選挙ドットコム

ドットジェイピー、ivote関西、Teen’s Rights Movement、ぼくいち。学生団体が描く「18歳選挙」の明るい未来【前編】

2016/2/13

選挙ドットコム編集部

選挙ドットコム編集部

2016年、例年より早く開かれた通常国会は、まだ1ヶ月が過ぎたばかりにもかかわらず、早速大荒れ模様です。

明るいニュースが聞こえてきづらい政治の世界に対して、どんどん若い世代は無関心になっていき、この流れに歯止めをかけることなどできるのでしょうか。

今夏の参院選では、18歳選挙権が実現するにもかかわらず、なんだか「政治」と「若者」を取り巻く空気はどんよりしていませんか。

いえいえ。

きっと本稿を読んでいただければ、そんなモヤモヤなど吹き飛んでしまうかもしれません。

今回は、学生の立場から政治の世界に携わる5人の方々をお招きして、「これからの政治・選挙と若者世代」をテーマに語っていただきました。

「大人」の方から発信される「若者よ、しっかりしろ」というメッセージも素敵ですが、若者世代のナマの声も、あなたにきっと響くはずですよ。

(本稿は、昨年の11月に開催されたG1 COLLEGE2015(政治、起業、ジャーナリズムなど11分野の学生らが集い、次のアクションを議論するカンファレンス)の開催前日に催された、全国に活動を展開する政治系学生組織の代表たちによる座談会での模様を記事にしたものです。)


===本日はお集まりいただきまして誠にありがとうございます。私、本日インタビュアーを務めます、京都大学法学部3年生の芦澤良太と申します。普段、学生の立場から「政治」に関わっていらっしゃる皆さまには、来夏の参院選での18歳選挙権の実現と今の日本の政治について語らっていただきたいと思っております。それでは、順々に自己紹介の方をお願いいたします。

刎本:
NPO法人ドットジェイピー」全国代表の刎本浩紀と申します。慶應義塾大学の4年生で、普段は、議員インターンを主管事業とする弊団体にて活動しています。その内容としては、政治に興味を持ち始めた学生さんたちを国会議員さんや地方議員さんのもとに送り出させてもらって、そのマッチングの中で、学生さんに政治の生の現場を体験してもらうというものになります。

DSC_0635

ですが最近は、大使館へのインターンシップだったりとか、全国の議員インターンシップ経験者による政策立案コンテスト「未来国会」といった事業にも手をつけ始めています。とにかく、皆さんと同様、「若者と政治」にはダイレクトに関わってきました。本日はよろしくお願い致します。

後藤:
こんにちは。「NPO法人僕らの一歩が日本を変える。」代表理事の後藤寛勝と申します。中央大学の3年生で、新潟から出てきました。僕は18歳の時から青木が始めていたぼくいち(「NPO法人僕らの一歩が日本を変える。」の略称)に参加させてもらっていて、その時から「若者と政治」に関する活動を継続しています。

DSC_0640

今組織として力を注いでいるのは、「票育」という政治教育の普及活動で、全国各地の11校を回らせてもらっています。今日はよろしくお願いします。

町田:
こんにちは、町田彩夏と申します。私の活動軸は二つあって、1つは、若者の政治的関心の向上で、それに沿って、18歳選挙権の実現と政治教育の拡充を理念とした「Teen’s Rights Movement」での活動を展開してきました。もう1つは、女性の社会進出で、それに沿って、女性が光り輝く社会の実現を目指す女子高校生同士を繋げる場として、「女子高校生未来会議」での活動を展開してきました。大学生になってからは、schooという無料動画のオンライン学習サイトで「10代女子に教わる政治教室」というクラスの講師をさせていただいていたり、朝日新聞さんのこどもニュースのニュースキャスターをさせていただいたりしています。

DSC_0663

特に最近のこととしては、講談社さんが主催しているミスコン「ミスiD」に出場しまして、今は結果待ちなんですけど、ファイナリストにまでは選出されています(結果:安藤美冬賞受賞)。可愛さだけではなく、それぞれにアイデンティティが求められる、不思議で素敵なミスコンですね。それと、私の経歴に一貫することとして、政治を語ることがタブーとなっているこの日本を、政治を語ることがフツーな国にしたいな、という思いがあったりします。よろしくお願いします。

