できる世論調査なのか疑って断られてしまうということで回答が少なくなってしまうことがあります。
(よくある携帯電話しか持っていない人はどうなるのかという批判も、今のところは固定電話のみと携帯電話のみの人の意見分布を比較しても大差がないということで大きな影響はないとされています)

 

どのように世論調査のニュースを観れば良いのか?

では、そのように行われている各メディアの世論調査を目にしたときに私たちは何に着目すればよいのでしょうか?

重要なのは、実際の世論調査結果となる「有効回答が何%なのか?」ということです。無作為で電話をかけたのが5000件で、回答したのが50件(1%)だと、回答した人の考え方が偏っている可能性を考えますよね。

しかし、その回答率にも問題点はあります。

知らない番号からの電話を無視し続ける人も多くいると思います。その家庭は有権者がいるにも関わらず、有権者世帯とみなされませんし、週末の2日間程度しか電話での調査を行わないので、家に全くいなかった人も有権者世帯としてみなされません。つまり、電話に出てくれた世帯を対象としているということで偏りと見せかけの回答率の上昇の可能性があります。なので、無駄に回答率が高くなっている場合も要注意なのです。

またメディアによって同じ時期に調査を行っているのに、大幅に数字が異なっている場合も見られると思います。

その場合よく言われるのは、「〇〇新聞は右寄りだからだ!」「〇〇は内閣を批判するために低く操作している!」などです。しかし、そのようなことは決して無いことは明らかにされています。

このような差を生んでいるのは、単純に各メディアで、質問する際に解説的な説明が加わっているかどうかが異なっていることや選択肢の違いなどから発生しています。しかし、解説があるから誘導しているというわけではなく、本当にいきなり電話がかかってきた有権者に対して親切心での必要な情報や色んな意味がある政策の一側面を聞きたいための解説なのかもしれません。

このように問題点も数多くある世論調査ですし、「真の有権者の意見分布」というものは得られることはおそらくありません。

ニュースの観方は人それぞれで難しいですが、重要なのは、こういった情報を含めて数字に向き合い、一つのメディアの調査を鵜呑みにするのではなく、多くのニュースに触れ、自分が納得できるかどうかだと思います。

自分が納得した上で、政治に対して自分なりの「イメージ」を持ち、しっかりと政治に対して「意思決定」を行うということではないでしょうか。

出典:株式会社日経リサーチ「日経電話調査 調査の方法」
参考:http://blog.sugawarataku.net/article/61104112.html
参考:http://blog.livedoor.jp/sgt/archives/51783467.html

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渋谷壮紀

渋谷壮紀

1988年鳥取県生まれ。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士課程在学中。専攻は政治意識・行動分析、実験政治学。研究テーマは政党公約分析、有権者選好のマクロ分析、熟議民主主義の実証研究など。学部時代にWebサービス開発の経験あり。

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