5月12日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、参院選全国比例区特集の一環で、自民党と業界団体、そして組織内候補の関係性についてゲストの豊田真由子氏に解説していただきました。霞が関で政策立案に携わり、その後政治家としても活動した経験がある豊田氏が語る、組織内候補ならではの選挙活動の実態や政策決定の複雑なプロセスとは?
2007年から2022年までの参院選での自民党の組織内候補の得票数をまとめたのが以下の図です。選挙ごとの増減からは、各団体の事情や自民党との距離感などが伺えるといいます。例えば、全国郵便局長会からの組織票は郵政民営化をした2007年から自民党の政権復帰後の2013年までは空白の期間となりました。日本医師会からの得票数は自民党が下野していた2010年に激減しています。
豊田氏によると、全国比例の組織内候補の選挙活動は、衆議院の小選挙区での活動とは大きく異なるといいます。特に熟練度の高い団体の場合、都道府県や支部がシステマティックに連携し、候補者が訪問すると会員が集められた集会が開かれたり、ポスター掲示や人の動員が全国的なネットワークで行われたりします。全国比例での得票は、政党名で投票される票や個人の発信力による票など、様々な性質の票の集合体です。組織内候補であること自体が大きなアドバンテージとなり、一般的に組織の支援があれば当選しやすい傾向にありますが、候補者個人の活動量によって増減することもあります。団体の強弱も時代によって変化し、例えば医療・介護系など、新しい団体が候補者を擁立する動きも見られるといいます。
さて、こうした組織内議員は政治の現場でどのように団体からの要望を実現していくのでしょうか。
世間一般には、国会での質疑応答が政策決定の場であると誤解されがちですが、実際には政策はそれよりずっと前の段階で形作られていきます。基本的なプロセスとしては、まず役所が原案を作成し、有識者や関係者を集めた審議会で議論を重ねます。この審議会等を進めていく中で、いわゆる「族議員」や組織内候補といったその分野の「コアな議員」に根回しや相談を行い、調整を進めます。役所が作成し、審議会でまとめられた案は、その後与党の部会などで説明され、了承を得てから閣議決定、そして国会に提出されるという流れになります。法案や予算案は国会に提出されるずっと前のプロセスで形づくられており、国会で成立の可否を最終的に決める場となっています。
組織内候補は、この政策決定プロセスにおいて団体の意向を反映させる役割を担いますが、その影響力には独特の側面があります。組織内候補個人の政治力というよりは、その候補者を擁立する団体の、票や資金力を含めた政治全体への影響力の現れとして捉えられます。彼らは「組織あっての自分」という意識が強く、団体の論理に基づいて行動します。しかし、組織内候補の発言は、団体の利益を代表するものとして見られがちであり、必ずしもその意見がそのまま通るわけではありません。実際には、様々な方面の意見を踏まえて政策は決定され、法制化に至ります。
加えて、豊田氏は政治側の意識も変容していると指摘。
豊田氏「その団体の利害だけで動くのはもう流行らない。古い与党政治、団体の利害で政策を決めるのは良くない、国民に見透かされていると理解している」
組織票の力、そしてそれを行使する組織内議員の役割は、日本政治にとって重要な要素です。しかし、豊田氏が指摘するように、時代は確実に変化しています。かつての『族議員が牛耳る』政治から、より透明性が高く、国民全体の利益を考慮する政治への転換が求められているのではないでしょうか。
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