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2024年10月2日に公開された動画のテーマは「自民党総裁選総括 記者の目に映ったものとは」
9月27日に投開票が行われた自民党総裁選の結果の振り返りや人事の動向について、現役政治記者である産経新聞デジタル報道部政治担当デスクの水内茂幸氏と朝日新聞・前政治部長の林尚行氏のお二方に伺いました。
歴代最多の9人が争った総裁選。石破新総理の人事の裏側にあるドラマをお楽しみください!
【このトピックのポイント】
今回の自民党総裁選では、1回目の投票で過半数を取る候補者がいませんでした。石破茂氏と高市早苗氏による決選投票の末、石破茂氏が第28代総裁に選出されました。
水内茂幸氏は、初回の国会議員投票で72票を集めた高市氏に注目します。
もともと、高市氏の票は40票程度とみられていました。投票日の前日に高市氏支持の動きを見せた麻生太郎氏の票が乗ったと思われます。
水内茂幸氏「明らかに想像より違うという姿を見せ、高市さんになるぞという、決選投票に向けての締め付け的意味もあったと思いますが、それがふたを開けてみると違う感じになるのが面白いですよね」
決選投票での主役は、前総理大臣の岸田文雄氏。
水内氏「岸田さんは、『Anything But 高市』だったわけですよ。高市さんだけはダメだと。(麻生氏から高市氏に乗ることにしたと)電話をもらって、岸田さんも火が付いたんじゃないかと思うんですよね」
高市氏は岸田内閣の閣僚でしたが、防衛増税の時に異論を述べるなど、政権運営で折り合いが悪かったと水内氏は分析します。かねてからの関係性に加え、麻生氏が推したこともあり、岸田氏の気が引き締まったのではないかと推察します。
本命候補とされていた小泉進次郎氏は、決選投票に残れませんでした。
林氏は、終盤失速した小泉陣営が、議員票を上積みすることで逆転し、「2位までに入れば総裁だ」という戦略を立てたと説明します。
林尚行氏「でも、党員票の勢いが予想以上に強く、無理だと判断した小泉陣営が『高市じゃない、石破に乗れ』と。進次郎さんで固めた票を、いかにこぼれない形にして2回目に石破氏に投票するかというシナリオがうまくいったのだろう」
また、「麻生さんの30票は今回の総裁選の大きなドラマでした」と語る林氏は、「麻生さんはずっと悩んでいたんですよね。石破と小泉の決選投票だけは嫌だというところから始まっていた」と解説します。
ここで、「麻生氏には誤算があった」と林氏は説明します。
1回目の投票は「計算通り、会心の出来だった」とみえる麻生氏の、決選投票での誤算とは。
ひとつは岸田派の温度感。麻生氏が、岸田派との三頭政治を復活させ、高市氏を祭り上げようとした戦略が、岸田氏に振られた形になりました。
林氏「これには伏線があって。麻生さんは『岸田は俺と一緒にやってくれる』という思いがありましたが、岸田さんの麻生さんを見る目が冷たくなっていたところを見誤った」
もうひとつは参議院議員の高市氏支持が伸びなかったことです。ここには、高市氏の靖国問題があります。
首相になった場合も靖国神社への参拝を続ける意向を示した高市氏ですが、岸田政権では日韓関係を改善し、そのことをアメリカも歓迎するムードが高まっていました。
林氏「俺が作ってきた日韓関係を壊すのかという思いが、高市離れを起こした」
加えて、外交をしっかりやらなければという思いが自民党内にもあり、決選投票で麻生氏の思惑が外れたのではないかと推測します。
高市陣営の取材によると、靖国神社の話は選挙戦の途中からトーンを落としていたようですが、とくに来年選挙を控える参議院議員の不安を招いたという可能性も指摘されます。
10月1日には、石破内閣の顔ぶれが発表されました(収録日の9月30日時点で内定)。
この中で林氏が最も注目するのが、村上誠一郎総務大臣です。
村上氏は今まで反安倍のスタンスを鮮明に示し続けてきました。同時に、言葉が強いところがあり、物議を醸してきた。安倍チルドレンから見ると許しがたい敵である村上氏を総務大臣に起用するという話で、永田町には「村上ショック」という衝撃が流れたのだそうです。
とはいえ、全体を見ると「石破氏の政権基盤の弱さ、いろんな人に借りを返す人事になっている、借金返済の人事」と林氏は指摘します。
林氏「刷新感を出すなら若手や女性が基軸になるべきところ、予想される顔ぶれ(※編集部注:収録日時点)の裏側には、今回石破氏を押し上げた人たちの影がよく見える形になってしまった」
水内氏は、総裁選で敗れた高市氏系が入らなかったことに着目しながら、
「(麻生派など)旧派閥の意向は飲んだのかな」とコメントします。
とはいえ、一人ひとりを見ていくと、石破氏の強い思いが垣間見えるところもあります。
林氏「外務・防衛に防衛系の2人を置きましたよね。すぐじゃないですけれど、日米地位協定の見直しに向けた第一歩を進めるのはあるのかな」
水内氏「防衛族の中で石破氏に近い2人を据えることで、多少摩擦が起きてもガンガンやっていきたいという体制を敷いたのかな」
水内氏は、平将明氏(デジタル大臣)にも「自民党の中でも逸材と言われていて、デジタル分野に精通しているし、理にかなったことをやる」と期待を寄せます。
全体的に、主流派と非主流派の分断が非常に色濃く表れた人事。今後の政権運営で、党内にどんなリスクとして残るのか注目されます。
林氏は、1回目は石破氏を上回り、決選投票でも石破氏と肩を並べるほどの議員票を集めた高市氏陣営を敵に回すような政権運営ができるのか、と疑問を投げかけます。
林氏「そうはいっても、プラス面でいうと、これほどまでに『美しい』疑似政権交代は久しぶり」
55年体制以降、党内で疑似政権交代をすることで、雰囲気をガラッと変え、国民に与党であり続けられることを訴えかけてきた自民党の「お家芸」だとゲストの両名は頷きます。
象徴的なのが副総裁人事。麻生太郎氏から菅義偉氏に変わったことを「主流派中の主流派から非主流派中の非主流派に、同じポストが変わる」と示します。
また、水内氏は2012年の総裁選の際、逆転負けした石破氏に幹事長のポストが与えられた経緯を引き合いに、今回、高市氏が幹事長でなく総務会長を提示されたことで、高市氏周辺に反発があったと指摘します。
とはいえ、支持率が2割くらいに落ちた自民党にとっては、ガラッと変わった印象を与えるのは、自民党に信頼を集める点で「国民の気持ちにコミットするような政権ができたのではないか」と評価します。
水内氏「選挙向けではガラッと変わったイメージで、次につながるかもしれない」
最後に、総裁候補の処遇は。
林氏は「今回、ポスト岸田の総裁候補は多過ぎでした」とあっさりと総括します。
林氏「いろいろな貸し借りの借りを返さなければならないのに、(自分以外の)8人全員を入れるのはそもそも無理な話だったんだと思うんですよね」
石破茂・新総理の人事に見える思惑とは?現役政治記者が分析!
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