日本で普通選挙が実現してから今年で70年となります。
年収や性別に関係なく、誰でも投票できるというのは今では当たり前。逆に選挙権のありがたみが薄れ、投票率は低下しています。しかし、山形県には今、この選挙権の価値をかみしめている人々がいます。
国宝の土偶「縄文の女神」が出土したことで知られる山形県北部の舟形町。人口6000人足らずのこの町で、2月14日に24年ぶりの町長選が行われました。43歳以下の町民にとっては、生まれて初めて経験する町長選です。
過去24年間で3人が町長を務めましたが、いずれも町職員出身で、会計責任者である収入役の経験者。役場の内部で調整し、町長の「順番」をたらいまわしすることで5回連続の「無投票当選」を実現していたのです。12年前に隣の新庄市との合併の是非が争点となっていた時でさえ、対抗馬が出馬を見送り、選挙戦にはなりませんでした。
12年前に無投票で当選したのは合併反対派。出馬を取りやめたのは合併を推進していた現職町長の後継者でした。合併するか否かという重要な政策判断すら町民にははからず、役場の内部で決めていたのです。
今回の選挙には元町職員2人と元新庄市職員の3新人が立候補し、元町職員の森富広氏(55)が当選しました。投票率は88.48%。目立った争点がなかったにも関わらず、24年ぶりの選挙に多くの町民が高い関心を示しました。
舟形町に限らず、地方選における無投票当選は増加傾向にあります。総務省の調査によると、2014年に行われた894件の選挙のうち、無投票当選は267件。その割合は29.9%にのぼり、統計が始まった2011年以降で最高となりました。
4年に1回、全国の多くの自治体で選挙が実施される「統一地方選挙」に限ってみると、過去から現在に至る無投票当選者の割合の推移がはっきりわかります。昭和の時代にはや政令指定都市や一般市の市議会議員選挙で1%未満、都道府県議会議員選挙や町村議会議員選挙でも10%未満だったのが、平成に入るとぐんと跳ね上がります。
総務省による最新のデータがある2011年の統一地方選では政令市では0%でしたが、一般市で1.6%、都道府県で17.6%、町村では無投票当選の地域は20.2%にのぼりました。特に過疎地域のでは無投票当選者の割合が高い傾向にあります。
無投票が増えているのは最大の理由は政治家のなり手不足。
小さな自治体では議員としての報酬が月数万円というところも多く、議員だけでは生活していけません。かつては「名誉職」として地元の名士が務めることも多かったですが、今の若者は費用対効果に見合わない、面倒なことを引き受けようとはしません。
平成の大合併が一段落し、政策的な争点が少ないという側面もあります。明確な争点がなければ人生を掛けてまで選挙に挑戦しようと思わないからです。利権政治への監視が強まり、政治家の「うまみ」が減ったのも一因かもしれません。
今年から投票年齢が18歳に引き下げられることもあり、若者世代の政治への関心をどう高めるかは今後の日本社会にとって大きな課題となります。自分の持つ選挙権をいかに有効に活用するか。大人も一緒になって考える、良い機会としたいものです。
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