2025/12/10
「オーガニック給食とまちづくり研究会視察研修」の第2回として
泉大津市の南出賢一市長による「給食や農業の地域連携、米及び金芽米の取り組み」という講演から学んだことをまとめます。
都市部の食料自給率の低さや米の価格変動、農業従事者の高齢化など、日本の米を取り巻く構造的な課題が顕在化する中で、泉大津市は食料安全保障と健康づくり、農業支援を一体で進める挑戦を続けています。
講演の冒頭では、日本人一人当たりの米の消費量が、1960年頃には年間約120キログラムだったものが、現在は約50キログラムまで減少していることが示されました。飼料用米や大豆への転作を促してきた減反政策が続いてきたこと、複雑な流通構造のせいで農家の所得が上がりにくいこと、農業従事者の平均年齢が七十歳に達していること、そして2024年には国内で米不足が叫ばれる一方で、過去最大の米輸出量が記録されたこと。こうした状況を踏まえ、市長は現在の「米騒動」を、六十年かけて積み重なってきた構造的な問題による「人災」であると表現されました。
こうした危機感のもと、泉大津市は令和五年三月に「食料確保構想」を策定しています。「市民の食を守る」と「食べながら健康になる」という二つの柱を掲げ、何があっても米に困らないまちづくりを目指す構想です。東京や大阪など都市部の食料自給率が一%前後と極めて低い現状を踏まえ、市内だけで完結させるのではなく、全国の生産地と官民連携・市民共創で関係を築いていることが紹介されました。
熊本県人吉市、滋賀県野洲市、高知県香南市、長野県南箕輪村、北海道旭川市などとともに、「オーガニックビレッジ共同宣言」を行い、生産者と消費者がお互いの顔が見える関係をつくりながら、安定的にお米を届ける仕組みづくりを進めているという話は、同じ都市部の自治体として非常に示唆に富むものです。
また泉大津市は、国民医療費が五十兆円規模に達しつつある現状を踏まえて、病気になる前の「未病」の段階から健康づくりに取り組むための「健康づくり推進条例」を令和五年四月に施行しています。健康に関する学びの場をつくり、「医食同源」を基本にした食育を進め、栄養状態や腸内細菌叢といった体の状態を「見える化」し、市民が自分に合った多様な健康手段を選べるようにする。そうした考え方が条例に込められているとの説明を受けました。
この構想と条例を具体化する柱の一つが、金芽米とオーガニック給食、そして妊婦支援です。泉大津市では、有機栽培米を六割、減農薬米を四割という形で連携産地から玄米を調達し、それを金芽米として市内の小中学校の給食に提供しています。さらに、妊娠届を提出した妊婦さんに対しては、出産まで毎月「金米(きんまい)の日」としてお米を無償提供する取り組みを続けています。
これらの取り組みでは、便通の改善や肌の状態の向上、出生児体重の増加、生後一か月児の体重の有意な増加、医療費の低下など、具体的なエビデンスも得られていると報告されました。単に「お米を配りました」で終わらせず、きちんとデータを取り、政策の効果を検証しながら進めている点は、今後の自治体運営においても大事な視点だと感じます。
さらに、市長は生産地と消費地を直接つなぐ「顔の見える直接流通」の取り組みについても紹介されました。一般の流通に比べて二〜三割高い所得を生産者に保証しながら、消費地側には市場価格の変動に左右されにくい安定供給をもたらす仕組みです。加えて、熟成保管技術を活用することで、「古米」と呼ばれる米の価値が暴落しないようにし、むしろ時間をかけて価値を高めていく発想も示されました。増産し、備蓄しても価値が下がらないどころか高まっていく形を整えることで、食料安全保障と農業経営の安定の両立を目指しているのです。
講演の最後に、市長は「米は元気の源であり、日本人の命を守る基盤として守っていくべきだ」というメッセージを力強く語られました。
泉大津市の取り組みから私が学んだのは、食料安全保障、健康づくり・医療費削減、農業者支援と地域経済循環という三つの目的を、「米」と「給食」を軸に統合している点です。給食費の無償化や原材料費の削減といった目先の議論だけでなく、「どのような米を、どのようなサプライチェーンを通じて、子どもたちと市民に届けるのか」という質の視点を政策の中心に据えている。その姿勢を貫いておられることが、泉大津市で素晴らしい先進事例の実現に至っていると考えます。
次回、今回の視察と講演から得た学びを踏まえて、吹田市でどのような提案ができるのか、私自身の問題意識と今後の方向性をまとめたいと思います。
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ナカニシ ユウタ/40歳/男
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