青木:
初めまして青木大和と申します。今は慶應義塾大学の法学部政治学科の3年生です。

DSC_0668

もともと高校生の頃から、若い人に政治への関心を持ってもらうために活動を展開するNPO法人を自分で立ち上げ、3年間ほど運営していたのですが、諸事情ありましてそこを辞め、そこから今に至る1年間では、割と自由に政治や社会を眺めさせてもらっていました。今日はよろしくお願いします。

徐:
こんにちは。徐東輝と申します。皆さん、今日はよろしくお願いします。京都大学法科大学院で政治と法律を専攻する傍ら、「ivote関西」という団体の代表をやっております。自分のライフミッションとして挙げられるものが2つありまして、まず、自分が「若い」と言われる年齢でいる間には、若者が政治に振り返るような社会を実現したいと思っています。そして、1個目の根底にあり、自分の人生かけてもいいと思っているもう1つのものとして、日本に本当の民主主義を実現したいと思っております。

DSC_0792

でも、心の奥でそう思っているのは僕だけじゃないし、ivote関西にいる学生だけでも決してなく、日本の政治を良くするために何らかの活動をしている人なら誰でもそう思っているんだろうと信じているので、こういった機会での横のつながりを大切にするようにしています。団体の活動としては、若者と政治に関係するもので、僕らがやる意義を感じるものであれば何でもいいということになっています。例えば、関西圏の計8校の学校で主権者教育の授業をやらせてもらっていたり、食から入っていく社会問題というコンセプトで日替わり店長さんと一緒に美味しいご飯を食べながら語らうことのできるバーを経営していたり、若者が社会と繋がり直すキッカケを提供するような記事を配信するウェブメディアを運営していたり、政治家さんとお酒片手にお話しできる飲み会を企画していたりと、まずは若者に政治に振り返ってもらうべく、とにかく色々とやっています。今日は本当によろしくお願いします。

===それでは自己紹介もひと段落つきましたところで、本企画、若者座談に移らせていただきます。メインとしては、「18歳選挙権についてどう思いますか?」「これから若者と政治をどのようにつなげていきますか?」をテーマとして、皆さん自由な発言形式で議論を繰り広げていただければと思います。それでは、18歳選挙権について、まずは青木さんからコメントいただけますでしょうか?

DSC_0778

青木:
皆さんが18歳選挙権についてどう思ってるのかが非常に気になるので、まずはそれを聞いちゃってもいいですか?多分、町田さんが一番、年齢的にも活動の種類的にも今回のトピックとの距離が近いと思うんだけど、町田さんからどうですか。

町田:
DSC_0616

私としては、18歳選挙権の実現について高校2年生の頃から取り組んできたので、実現したことは嬉しいし、本当に良かったと思います。けれどもその一方で、18歳選挙権の実現はある意味一つの手段であって、その先の目的というものは、日本がもっと政治に対して盛り上がっていって、高校や中学で主権者教育がもっと盛んに行われるようになることとか、政治を語ることがタブーでなくフツーな社会が実現されることだと思うんです。繰り返しますが、18歳選挙権の実現は、そんな目的ありきの、キャンペーンという1つの手段なのかなと思っています。なので、今回の18歳選挙権の実現の波を、どのように繋げていくか、有効に活用していくかが、今の本当の課題なんだと思っています。

後藤:
DSC_0642
18歳選挙権という言葉を初めて聞いたのは、僕が19歳の時で、18歳選挙権が実現するなんていう話は、それこそ宇宙旅行の話を聞いたときと同じような、どこか現実味のないものでした。でも、町田さんや青木といった同年代の人らと一緒に活動していく中で、実現に向けた動きが出来上がってきていることを肌で感じ、「ああ、これは本当に実現されるんだろうな」と思うようになりました。この1つの流れ自体が、とても凄いものだと思っているし、この流れを推進してきた人たちのことを本当に尊敬します。でも、その上で、18歳選挙権の実現は1つの手段でしかないと僕自身も思っていて、若い人と政治が繋がった今、どうやって若者を政治に振り向かせていくかということこそが、これからの本当に大切なポイントになっていくんだろうと思っています。それと、正直な話、選挙に行けることを喜んでいる10代の高校生の嬉しそうな様子を見ていると、若いうちから社会と繋がる感触を持つことのできる彼らを羨ましく思ってしまいますね。

