毎年2月頃から始まる「花粉症」の季節。症状に悩む人は年々増え続けており、いまや「国民病」ともいわれています。この花粉症、政策にこそ根本原因があると断じ、対処療法的な対策ではなく、根本を改める大胆な政策を実行することにより、花粉の激減だけでなく「経済好循環」まで生み出すことが可能だと力説する松沢成文参院議員に、「花粉」と「経済」について話を聞きました。
ここ10年、20年くらいですか、「花粉で大変」という人が増えましたよね。私の家内も花粉症で、この時期、洗濯物は外に干せないのです。室内に干すと乾かなくて大変なんですよね。友達もここ5年くらい、花粉症の人が増えて、これは国民的な損失だと思いました。
国民のみなさんは「スギや植物の花粉が飛んできて花粉症になるのだから、自然災害で仕方がない」と思っている人が多いと思うのです。でもこれは、実は林業政策の失敗による人災です。
すぐには無理ですが、政策を転換して、正しい政策にすれば改善できるものです。
花粉症はつらいというだけなく、経済損失も生じさせます。
いろいろ試算はありますが、花粉症の人の医療費が年間約3,000億円。他にもGDP(国内総生産)や、経済活動が滞りますよね。こういう被害が年間で約7,000億円以上。花粉症によって儲かるメーカーもあって、それが約700億円といわれている。
足し引きすると、花粉症によって年間で約1兆円の損失を生んでいます。これはすごい損失ですよ。
今、国民の3割が花粉症といわれていて、それがこの10年で約10%も増えているそうですよ。ここで対策を打てないと、1兆円の経済的な損失が1兆5,000億、さらに2兆円に…となっていくわけで、こんな国民的損失はないでしょう。
これをどうにかしなければいけない。ゼロにはできないかもしれないけれど、減らすことはできるかもしれません。
なぜ花粉症が増えたかというと、先ほどいったように、これは林業政策の失敗です。
まず、戦時中は燃料が足りないので木をたくさん切りました。戦後は、国土が潰されてしまったわけですから、今度は家を建てなければいけない。また木をいっぱい切ってしまった。それで山がハゲ山になってしまいました。
木を植えないと土が流れてきたり、山に水を保水する機能がなくなってしまうので、「短期間で育つ木を植えよう!」ということになった。それで、スギ・ヒノキを植えていった。
本来はその時、カエデ、クヌギ、コナラやブナといった、色々な木を植えればよかったんです。
成木になるにはスギは40年、ヒノキは60年といわれていますから、他の木材に比べて成長が早いんです。「材木が足りない!」と叫ばれるなか、戦後の造林計画の中で、早く使えるスギ、ヒノキばかりが増えてしまった。
でも、木は植えてから4〜50年経たないと木材として使えませんから、植えても木材が足りなかったのです。
政府はそこで、昭和39年に大決断というか、それは間違ったものだったんですが、海外の木材は安いので「木材の輸入自由化」をしました。そうなると、大工さんや材木屋さんはみんな安いものを使ってしまいますから、今まで植えてきた木が売れなくて、林業が衰退してしまったのです。
木は、山を守るために植えていかないといけないのですが、手入れもしていかないといけないんですね。普通、木を植えたら手入れをしますよね。枝打ちをしたり、間伐をかけて、間引いたりしてお世話をして、だんだんと太い木にしていく。すごく手間がかかります。
海外の安い材木が入ってくると、「こんなコストがかかるものは売れないだろう。やっていられない」ということで、山を放棄してしまった。
そうやって弱ってしまった木は、子孫を残したいので、花粉をいっぱいつくります。それが飛びます。同時に、今は地球温暖化で夏が暑くなるほど、また花粉がでるんですね。手入れをしていない林と地球環境が合わさって、花粉が異常発生しているということになっています。
これが林業政策の失敗によって花粉が異常に増えてしまった原因です。
私は神奈川県知事をやっていましたときに県民の皆様から花粉の悩みの声をいただいていました。
花粉症で悩む人がとっても多くて、花粉の季節になると「鼻をもぎとりたい!」「スギの木を見るとナタを持って切り倒したくなる!」という声もあって、それくらい、みなさんつらい思いをしていました。
それでいろいろ勉強したら、花粉は遠くまで飛ばなくて、だいたい50km圏内で飛ぶのです。首都圏に飛んでくる花粉は、神奈川の丹沢や東京の奥多摩、千葉の房総半島など、近隣の手入れされていない林から飛んできます。それで、8都県市で首都圏の対策を立てたんです。私が音頭をとって4都県の知事が「できる限りスギの林を伐採して、自然林にかえていこうと」と。予算がついて、少しずつ進んでいます。
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