中西 健治 ブログ

商品性の向上に加えて「税制面からの後押し」を提案したのは私です。予算の約4分の1をまかなう国債の市場が不安定になると、政策の遂行が難しくなります。少し長くなりますが、「『国にお金を貸す』ということ」を是非お読みください。
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「国にお金を貸す」ということ
・国債の相続税非課税を
昨年9月末時点での家計の国債や財投債の保有残高は、1兆6749億円と前年から約21パーセント増えました。ただ、2350兆円という個人金融資産全体から見れば、その割合は1パーセントにも達していません。
より多くの方に保有していただくためには、商品としての魅力を高める必要があります。現在、個人向け国債は3年、5年の固定金利と10年の変動金利に限られていますが、満期までの期間の多様化や消費者物価連動債の導入とともに、国債ETFの普及にも努めるべきだと思います。
さらに、一人当たり300万円から500万円程度を上限とする相続税の非課税枠の創設も、保有拡大に向けた有効なインセンティブとなり得ると考えています。
・借金は「信用」の証ですが、、、
様々な政策を行なうための予算の約四分の一は国債でまかなわれています。2025年度末の国債の残高は、GDP――すなわち日本全体の一年間の稼ぎ――のほぼ2倍にあたる1129兆円と見込まれています。極めて大きな金額ですが、借金が出来るのは「信用」がある証拠でもありますから「日本が破産する」などといった見方は当たらないと考えています。
一方、わたしは国際金融市場で働いていた間に、20を超える国が「もう返せません」とギブアップ(デフォルト)し、改めて貸してもらえるようになるまで大変な苦労をする姿も目の当たりにしました。「信用とはガラス細工のように繊細なもの」ですから、安易な楽観論にも賛成できません。
・「日本」は外国
問題は国債の買い手、日本国を信用してお金を貸してくれる相手です。
現在、国債残高の約半分は日本銀行が保有しています。これはデフレという深刻な状態から抜け出すためにとられた「副作用覚悟の奇手」、いわゆる異次元緩和の結果です。そのため日銀は、保有残高を段階的に縮小し正常化していく方針を示しています。したがって日銀が市場から手を引いた後の受け皿が必要なのですが、生命保険会社や銀行には、かつてのような余力が乏しいのが実情です。
そうなると、どうしても海外の投資家に頼らざるを得ません。ただ、彼らにとっての日本は、あくまで外国です。情報が十分ではない上に誤解や無理解がつきものですから、ちょっとしたことで「こいつ(日本)は信用できない。返してくれ」と言われかねません。その時に別の国から借りてくることが出来なければ、わたしが幾度となく目にしてきた「もう返せません」という国の仲間入りです。財政に大きな穴が開き、必要な政策を実行できなくなれば、その悪影響は皆さんの生活に直ちに及ぶことになります。
・国にお金を貸す「守り」の資産形成
そこで国民の皆さんに広く国債を買っていただく、つまり「国にお金を貸していただく」というのが正しい姿だと考えています。
わたしは皆さんの金融資産があまりに預貯金に偏っていて、インフレ環境に対応できなくなるという危機感からNISAの大改革に走り回りました。これは、適切なリスクをとることで資産の目減りを防ぐとともに、長期的な資産の形成を実現するという「攻め」の考え方に基づくものです。
一方、資産形成においては「守り」の役割を担う資産が不可欠です。国債は、元本と利子の支払いが国によって保証される安全性の高い金融商品です。価格が日々変動する株式などとは異なり、満期まで保有すれば安定した利息を受け取ることができます。したがって、どの国でも国債は「安全資産」と位置づけられています。
・選挙公約
「財政に対する市場の信認を確保し、国債の安定消化を図る観点から、足もとの市場実勢金利の上昇等も踏まえつつ、個人による国債保有を積極的に促進するための取組みを強化します」
これは先の総選挙における自民党の公約です。これまで申し上げてきた問題意識を、公約策定の議論の場においても強く訴えた結果、重点政策として明記されるに至りました。
商品設計や税制など検討すべき課題は山積していますが、皆さんの安心できる資産づくりと日本の金融市場の安定のために、引き続き尽力してまいります。