2026/2/1

AIという言葉を聞くと、
「将来、人間の仕事がなくなるのでは?」
「役場の職員も減らされるのでは?」
そんなイメージを持つ方もいるかもしれません。
でも、私が行政でAIを活用したい理由は、職員を減らすためではありません。
むしろ逆です。
役場職員の負担を減らし、人にしかできない仕事へ、もっと時間を使えるようにしたい。
そのための「新しいアシスタント」として、AIを活用したいと考えています。
町民から見える役場の仕事というと、窓口での対応が一番分かりやすいと思います。
しかし、その裏側にはたくさんの仕事があります。
国や県から届く資料を読む。
制度改正を確認する。
過去の資料を探す。
町民向けのお知らせを作る。
会議資料を作る。
議事録をまとめる。
問い合わせへの回答を調べる。
前年度との変更点を確認する。
担当が変われば、仕事を引き継ぐ。
こうした一つひとつの仕事に、職員の時間が使われています。
西原町自身も、行政需要の高度化・多様化・複雑化やデジタル化への対応を踏まえ、AIやRPAなどを活用した業務効率化を行政改革の方向性として示しています。(西原町公式サイト)
私は、その中でも特にAIが力を発揮できるところがあると思っています。
私が特に可能性を感じているのが、
新人職員の教育です。
新しく役場へ入った職員は、当然分からないことがたくさんあります。
「この申請は、どのマニュアルを見ればいいんだろう?」
「この場合は、どの書類が必要なんだろう?」
「前回はどう処理したんだろう?」
そのたびに先輩職員へ質問することになります。
もちろん、これは必要なことです。
新人を育てるのも組織の大切な仕事です。
ですが、同じような基本的な質問に先輩職員が何度も答えているのであれば、その一部をAIが手伝うことはできないでしょうか。
例えば、役場のマニュアルや規程、よくある質問などをAIにて検索できるようにする。
新人職員が、
「この手続きでは何を確認すればいい?」
と質問すると、
AIが、
「このマニュアルの○○ページを確認してください」
「必要な確認事項はこの3点です」
「関連する規程はこちらです」
と、根拠となる資料まで一緒に示す。
分からなければ、さらに質問する。
新人職員にとっては、
何度質問しても嫌な顔をしない、24時間使える頼れる先輩AI
になります。
そして先輩職員にとっては、基本的な質問への対応時間を減らし、本当に人から教える必要のあることへ時間を使えるようになります。
ただし、
「AIがあれば新人教育は必要ありません」
という話ではありません。
私は、そこはまったく違うと考えています。
役場の仕事には、
町民への接し方。
困っている方への声のかけ方。
地域との関係。
制度だけでは判断できない現場感覚。
経験から分かる注意点。
こうした、マニュアルだけでは伝えられないものがあります。
それは人が人へ伝える必要があります。
だから、
AIにできる説明はAIへ。
人から学ぶべきことは、人から。
と役割を分ける。
そうすれば、先輩職員も新人職員に対して、より大切なことを教える時間を確保できると思います。
これは新人だけの話ではありません。
何年も働いている職員でも、
年に一度しかない仕事。
数年に一度しかない手続き。
滅多に発生しないケース。
自分の担当では普段扱わない仕事。
こうした業務については、マニュアルや過去の資料を確認することがあると思います。
これは当然です。
人間が、役場のすべての仕事を覚えておくことはできません。
そこでAIです。
例えば、
「このケースの処理方法を教えて」
と尋ねれば、
庁内の最新マニュアルや規程を検索し、
「この手順です」
「根拠はこちらです」
「この場合は例外があります」
と瞬時に候補を出す。
神戸市では2026年4月から、職員向けAI基盤「KOBE AI PORT」を運用し、庁内情報の検索や業務別の専用アプリ、AIへの指示入力支援などを提供しています。(神戸市役所)
こうした仕組みは、西原町のような自治体でも検討する価値があると思っています。
私は、AIの大きな強みの一つが、
「探す」という仕事を手伝えること
だと思っています。
役場には、
条例。
規則。
要綱。
マニュアル。
国や県からの通知。
過去の事例。
会議資料。
FAQ。
さまざまな情報があります。
今までは、
フォルダを開く。
ファイルを探す。
PDFを開く。
キーワードを検索する。
該当箇所を読む。
という作業が必要でした。
それを、
「○○の場合はどう処理する?」
