今年注目を集めた東京都政。都知事に就任した小池百合子氏の後をめぐり、民進党の鈴木ようすけ氏、自民党の若狭勝氏、幸福実現党の吉井としみつ氏の3名が火花を散らしました。選挙ドットコムでは各候補への取材を行なってきましたが、今回は小池新党の鍵を握る(?)若狭勝衆議院議員にインタビューを行いました。
若狭氏は東京都足立区出身。中央大学法学部を卒業後、東京地検の検事に任官。東京地検特捜部副部長、東京地検公安部長などを歴任。2014年、衆院選比例東京ブロックにて初当選し、自民党法務部会 副部会長などを務めました。2016年10月には小池氏の都知事転出により行われた衆議院東京10区の補欠選挙で当選しました。
-編集部
今年は選挙が多い年でしたが、選挙の度に若狭議員の動きが注目されていました。
都知事選で自民党の東京都連が増田寛也氏を応援する中、小池百合子氏の応援に回られていました。これがきっかけとなり、都連との対決姿勢が報道でも取り上げられました。
都連は若狭議員の顔写真と名前を急にHPから削除し、これに対して若狭議員は「私を事実上除名し続ける東京都連の異常性」と題するブログを執筆され、かなり強い言葉で都連を批判されています。
こうした姿勢を見るに、党の拘束よりまず自分の信念を貫いているように思えますが、その信念を貫く原動力の源やルーツは一体どこからきているのでしょうか?
-若狭勝衆議院議員
中学校時代の経験がベースにあるように思っています。
私は足立区の中学校出身なのですが、当時の中学校は非常に荒れていました。どのような経緯で学級委員になったのかはよく覚えていないのですが、学級委員になっていたときに、クラスの中でかなり過激ないじめが起きていました。いじめというよりも犯罪と言ってもよい状況でした。私はそのいじめを学級委員として目の当たりにして、いじめを防止することや対策を取ることが何もできなかったのです。そこで私は自分の力の無さや責任を感じました。毎日、学級委員の辞表をカバンに入れて通学していました。
このときに感じた思いが、政治家になる前の検事時代や弁護士時代も、根底にあったかもしれません。青臭い話ですが、検事は素朴な正義感が無いと仕事が務まらないと思っています。
-編集部
「素朴な正義感」とのことですが、政治家になる前のキャリアである法の道を選ばれたのも、「素朴な正義感」からなのでしょうか?
-若狭議員
実は高校生の時はお医者さんになろうかなと思いました。当時描いていたのは町のお医者さんだったのですが、もう少し大きなことをしたいと思い、大学進学時には医学部ではなく、法学部に進みました。進学後、司法試験を受けるのですが、その時点ではおこがましい話かもしれませんが、とりあえずは司法試験を資格として受けておこう、その中で「役者」志望の気持ちをも抱いていました。
-編集部
え、役者を目指されていたのですか!?
-若狭議員
はい、この話はあまりしたことがなかったのですが、実は俳優や役者にあこがれていました。
小学校の低学年くらいの時から自分で台本をつくってクラス会での劇を構成したり、同級生に振り付けをアドバイスするなどもしていたのですが、そういうことがあったので、シナリオを書いたり、演技することがとても好きでした。今もまだ、役者になりたいと思っていますよ(笑)
そんな思いで、司法試験に受かっておけば、下積み生活が長い役者の道を選んでも、生活基盤を支えられると思ったんです。
大学時代にも英語の劇をつくったり、実際に司法試験合格後も劇団員の入団試験に行ったりしていましたよ。
-編集部
日本で最難関とも言われている試験に、「役者のすべり止め」で受かるとはすごいですね… そうやって足を踏み入れた法の世界ですが、役者や俳優を目指さず、そのまま検事や弁護士としてキャリアを歩んできたのはどうしてなのですか?
-若狭議員
合格した後は司法試験修習生までやっておいた方が、役者などを断念してもつぶしが効くと思い、とりあえず司法試験修習生になりました。
司法試験修習生というのは、当時、検察庁4ヶ月・弁護士4ヶ月・裁判官4ヶ月と3箇所で実務を勉強するものでした。まず検察庁の修習にいったのですが、そこで今でも忘れられないある事件に関わったことが私の人生を変えたんです。
その事件を今でも私は冤罪だと思っています。ある強制わいせつの事件だったのですが、検察庁の修習に行ったら、被告人は否認していて「あー、否認しているのか。認めた方が楽なのにな」くらいに思っていたんです。しかしその後、次の弁護士研修になりましたら、たまたま、その事件の担当弁護人の弁護士事務所での研修であったため、また同じ事件に出会いました。
検察・弁護士と、違う立場から同じ事件を見ることで、自分の中で「本当に犯罪を犯しているのか?」と問い始めるようになりました。その後、実際に現場に行って調査するようにもなりました。さらには、弁護士の研修の後に行った裁判官の研修でも、その事件の担当裁判官のもとでの研修であったため、またこの事件に出会いました。今の司法修習制度ではありえないとは思うのですが、検事・弁護士・裁判官と違う視点から同じ事件を見たことで1つの事件と向き合い、自分の中での「正義」を意識するようになり、そのまま法の道へ進みました。
-編集部
「正義感を持ち合わせること」という話が出ましたが、こういった正義感は政治家にも欠かせないものでしょうか?
-若狭議員
そうですね。私は今回の東京都知事選挙の応援に17日間通して立ったのですが、演説に来てくださる有権者の方々にも利権だとか、ブラックボックスだとか、そういう話を聞くと私は血が騒ぐとの話をさせていただきました。一生懸命汗水たらして働いている人が馬鹿を見るような利権構造は打破しなくてはならないと私は思っています。
私は57歳の時にはじめて政治家になろうと決意したわけですが、その時に「自分の信念に基づいて正論を国民の皆様に伝える」というのが自分の使命なのだと、強く思いを抱きました。
私はこうした使命感から政治家になっていますので、それに対して文句を言われても気に留めません。「政治家として当選し続けること」が目的であれば自分の信念を曲げる人もいるかもしれませんが、私は信念を曲げるくらいなら議員バッジを外します。しがらみや人間関係ではなく、正義や自分の信念を優先したいのです。
-編集部
誰よりも早く小池百合子都知事の応援に回ったのも、そういった思いからなのでしょうか?
-若狭議員
はい、そうです。私はかねてから、公正や透明性や情報公開について様々なところで発言してきたのですが、それと小池都知事のブラックボックスや利権を追求するスタンスがぴったり合っている点が大きいです。そういう面で、都知事選挙の応援にも力を尽くせたと思います。
また、小池都知事が主催している「希望の塾」。僕は直接関わっていないのですが、都知事選を通して政治に興味を持つようになった人が多くなったことは間違いないと思います。ブラックボックスを明るみに出すためには、皆さんの関心が欠かせません。政治というものは、みんなが意識して関心を持ってくれることがとても大切であり、巡り巡っては私たちの生活に直接関わってきます。そういう意味では、党派も関係なく、政治の裾野を広くするということは政治家がみな考えなければならないマターだと思います。
政治に関心を持ってくれる人が増えているのと同時に、ネットの影響も大きくなってきたと思っています。ネットは情報公開に対して大きな力を持っています。これからも都議会・都政の情報公開はもっともっと進んでいくでしょう。進めるべきでしょう、あるべき政治の姿として。
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