青木:
DSC_0729
僕自身は、18歳選挙権はいつかは実現されるものだと思っていたし、その上で、個人的には、18歳選挙権が実現された今だからこそ、被選挙権年齢みたいな話に繋がるべき時なんじゃないかなと思っていて。選挙権年齢が引き下がって、可愛い女の子がキャンペーンガールになってキャイキャイ盛り上がってく・・・もうそういうのはいいんだよ、みたいな。いやまあめちゃくちゃ可愛いいいですよ。確かに、影響力あるアイドルとか、僕らみたいな政治に関心持ってる人間が、「投票行こうぜ」っていうある種の啓蒙活動を行っていくことも必要なことで、今後も継続されるべきことだと思うけれど、1番大切なことは、同世代の人間が、時には自分の友人が、政治の世界で頑張っている姿を見せてあげることで、すなわち、若者にもっと直接的な形で、政治のリアリティを感じさせてあげることだと思うんですよ。そこが、今までは不足していた決め押しの一手になり得るんじゃないかとも思ってるんです。僕の友人達もこの先、「大和が頑張ってるなら」といって投票に行ってくれるかもしれないけれど、ただ投票に行くだけじゃなくて自分で政治を考えて投票に行っているかというと、そうではないことが多いかもしれないし、それでは意味がないと思う部分がある。だからやっぱり、そうした先に彼らが自分の頭で政治を考えて投票できるように、もっと政治に対しての熱を駆り立てないといけない。例えばの話だけれど、プレミアリーグで世界のトップに投げ勝っている大谷投手の姿を見て、俺は「マジかよ」って思ったし、すごいリスペクトを感じたし、それと同時に、同年代ゆえの悔しさみたいなものも湧き上がってきた。だから、そういうリアリティとエネルギーが必要なんじゃないかと思う今、僕らは、被選挙権の話をしなきゃいけないんじゃないかと思うんです。

===若手政治家が「若くはない」というのは確かだと思いますし、それゆえ、一部の層の人間(ここでは若い世代を指す)が国会から疎外された雰囲気を感じていること、また、結局のところ、単にみんなが投票に行くだけでは本当の民主主義を実現することはできないことは事実だと思います

DSC_0752

青木:
それで、今個人的にホットで誰かにやって欲しいことがあって、次の衆議院選挙で、被選挙権年齢に達していないけど立候補してもらって、そんで選管が絶対突っぱね返すと思うんですけど、それに対して違憲訴訟を起こしちゃうってのが面白いんじゃないかなと。

徐:
DSC_0814
実は、現在の被選挙権年齢の規定は憲法ではなく、公職選挙法に明記されていることだから、できたとしても突っぱね返されたことに対する不服申し立てくらいのことだろうね。でも、そんなことが本当に起きたとしたら、「若者と政治」に関して非常に印象的な事件になるだろうし、もしかしたら、国民的議論のきっかけになるかもしれないね。関連する話として、最近注目しているアメリカ人の15歳の若者がいるんだけれど(ディーズ・ナッツ氏)、彼は共和党にも民主党にも所属していないのにもかかわらず大統領選に立候補して、まあまあの寄付金を集めてた。規則にかなっていなくても、彼というシンボルが必要だと思った人からの応援が、寄付という形で集まったんだろう。もちろん、法的には被選挙権を取得できない年齢なのでダメなんだけど、ある世論調査で大統領候補者の支持率がトランプ氏40%、ヒラリー氏38%だったのに対して、彼は9%もの支持率を持ってたんだよね。二大政党制と高齢政治に飽き飽きするアメリカ国民にとってはものすごい問題提起だったと思う。

