中西 健治 ブログ

片山財務大臣の「GPIFなどに日本の金融資産へのさらなる投資を」という発言を、「国債市場の買い支え(PKO)」と解釈するのは誤りだと思います。金融調査会の会長と幹事長として長年二人三脚で歩んできた経験からすると、大臣はより本質的な問題提起をされているのだと思います。こちらはあくまで私の意見ですが、ぜひご一読ください。
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GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の基本ポートフォリオの再検討を
1. 4資産均等配分
皆さんの年金を支える年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオは、「国内債券・国内株式・外国債券・外国株式を25%ずつ」という4資産均等配分となっています。今の構成は内外の金融環境などを十分に考慮しながら2014年に決定されたもので、丁寧に時間をかけて2020年には今の比率となっていました。
実は、この運用資産構成のあり方には正解がありません。ただ、この時の変更が、近年の内外の株高・円安局面において大きな収益をもたらしたことは事実です。「国民の年金でギャンブルをしている」などという批判にさらされたこともありましたが、当時の英断に敬意を表します。
2. 「金利のある世界」の到来
この「四分の一ずつ」という配分は、非常に分かりやすいものです。しかし、果たして現在の金融環境において最適な配分なのかについては、改めて検証する必要があると思います。その一番の理由は「金利のある世界」の到来です。
デフレからの脱却を目指すために日本銀行が異次元の金融緩和策をとったことから、国内の債券の金利は長い間ゼロ近辺で推移しました。これでは「運用」にはなりません。したがって、GPIFは利回りの高い外国債券への投資を行ないました。
しかし、今や10年物日本国債の金利は約3%です。バブル期の8%台などとは比較になりませんが、十分に「金利」と呼べる水準となっています。
3.リスクを考える
債券は株式と比べると安全な金融資産だとみなされています。その理由は金利が上がって評価損(含み損)が計上されても、満期まで保有すれば元本で償還されることから最終的な損失が発生しないためです。
ただ、外国の債券となると、話が違います。別のリスクも考えなければいけません。現在の米国債の利回りは約4.5%ですから、日本の10年物国債よりも魅力的に見えます。しかし、我々が受け取りたいのは「円」の利息であり元本です。ところが、160円から157円50銭へと2円50銭円高になっただけで、この1.5%のメリットはなくなってしまいます。それどころか、もっと円高になると、満期日に手元に戻ってくる円は、投資した金額よりも少なくなってしまいます。
国内の金利がない時代には、外国債券を買うことに妥当性がありました。しかし、今の金融環境で、為替リスクを冒してまで外国の債券に国内債券と同じだけの金額を投資することには疑問を感じざるを得ません。
国民の皆さんに年金を給付する(円建てで支払う)というGPIFの最終目的を考えれば、為替リスクが完全にゼロで、かつ確実な利回りを確保できるようになった国内債券の比率を引き上げるべきです。
4. 純粋な運用政策の議論を
本当に久しぶりに「金利のある世界」が戻ってきたことから、市場には戸惑いがあるようです。そのため、やや荒っぽい動きもみられます。しかし、ここまでの説明でお分かりの通り、国内債券比率の引き上げという提言は、そのような国債市場を支えるためのPKO(Price Keeping Operation)を念頭に置いたものではありません。
約300兆円という国民共有の資産を、将来の年金給付のために最も効率的かつ安定的に運用するには、どの資産配分が適切なのかという純粋な運用政策の議論として提起しています。
金利や為替、国内外の金融市場の変化を踏まえれば、過去に合理的であった配分が、将来も最適であるとは限りません。もちろん、国内債券100%という運用が望ましいというつもりもありません。超長期資金である年金積立金にとって、世界経済の成長による果実を取り込むことは重要であり、外国株式や国内株式は引き続き重要な役割を果たすべきであるとも考えています。
求められるのは、過去の成功体験に安住することでも、特定の市場を守ることでもありません。年金資産の運用主体として、長期的なリスクとリターンを冷静に分析し、最適なポートフォリオを追求する姿勢だと思います。