という普通の言葉で質問できるようにする。
そしてAIが、
回答だけではなく、
「この回答の根拠は、この資料のこの部分です」
と出典まで示す。
ここまでできれば、かなり便利になると思います。
さらに重要だと思うのが、
職員の経験を、役場全体の財産として残すことです。
長年働いていると、
「この仕事なら○○さんに聞けば分かる」
という職員が出てくると思います。
その人は、何年もの経験の中で、
どこを確認すればいいのか。
どんなトラブルが起きやすいのか。
どう対応すればいいのか。
という知識を身につけています。
しかし、異動や退職によって、その知識が十分に引き継がれない可能性もあります。
そこで、
よくある質問。
判断するときのポイント。
過去のトラブル。
その解決方法。
注意すべき例外。
こうしたものを少しずつ整理する。
そしてAIから検索できるようにする。
すると、
「先輩職員の経験を、次の世代の職員が検索できる」
ようになります。
横須賀市では2026年、職員への問い合わせ業務を分析し、職員が持つ「判断ポイント・切り分け・解決方法」といった暗黙知を可視化し、一部をFAQとして職員向けチャットボットへ組み込む実証を行っています。(横須賀市)
私は、こうした考え方を西原町でも参考にできると思っています。
行政では、国や県から長い資料や通知が届くことがあります。
例えば数十ページある資料について、
最初から最後まで読みながら、
「西原町に関係するところはどこだろう?」
と探す。
そこにも時間がかかります。
AIなら、
「重要な変更点を整理して」
「昨年度との違いをまとめて」
「西原町の担当者が確認すべき部分を抜き出して」
といった下準備を手伝わせることができます。
もちろん、AIの要約だけを見て行政判断をするのではありません。
最後は必ず職員が原文を確認する。
でも、
「どこを重点的に読めばいいのか」
という最初の整理をAIがしてくれるだけでも、仕事の進め方は変わると思います。
役場では文章を作る仕事も多くあります。
町民向けのお知らせ。
ホームページ。
メール。
会議資料。
説明文。
FAQ。
例えば、
「この制度変更を、中学生でも分かるくらい簡単な文章にしてください」
とAIへ指示する。
まず下書きを作らせる。
職員が内容を確認する。
必要なところを直す。
ゼロから文章を書くのではなく、たたき台から始める。
神戸市ではすでに全職員を対象に生成AIを利用し、調査、文章作成、要約、アイデア出しなど幅広い業務で活用しています。(神戸市役所)
こうした使い方も、職員の負担軽減につながる可能性があります。
会議についても同じです。
録音する。
文字にする。
AIが要点を整理する。
議事録の下書きを作る。
そして最後に職員が確認する。
という流れが考えられます。
ここでも重要なのは、
「AIに任せる」のではなく、「AIに下準備をしてもらう」
という考え方です。
行政として最終的に公表したり判断したりする内容については、人が責任を持ちます。
ここは、特に大切です。
AIは間違えることがあります。
もっともらしい文章で、間違った答えを出すこともあります。
古い情報を使う可能性もあります。
ですから、
AIの回答を、そのまま行政の正式な判断には使わない。
これを徹底する必要があります。
特に、
税。
福祉。
給付。
行政処分。
人事。
町民の権利に関わること。
こうした重要な判断ほど、人間が法令や原資料を確認し、責任を持って決定する必要があります。
デジタル庁が2026年6月に改定した行政向け生成AIガイドラインでも、生成AIの活用促進と同時に、セキュリティ、個人情報・プライバシー、偽誤情報、検証可能性などへの対応を求めています。(デジタル庁)
だから私は、
AIは、調べる。
AIは、整理する。
AIは、比較する。
AIは、下書きをつくる。
そして、
人が、確認する。
人が、考える。
人が、判断する。
人が、責任を持つ。
この役割分担が大切だと思っています。
役場には、とても重要な情報があります。
氏名。
住所。
所得。
健康に関する情報。
家族に関する情報。
福祉相談の内容。
こうした情報を、職員が自由に一般向けAIへ入力するような運用にはできません。
町として、
どのAIを使うのか。
何を入力していいのか。
何を入力してはいけないのか。
誰がどの情報へアクセスできるのか。
利用履歴をどう管理するのか。
というルールが必要です。
