前回は参院選の一票の格差問題について触れましたが、今回はその格差是正のために国会で議論されている「参議院選挙制度改革」についてまとめてみました。
一票の格差問題は、都道府県ごとに設定された「47選挙区」と「議員定数」と「有権者数」の3つの要素で左右されます。これまでの参議院選挙制度改革では、主に人口比率に応じた議員定数の増減で調整されてきました。2006年に「4増4減」、2012年にも「4増4減」が適用されましたが、それでも格差は縮まらない状態のままでした。
そして一票の格差問題を巡る訴訟で、最高裁は2010年と2013年の参院選について共に違憲状態との判断を示し、速やかに抜本的な選挙制度の見直しが求められていました。
こうした流れを受け、現在参議院では2選挙区を1選挙区にまとめる「合区」を取り入れた、新たな改革案がまとまりつつあります。維新の党、次世代の党、日本を元気にする会、新党改革は4県2合区を含む「10増10減」案(実現すれば格差は2.974倍)を主張し、これに最大会派の自民党が合意したことで成立する見通しとなりました。その一方で民主党、公明党、無所属クラブ、生活の党は20県10合区を含む「12増12減」(格差1.953倍)案を主張しています。自民党と公明党が与党内で割れた形になり、自民党の中でも合区について反発の声が上がっています。
いずれにしても、人口比例主義に基づけば一票の格差の是正には、合区にまで踏み込まなければ抜本的な解決策とならないのが現状です。その一方で、「10増10減」案では、鳥取と島根、徳島と高知の選挙区を統合することになっていますが、こうした人口の少ない都道府県では、合区によって地元の声を国政に反映させるための代表者が減ってしまいます。
47都道府県という行政単位は変更せず、人口比だけで選挙区割りを変更することについては、地方の声が国政に反映されにくくなるといった批判の声もあります。また、一票の格差をゼロにしたいのであれば、選挙区を廃止して比例区だけにすればいい、という意見もあります。
今回の参議院選挙制度改革は、国政における参議院をどう位置づけるかという議論が抜け落ちているように感じます。このシリーズでも少しご説明したように、衆議院と参議院では選挙制度が大きく異なります。それは、それぞれの議員に求められる役割が異なることが背景にあるはずです。
今回のように最高裁判決に押される形で、選挙区調整を行って帳尻を合わせるような形になってしまったのは残念です。衆議院とは異なる参議院の役割や意義についての議論を深め、参議院の「あるべき姿」を明確にした上で、参議院議員を選ぶための選挙制度を考えるべきではなかったのでしょうか。
とはいえ来年の参議院選挙まで時間がありません。18歳選挙権が解禁され、初めて投票する有権者が240万人も増えますから、その参院選が、またも「違憲状態」となるようなことは絶対に避けなければなりません。2016年は仕方ないとして、2019年の参院選までには参議院の在り方についての議論が深まり、選挙制度改革が進むことを期待していますし、選挙ドットコムでも働きかけていきたいと思います。
と、最後は少しかたい話になってしまいましたが、「いまさら聞けない参議院選挙の仕組み」はいかがでしたか? わかりにくかった所や、記事を読んでの疑問点などありましたらぜひご意見をお寄せください。
選挙ドットコムでは来年の参議院選挙に向けてさまざまな記事をアップしていきますので、引き続きご注目ください。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします
My選挙
あなたの選挙区はどこですか? 会員登録をしてもっと楽しく、便利に。
話題のキーワード