花粉症対策にもなる「木材の利用」。松沢議員が目をつけたのは、すでにヨーロッパで実用化され、ハウステンボスの宿泊施設にも導入された新しい木材加工技術でした。都市部と地方の格差解消にもなるかもしれない、その秘策とは…。
知事時代、神奈川に木材加工供給センターをつくって、丹沢や奥多摩から間伐材や成木材を降ろしてこようと考えました。
皮はバイオマス発電、質のよい木は無垢の柱、その中間の木は合板などにすればそれぞれの需要に応えられるし、公共事業用などにも使っていけばいいでしょう。それを県が主導して、民間でやってもらおうと思っていた。これなら、山林を持っている人たちにもインセンティブが働くでしょ。
大量にできるようになってくるとコストが下がってくるので、海外との価格競争でも負けないようになる。そうすると日本の林業が動いてきますよ。
ここまで政策を変えれば、すぐにはゼロにはならなくても、結果的に花粉症で苦しむ人も減りますし、経済的損失も減らすことができます。
ですから、「花粉症」は完全に政策の問題で、強い政治力で動かせば決して解決できない問題ではないのです。
ただ、改革には必ず抵抗勢力がつきものですよね。例えば、「今まで通りでいい」「環境が激変するのは困る」という人もいますし、「木が確実に売れなければイヤだよ」という人もいますから、そういう人たちを説得しないといけない。
最初は税を少し安くするとか、補助金なんかも必要かもしれません。
まだ実現はしていませんが「建て直しをする学校校舎をすべて木造化しよう」というのも私の政策なんです。もっとできるのであれば福祉施設も。
学校の建て替えに木材を使えば大きな需要が生まれます。それには、まずは行政が引っ張っていかないといけない。ただ、木造で3階、4階となると、建築基準法で耐火構造にしなければいけないとか、強度の問題とかが出てくるわけです。
それで、強度をもった木材が作れないか? となるわけですが、近年日本でも急速に注目されているのがCLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー/直交集成材(板))です。ヨーロッパで1990年代に研究されはじめ、私はこれが林業再生の切り札になるのではないかと思っています。
これはすごい技術で、木の弱い方向を交互に合わせることで、とても強い木がつくれるんです。例えば、イギリスでは、これを使って9階建ての集合住宅、ベルギーでは4階建ての大型高齢者施設がつくられています。これなら4〜5階建ての学校ができます。
ただ、日本では、建築基準法や消防法など関連の法律をクリアしないといけません。
しかし、これが実用化されれば、木の重量は鉄筋より圧倒的に軽いので、基礎も鉄筋ほど深くまでやらなくて済んで、コストも安くなる。そうなれば需要も起きますよね。
CLTについて、国土交通省や林野庁が一所懸命に研究していますけど、なかなか法律の大胆な規制緩和が進んでいかないのです。
官僚は前例踏襲主義だし、日本は地震も火事も多いですから、規制を緩和すれば「行政責任を問われるんじゃないか」ということもあって、スピードが遅い。
ですからそこは政治のリーダーシップが必要です。
日本では問題が起きることを恐れてどんどん規制を強化する方向になっています。強化するべきところもあるけど、ヨーロッパでは使われているわけですから、それを「日本でもやろうじゃないか!」となれば、新規参入するところが出てくるかもしれないし、新しい市場ができるかもしれない。
単に昔と同じように「木の家をつくれ!」ではなくて、今の時代に合った技術革新も含め、もう1回、木の経済・木の文化を、山と木を使った新しい経済を作り出す。これは成長戦略です。木のビルができたら、話題にもなりますし、一挙に需要がふくらみますよ。
少し明るい話題としては、政府が10年程前からやっている「緑の雇用」というもので「山に入って林業をやってみませんか?」と、森林組合などへの就職のお世話をしています。
今、首都圏以外は人口が減っていますよね。都会の競争社会のなかで疲れきってしまうより、「自然の中で仕事したい」という、新しい感覚を持っている若い人も増えてきていますし、団塊世代で定年退職後にUターン、Jターンなどで地方に行く人も増えています。山で働く機会を提供できれば、地方への人の流れを促進できるし、働く人たちもやりがいがありますよね。
まとめると、林業の新しいビジネスモデルをつくって、住宅・公共事業・発電などで木材の需要を喚起する。そうすれば、人が戻るし、首都圏と地方の格差はなくなっていくし、山林も再生できる。結果として花粉が減りますから医療費も減り、年間1兆円ともいわれる花粉症による経済的損失も減少して、いいことだらけだと思っています。
僕が総理だったらやるんだけど、安倍総理がそこまで考えてくれているかどうかは分からないですね(笑)。
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