神戸市でも、安全性が確認されていない生成AIへの個人情報等の入力を禁止するなど、リスク管理をしたうえでAIを利用しています。(神戸市役所)
便利だから使う。ではなく、安全に使える仕組みをつくってから使う。
これは行政では特に重要だと思っています。
新しいシステムを導入すると、
職員が使い方を覚えなければなりません。
せっかく負担を減らすためにAIを導入したのに、
「AIの使い方を各自で勉強してください」
では、新しい負担を増やすだけです。
そこで、
「文章を分かりやすくする」
「資料を要約する」
「前年度と比較する」
「マニュアルを検索する」
など、よく使う機能を最初から分かりやすく用意する。
質問例をテンプレート化する。
短時間の研修を勤務時間内で行う。
困ったときに相談できる担当者を決める。
AIに詳しい人だけが使える仕組みではなく、普通の職員が普通に仕事をしていて使える仕組みにする。
神戸市でも、庁内AI基盤にプロンプト入力支援を組み込み、職員向けのプロンプト事例集を作成しています。(神戸市役所)
ここまでが、AI導入だと思っています。
そして、私はここが一番大切だと思っています。
AIで10分仕事が早く終わった。
1時間早く資料ができた。
マニュアルを探す時間がなくなった。
新人職員への基本的な説明時間が減った。
それだけでは、まだゴールではありません。
その時間を、
困っている町民の話を聞く。
現場を見に行く。
制度を改善する。
部署同士で話し合う。
新人職員へ、人からしか教えられないことを教える。
そういう仕事へ使う。
デジタル庁も現在、政府職員が安全に生成AIを利用できる「ガバメントAI」を整備し、2026年度中に全府省庁の約18万人が利用可能となる予定で、業務の質の向上と効率化を目的としています。(デジタル庁)
AIを導入することそのものが目的ではありません。
AIによって、人の時間を取り戻すこと。
私は、それが行政でAIを使う大きな意味だと思っています。
私は、AIを使って役場職員を減らしたいわけではありません。
新人職員が分からないことを、すぐに調べられる。
先輩職員が、同じ説明を何度もしなくてよくなる。
中堅職員が、滅多にない仕事のマニュアルを何十分も探さなくてよくなる。
ベテラン職員の経験を、次の世代へ残せる。
長い資料を読む前に、重要な部分を整理できる。
文章や議事録を、ゼロから作らなくてよくなる。
一つひとつは小さなことかもしれません。
でも、それが役場全体で毎日積み重なれば、
職員の負担を大きく減らせる可能性があります。
そして、その先にあるのは、
単に「仕事が早く終わる役場」ではありません。
職員が町民と向き合う時間を、もっと持てる役場。
です。
AIに人の仕事を奪わせるのではなく、
AIにできる仕事を手伝ってもらい、人にしかできない仕事へ、人の時間を戻す。
私は、そんなAI活用を西原町で考えていきたいと思っています。
AIは、役場職員を減らすためではなく、助けるために。
職員が少しでも働きやすくなれば、
その先には、町民にとってもっと丁寧で、もっと使いやすい役場がある。
私はそう考えています。
かわき保幸
西原町「第8次西原町行政改革大綱」
https://www.town.nishihara.okinawa.jp/uploaded/attachment/7241.pdf
デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(第2.0版)」
https://www.digital.go.jp/news/decb64eb-f26e-41cb-8d37-f3dd173108b8
デジタル庁「ガバメントAI『源内』」
https://www.digital.go.jp/policies/genai
神戸市「生成AIの利活用」
https://www.city.kobe.lg.jp/z/kikakuchose/digitalsenryaku/seiseiai.html
横須賀市「職員のナレッジ可視化に向けた実証実験」
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0835/nagekomi/20260422_knowledgekensyo.html
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カワキ ヤスユキ/41歳/男
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