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デマ、切り抜き……ネット時代に公選法をどう変えるべきか?【専門家解説】

2025/1/24

選挙ドットコム編集部

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2024年1月22日に公開された動画のテーマは「ネット時代の公職選挙法」

MC松田馨と、ゲストに郷原信郎弁護士をお招きし、虚偽の通報によるSNSアカウントの停止やデマの拡散、切り取り動画での収益など、ネット時代特有の選挙上のトラブルについて、公職選挙法の観点からお話を伺いました。

【このトピックのポイント】

  • 妨害情報にどう立ち向かうか?
  • SNS時代の選挙、公選法はどうあるべき?まずは実態を知るべき
  • 選挙でのSNS発信の「仕組み化」を

虚偽通報で候補者の公式SNSアカウントが凍結?

昨年11月の兵庫県知事選挙に立候補した稲村和美氏の後援会が運営していたXアカウントが、選挙期間中に2度、凍結されました。

兵庫県警は、不特定多数による虚偽の通報が凍結の原因だったとする、偽計業務妨害容疑の告発状を受理しています。また、大量のデマ投稿が行われたことについての公職選挙法の虚偽事項公表罪の疑いについての告発状も受理したとしています。

選挙中に、候補者のXアカウントが、集団からの通報により使えなくなってしまうことは、偽計業務妨害容疑となるのでしょうか。

郷原弁護士は、選挙運動も業務性をもった活動だとし、「選挙運動を妨害する目的で、虚偽の通報をするのは偽計業務妨害に十分当たりうると思います」とコメントします。

郷原信郎氏「とくに、Xアカウントは選挙運動に重要な意味をもっていますから、妨害の結果も大きいので看過できない」

これまでの選挙活動では、怪文書による誹謗中傷がありましたが、ネット時代でも同じことがSNSによってできてしまうことが課題として浮かび上がっています。

また、郷原氏は、自動的に判断されてしまうケースが多いことから、虚偽の通報を疑うプロセスを経ないまま凍結されてしまったのだろうと分析します。

今回の兵庫県知事選では、偽計業務妨害容疑の告発が受理されました。このことで虚偽の通報をした人物を特定することになりますが、郷原氏は「かなり多数の人間が関わっていると思うので、捜査で解明するのは容易ではない」とコメントします。他方で、本来はXなどプラットフォーム側の規制もあるべきですが、現状ではそうした動きはないといいます。

公職選挙法では虚偽事項公表罪がありますが、現行の法律では、成立範囲が限定されています。

公職選挙法は選挙運動の自由、表現の自由を重要視、尊重しています。郷原氏は、次のように解説します。

郷原氏「一般的な選挙運動の中で事実に反することをちょっと話すとしても、当選したいために言葉が過ぎてしまったということが犯罪にならないように、虚偽事項公表罪を身分、経歴、政党の推薦・公認などに限定している」

現行法では、今回のような政策に関することは、当選目的の一般的な虚偽事項公表罪の対象になりません。稲村候補の落選目的ではないかと思えますが、ひとつひとつの発言を見ると、他候補の当選目的に見えるような発言になっていると語ります。

落選目的のような範囲の広い虚偽事項公表罪が適用されない形にされると、犯罪の立証は難しいということになると、郷原氏はコメントしました。

選挙でのデマや妨害情報の拡散にどう対応するか

2024年4月の衆院補選における「つばさの党」事件。選挙の自由妨害罪がどのように適用されていくか裁判が進んでいるところですが、現行法では限界があるとのこと。郷原氏は、「当選目的の虚偽事項公表罪の範囲が狭すぎるのではないか」と指摘し、政策に関することも対象に加えるとした法改正の方向は考えられると語ります。

また、いわゆる「切り抜き動画」で収益を得る動きについても言及し、「収益を受け取る目的で拡散する行為をもっと抑制できないか」と投げかけます。

郷原氏「選挙というのは民主主義の基盤。選挙が公正に行われるために選挙から不当な利益を得ることがいけないという前提。『切り取り動画』の拡散で収益を得るだけの目的は、選挙期間中は制限することが必要」

2016年米大統領選では「フェイクニュース」という言葉が生まれましたが、フェイクニュースを生成したのは、実際にはアフィリエイトが多かったといい、アテンションエコノミーという大きな問題となったと指摘。

MC松田馨は、「YouTubeならパートナーシッププログラムで登録をして報酬を得る訳ですから、選挙後に報酬が支払われないよう申し立てするなどの制限ができるのではないか」と提案します。

郷原氏は、大量の拡散の中で、虚偽とそうでないものを見抜けなくなっていると指摘、収益目的の制限が虚偽性の発見にも役立つのではないかと語りました。

SNS時代の選挙、公選法はどうあるべき?

SNS選挙に対応する公選法の方向性は。

公選法は、選挙運動と表現の自由を尊重する一方で、選挙運動はボランティアの原則をかたくなに守っています。選挙運動で報酬を得ることについて、機械的労務は別として、主体性や裁量性を持ったものはごく一部の例外のみです。

その前提では、SNSを含めた選挙の広報戦略を業務として行うことがほとんど違法になってしまいます。郷原氏は今回、斎藤陣営がチラシやポスターなどを依頼したPR会社の代表がSNSの運用なども行っていたとするnote投稿から、これらの内容が選挙運動にあたる疑いがあり、そうなれば支払った対価についても買収・被買収罪に問われる可能性があると指摘しています。

今日では、SNS上で、ネット上で、街頭で行われたことがすべて動画に残っています。公開情報として残ります。郷原氏のもとにも、さまざまな情報が寄せられるとのこと。「捜査の結果で何が行われたかを把握して、それをベースにして、SNS広報戦略をどうしていくか考えていかなければいけない」とし、「ネット選挙が解禁されて10年。この時代に適合した法律であるかを考えるべき」と提言します。

選挙でのSNS発信を誰でもできるような仕組みを

こうした現代の実態を踏まえて、郷原氏がYahoo!オーサーで提案したのが、「公職選挙SNS運用管理者」制度の導入です。

SNSを含む選挙戦略の企画・運用と関係する公選法・ルールに関する研修を義務付け、公的な資格として与えるもので、立候補する候補者に対してはこの管理者の選任を義務付けるという構想です。

ネット選挙の重要性が増してきたことを踏まえ、従来のポスターやチラシなどに充ててきた公費を削減して、この管理者への報酬支払を認めることも合わせて提案しています。

公平に候補者間にノウハウが提供される基盤、プラットフォーム的なものが必要」と指摘して発言を結びました。

動画本編はこちら!

デマへの対応どうする?ネット時代の公選法を弁護士が解説!

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2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

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