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 追悼社説 語り始めた勇気──張本勲さんを悼む

2026/9/10

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  🕊️追悼社説
語り始めた勇気──張本勲さんを悼む
広島市南区段原で生まれ、戦後の混乱期を生き抜き、野球界に燦然たる足跡を残した張本勲さんが86歳で逝去された。
「安打製造機」と称された圧倒的な実績は、広島が生んだ野球人の誇りである。しかし、晩年の張本さんが示したもう一つの姿──被爆者として沈黙を破り、語り始めた勇気こそ、私たちが今あらためて胸に刻むべき遺産ではないか。張本さんは5歳で被爆し、姉を原爆で失った。比治山の陰で命は助かったものの、周囲は地獄絵図だったという。だが、その体験を語ることは長くできなかった。原爆資料館に入ることすらできず、記憶に触れるだけで胸が締め付けられた。
沈黙は弱さではなく、深い傷を抱えた者の自然な防御反応だった。転機は、晩年に届いた一通の小学生からの手紙である。
「張本さんの被爆体験を聞いて、もっと平和について考えたい。」
その言葉に背中を押され、張本さんは初めて資料館に足を踏み入れた。
そして静かに、しかし確かな決意をもって語り始めた。「若い人たちが知りたいと言ってくれるなら、語らなければいけない。」この一言に、張本さんの覚悟が凝縮されている。
痛みを抱えたまま、それでも未来の世代のために語る。
その行為は、被爆者としての使命感であり、広島の街が背負ってきた歴史への責任でもあった。張本さんは若者に向けて、問いかけるように語った。
「戦争を続けますか、と問いたい。」
「原爆の悲惨さを知らないまま大人になってはいけない。」
説教ではなく、考える力を促す言葉だった。
スポーツ界の大スターが平和を語ることの重みは大きく、その言葉は多くの若者に届いた。沈黙から語りへ──その一歩を踏み出すには、計り知れない勇気が必要だった。
張本さんが晩年に示したその勇気は、広島が未来へ手渡すべき大切な灯火である。張本勲さんのご冥福を心よりお祈りするとともに、
その「語り始めた勇気」を、私たちはこれからも語り継いでいきたい。
 

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さとう しゅういち

さとう しゅういち

選挙 広島県議会議員選挙 (2023/04/09) 2,673 票
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肩書 介護福祉士・元広島県庁職員・広島瀬戸内新聞社主
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