===でしたら、町田さんがミスiDになられた暁には、衆院選に立候補してもらい、選管に突っぱねられたところを不服申し立てするなどしたら良い・・・という訳ではないでしょうが、確かに、どこか国民の注目を引くことになりそうですね。町田さんは「Teen’s Rights Movement」での18歳選挙権実現運動に際しても、アイコン的な存在であったイメージがありますし。

町田:
DSC_0816
私がミスIDになった暁に不服申し立てすることはないと思うけれど(笑)、ミスiDに出た理由の1つに、似たようなものが1つあるんです。実際のところ、若者に投票しろと世間が叫ぶ割には、若者の友になれる人が国会には居ないし、立候補者してることもそんなにない。そこに居るのはやっぱりお爺ちゃんばっかりだし、加えて女の人は圧倒的に少ないという状況の中で、選挙権を持った若者たちがお爺ちゃんの応援をするのかなと思った時に、やっぱりしないだろうなとなって思っちゃったんです。その一方で、被選挙権は最低でも25歳という規則があり、大学生にとって同世代の若者は選挙に出て政治家になることができないという状況の中で、果たして自分に何ができるのかなと思った時に浮かんだのが、ミスiDとしてある種のアイドルになることだったんです。それこそ、ミスiDになった暁には、私が若者の友になって「こういう政策を考えてる政治家さんがいるよ」「若い人たちのこと考えてくれてる政治家さんもいるよ」ということを発信していけばいいなと思っています。そうすることで、若者を政治に振り向かせることができるんじゃないかと、考えています。

===ありがとうございます。そのような思いがあっての試みだったこと、お聞きできて光栄でした。それでは最後に刎本さん、18歳選挙権についてお考えをお願いします。

刎本:
DSC_0736
ドットジェイピーの主幹事業のほとんどが大学生向けなこともあって、正直なところ、自分の団体の活動を通しての実感はそこまでなかった。でも最近、高校での模擬投票の授業を担当するようになって、高校生との接点を持つようになり、10代のリアルな政治事情みたいなものが初めて見てきて、感じたことが一つあったんです。それはやっぱり、今の政治家は彼らのアイドルにはなっていないということ。もっとパフォーマンスをすべきだと言っているんじゃなくて、議員さんは、若い彼らにとってもっと身近なものにならなきゃダメなんだということを言ってるんです。これは、議員インターンを斡旋する団体の代表を経験した身としても言えることで、やっぱり、うちの団体を通して議員さんのもとで政治に携わることを選択してくれた子達にとっては、政治が少し、普通の学生たちに比べて、そもそも身近なものだったんだろうなという実感があるんですよね。もちろん、誰かにとっての「政治の身近さ」と「政治への興味」はニワトリタマゴの関係にあるのかもしれないけれど、だからといって政治の側が、ただ「興味持ってください」と待ちの姿勢をとるだけでは何も変わらないし、変わらなかった。であればやっぱり、政治の方から若者に近づいていく必要性っていうのは認めてもいいんじゃないかと思う。もちろん、若者の方を政治に近づかせるという、自分の団体が継続しているような活動をもっと下の世代に触れさせてあげることで、政治への興味関心を早期から醸成しておくことも大事になってくるとも思うけれど。

後編(2月18日公開予定)では、18歳選挙権の次の1歩はどうあるべきか、若者たちが語ります。

ご期待ください!

この記事をシェアする

選挙ドットコム編集部

選挙ドットコム編集部

2023年に年間1億PVを突破した国内最大級の政治・選挙ポータルサイト「選挙ドットコム」を運営しています。元地方議員、元選挙プランナー、大手メディアのニュースサイト制作・編集、地方選挙に関する専門紙記者など様々な経験を持つ『選挙好き』な変わった人々が、『選挙をもっとオモシロク』を合言葉に、選挙や政治家に関連するニュース、コラム、インタビューなど、様々なコンテンツを発信していきます。

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

採用情報

記事ランキング

ホーム記事・コラムドットジェイピー、ivote関西、Teen’s Rights Movement、ぼくいち。学生団体が描く「18歳選挙」の明るい未来【前編】

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode