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【衆院選2021】日本は投票しにくいの?他国と比べてみたら(原口和徳)

2021/10/29

原口和徳

原口和徳

衆議院議員総選挙は31日に投開票日を迎えます。

総選挙の投票率は前々回が戦後最低、前回が戦後2番目に低い水準となるなど、投票に参加しない有権者が増加しています。また、投票率の向上に向けて、インターネットによる投票の導入などの投票環境改善に関する提言を目にすることもあります。

日本の投票環境は有権者にとって優しいものとなっているのでしょうか。

確認してみましょう。

最盛期よりも1割減少も、カナダ、イギリスより投票所は多い

日本の投票所数は、市町村合併に合わせて整理、統合が進み、年々減少傾向にあります。

図表1_衆議院議員総選挙における投票所数の推移

前回の総選挙では47,741か所の投票所が設置されていますが、戦後、最も多くの投票所が設置されていた2000年の総選挙に比べると投票所は1割以上減少しています。

また、図表2ではイタリアを除くG7各国と投票所数を比較しています。

図表2_投票所数の比較

日本の投票所の数は、カナダ(20,000か所)やイギリス(38,812か所)よりも多く、アメリカ(107,457か所)やドイツ(90,000か所)、フランス(66,546か所)よりも少ないことがわかります。

「投票のしやすさ」を考える際には、投票所へのアクセスのしやすさがより重要な意味を持ちます。

そこで、10000平方キロメートル当たりの投票所数を比較してみます。

多い方から順に、ドイツ(2,521か所)、イギリス(1,597か所)、日本(1,262か所)、フランス(1,223か所)、アメリカ(112か所)、カナダ(20か所)となります。

ただし、国土の内、居住の用途に供されていない面積の割合は国によって異なります。

そこで、人口に対する投票所の数も確認しておきましょう。

人口10万人あたりの投票所数を多い方から順に並べると、ドイツ(108か所)、フランス(99か所)、イギリス(58か所)、カナダ(53か所)、日本(38か所)、アメリカ(33か所)と、日本が2番目に少なくなります。

有権者視点で考えてみると、日本の投票所は他国と比べて「そこそこの距離にあるけれど、他の利用者が多いかもしれない」状況にあると言えそうです。

投票所はコンビニエンスストアと同じくらいの数、設置されている

この「そこそこの距離感」はどれくらいの便利さなのでしょうか。

身近な施設と比較してみましょう。

前回の総選挙では47,741か所の投票所が設置されましたが、これは日本で最も店舗数が多いコンビニエンスストアであるセブンイレブン(21,210店舗。2021年9月時点)の2倍以上の数となっています。

また、国内店舗数上位3社(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソン)の合計店舗数52,327店舗に迫る規模となっていることもわかります。(店舗数は各社HP掲載の店舗数の合計。10月26日アクセス)

上位3社の店舗数の合計は日本のコンビニエンスストアの総店舗数の9割を超えていますので、投票所は最寄りのコンビニエンスストアを探す感覚でみつけることのできる施設ということができそうです。

また、身近さを時間で表してみると、自宅から投票所までの移動に要する時間はおよそ8割の人で10分以内であることが明るい選挙推進協議会による調査で明らかにされています。

「コンビニエンスストアと同じ感覚で見つけることができて、概ね10分以内に到着できる」投票所は、かなり行きやすい施設となりそうです。

投票所でのオペレーションは充実

「ほかの利用者が多いかもしれない」状況はどうでしょうか。

投票所にスムーズにアクセスできてもそこで長時間待たされてしまうようだと、「投票すること」が大変なイベントになります。

例えば、イギリス総選挙(2019年)では、投票所に数十分待ちの行列ができていたことが報じられていますし、アメリカの過去の選挙でも同様です。

図表3では日本とアメリカの投票日当日の投票所の利用状況をまとめてみました。

図表3_投票所での投票数の日米比較

当日投票者数を投票所の数で割った1投票所当たりの投票者数は、日本733票、アメリカ(2018年中間選挙)290票、アメリカ(2020年大統領選挙439票)と、日本の投票所がアメリカの投票所の倍近い投票を扱っていることがわかります。

一方で、台風などの悪天候時などの特別なケースを除くと、投票所で行列ができたことが報じられることはほぼありません。投票所についてから投票までの時間も通常ならば10分もあれば完了することができます。

投票所についてからのオペレーション、有権者にとっての投票のしやすさは、他国よりも整えられている、と言えそうです。

投票所の運営にかかる費用は200億円超

ここまで見てきたように、日本の投票環境は他国と比べて大きく劣っているわけではありません。

インターネットによる投票など、注目を集めながらも実現できていない事柄もありますが、日本の投票環境は十分整備されていると言えそうです。

なお、他国にも引けを取らない投票環境を準備、提供するためには相応の費用も掛かっています。

前回総選挙において、投開票の実務を担う市区町村のモデルとして報告されてる横浜市で投開票事務に充てた人件費は経費の49%程でしたので、市区町村全体では総経費437億円のうち、215億円ほどが投票所運営などの投票環境の整備に充てられているものと推定されます。

これだけのコストを用いている取組み、せっかくならば使用してみませんか。

投票をする理由、しない理由は人それぞれですが、「投票するのはきっと大変だから投票はやめておこう」と思われる人がいたら、ぜひ日本の投票のしやすさは他国と比べてどうなのか、日常生活での他の活動と比べて大変なのかどうか、といった視点でも比較してみてもらえればと思います。

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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