アメリカ大統領選挙ではメディアの予想を大きく裏切り共和党ドナルド・トランプ氏が圧勝しました。かつて本命視されていた民主党ヒラリー・クリントン氏はあの日からすっかり影を潜めてしまっています。しかし、影を潜めたのはクリントン氏だけではありません。
大統領選と同時に行われた連邦議会選では、上院と下院の双方で共和党が過半数の議席を獲得しました。つまり、大統領・上院議会・下院議会すべてが共和党に握られてしまったことになります。この状況は2004年に当時のブッシュ政権下で行われた選挙以来、12年ぶりの出来事です。
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ヒラリー氏の敗北は今回が初めてではありません。2008年の大統領選民主党予備選挙で現大統領バラク・オバマ氏に敗れたのに続いての敗北です。二度続けての大きな敗北によって、ヒラリー氏の政治キャリアは大きく傷がついてしまいました。さらには、ヒラリー氏と夫のビル氏を中心とする「クリントン派」クリントン派とでもいうべき政治家たちもまた民主党の中で大きく傷をつけてしまうことになりました。
1993年に夫のビル・クリントン氏が大統領に就任して以降、民主党の中で従来の福祉拡大路線を見直し、経済成長を重視する勢力が台頭していました。
しかし、2009年に民主党の中でも福祉重視のオバマ氏が大統領に就任することによって、その影響力は徐々に陰りを見せました。オバマ政権では、ヒラリー氏が国務長官を務めるなど、その影響力は一定程度残っていると思われていましたが、今回改めて大統領選で敗北したことで、「ヒラリー氏の考え方や政策では勝てない」と考える人が増えました。
夫のビル氏が大統領に就任してから25年近く続いたクリントン時代が終わった今、民主党は次の路線をなかなか決められずにいます。
簡単に言えば、「どれだけ福祉を重視し大企業と距離を置くか」を民主党全体が迷っているということになります。敗北したヒラリー氏への批判から、現在民主党の中で台頭しているのは、ヒラリー氏と予備選で争ったバーナード・サンダース上院議員のような福祉重視・大企業批判路線の議員です。一方で「急に大きく方向展開し過ぎても選挙に勝てない」という批判や不安は根強くあります。
民主党がどういう路線を選択するかを占う重要な指標となるのが、民主党全体の広報や事務を取り扱う民主党全国委員会(DNC)委員長の人選です。このポストを経験して大統領になった人はこれまで1人もおらず、本来であれば重視されるポストではありませんが、「民主党の次の顔」を決める機会だとして、注目されています。
このポストにサンダース氏に近い福祉重視大企業批判路線の人が就くか、オバマ大統領やクリントン氏に近いより現実路線の人が就くか。それはつまり、「次の民主党の方向性を示すサイン」になるでしょう。
してもう一つ重要なのが大統領候補の発掘です。現在名前が挙がっているサンダース氏は75歳、同じく福祉重視・大企業批判路線のエリザベス・ウォーレン氏も69歳です。4年後には79歳、73歳と超高齢です。2008年に当選した時に47歳であったオバマ大統領のような若いリーダーは現在民主党におらず、党員の中では大きな不安要素になっています。ライバルである共和党は、今回の議会選挙で勝利に貢献したポール・ライアン氏が47歳であることを考えると、事態は深刻といえます。
果たして、「新しい民主党」として力強いメッセージを有権者に送ることができるのか。民主党の再建はこの点にかかっています。
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