第25回参議院議員通常選挙は、21日の投開票へ向けて最終週に突入した。「ラストホリデー」となった15日(海の日)、東京・銀座の三越前交差点前には、立候補者とともに知名度の高いタレント議員らが集まり、支持を訴えた。
銀座に市井紗耶香さんがいたので、今回は投票行って外食します@sayakaichii#市井紗耶香#モーニング娘#プッチモニ#参議院議員選挙#参議院議員選挙2019 pic.twitter.com/Qb8DK2JliC
— (@Kassy217) 2019年7月15日
#銀座 の歩行者天国に、甘利明 @Akira_Amari 代議士、辻清人 @tujikiyoto 代議士、朝日健太郎 @kentaroasahi 議員、今井絵理子 @Eriko_imai 議員、菅原一秀 @sugawaraisshu 代議士など多数の国会議員、そしてご地元の議会議員の方々とご挨拶させていただいております。#東京 #参院選 #たけみ #政策 pic.twitter.com/NNS5HQ5RY5
— たけみ 敬三(自民党 参議院議員・東京) (@TakemiKeizo) 2019年7月15日
午後2時半ごろ、自民党の武見敬三(たけみ・けいぞう)候補(67)=現職=の街頭演説を前にして、衆議院議員で党選対委員長の甘利明(あまり・あきら)氏(69)、元アイドルグループ「SPEED」の今井絵理子(いまい・えりこ)参議院議員(35)、元男子バレーボール、ビーチバレー選手の朝日健太郎(あさひ・けんたろう)参議院議員(43)がかけつけた。
知名度抜群の3氏だが、特にアイドルタレントだった今井氏が登場すると、集まってきた有権者で歩道がごった返した。今井氏の応援演説に聞き入っていた東京都の女性会社員(28)は、「今井さんの話を、一度聞いてみたいと思った。甘利さんのことは知らなかったです。政党と立候補者はまだ決めていません」との反応。埼玉県の男性医師(29)は「すでに期日前投票を済ませたが、今井さんを一目見たくて足を止めた」と話していた。
「武見さんが安心できる状況には、少し足りない。私は夜も眠れない」と危機感を訴えた甘利氏は「日本の先端技術と医療の現場を結ぶためにも、必要な人材だ。米国やEUにも知人が多い」などと持ち上げた。街宣車を降りた後も聴衆との記念撮影に応じ、車上の武見候補を見守り続けるという力の入れようだった。
実は、自民党が武見候補応援に力を入れるにはわけがある。東京選挙区の改選数は6。同党の丸川珠代(まるかわ・たまよ)候補(48)=現職=は安全圏内と見ているが、武見候補は“グレーゾーン”と判断しているからだ。
東京では、丸川候補とともに、共産党の吉良佳子(きら・よしこ)候補(36)=現職=、公明党の山口那津男(やまぐち・なつお)候補(67)=現職=がリードしていると分析され、残る3議席を立憲民主党の塩村文夏候補(41)=新人=、同じく同党の山岸一生候補(37)=新人=、日本維新の会の音喜多駿候補(35)=新人=、国民民主党の水野素子候補(49)=新人=、そして武見候補の5人で争っている。武見氏は一歩リードしていると見られているものの、終盤に差し掛かり、他候補の追い上げが激しくなっているとの報告もあり、安穏としていられない状況が続いている。
自民党はもともと、選挙戦のリサーチ力に定評がある。以前は、広告会社、リサーチ会社に依頼し、人海戦術による電話リサーチを行っていたが、近年は、コンピューターを活用した「オートコール」と呼ばれるマーケティングリサーチに移行している。オートコールは、コンピューターの合成音声で、有権者にメッセージを伝える電話業務サービス。アンケート形式で回答してもらうものが多く、民間企業の営業支援ツールとしても利用されている手法だ。
無作為抽出で、携帯電話に届くショートメールサービスも活用できるため、憶えの無い電話番号の着信には出ないという有権者にもアクセスできる。自民党は、他にもフェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSに加え、今年の4月にはラインも開設。オートコールでリサーチできる年齢層が、比較的高め(特に50歳代以降に有効と言われる)とされるため、若年層へのリサーチはSNSを有効利用している。
しかし、本当の強みは、なんといっても選対職員のスキルの高さだろう。あらゆるリサーチを駆使し、収集したデータを本部職員が分析する。その結果は幹事長に報告され、選挙戦略の提言まで行われる。もちろん、野党もリサーチは行っているが、選挙経験豊富な職員で構成される自民党選対スタッフのスキルには、太刀打ちできない。この差がそのまま、選挙戦に影響しているといって差し支えないだろう。
また、総裁の安倍晋三氏(64)は、冷静かつ客観的に選挙判断するタイプであることも、無視できない要因だ。安倍氏は、「強い」「弱い」「逆転の可能性がある」といった具合に選挙区情勢を明確に色分けし、今後の戦略をはじき出す。そして、「ヒト」「モノ」を投下する重点選挙区を決定する。
例えば、改選数3に対し9人が立候補している北海道選挙区。知事を退任した自民党の高橋はるみ候補(65)=新人=、立憲民主党の勝部賢志候補(59)=新人=がリードしているとされ、残り1議席を巡り、自民党の岩本剛人候補(54)=新人=、共産党の畠山和也候補(47)=新人=が争っていると見られているが、12日には、党厚生労働部会長の小泉進次郎氏が岩本候補の応援に駆けつけ、15日には高橋、岩本両候補への応援で、安倍氏も北海道入りした。
改選数1の岩手選挙区は、野党統一候補で無所属の横沢高徳候補(47)=新人=、4選を目指す自民党現職の平野達男候補(65)=現職=、NHKから国民を守る党の梶谷秀一候補(53)=新人=の3人が立つ。岩手県は、国民民主党・小沢一郎氏の地元で知られ、実に27年間、自民党は苦杯をなめ続けているが、今度ばかりはと一歩も引かない構えでいる。12日には小泉氏を平野氏の応援に向かわせ、15日には安倍氏も岩手入りした。
投開票日まで、残りあと5日。「オートコール」やSNSを駆使し、経験豊富な職員が各選挙区情勢を分析し、党幹部が重点選挙区を最終決定。そして投開票日へ向け、絞り込んだ地域に「ヒト」「モノ」を集中投下する自民党。安倍、小泉両氏をはじめとする党幹部、著名議員の応援演説スケジュールを探れば、終盤の参院選戦略が見えてくるのではないか。
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