2026/6/2
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員

政府が安全保障上重要な土地取引の規制を強化する一方で、外国人を対象にしたタワーマンションなどの不動産取得規制を当面見送る方針を固めたというニュースが報じられました。秋の臨時国会に向けて法改正が進められる見込みですが、多くの国民が「なぜ規制ができないのか」「このまま海外資本に日本の国土や良質な不動産が買い漁られていいのか」と強い危機感と疑問を抱いています。この問題の本質は、日本の行政デジタル化の遅れと、不動産登記制度の構造的な脆弱性にあります。本日は、日本の現状、先進的な隣国の事例、そして私がかねてより提言している「税制を活用した現実的な対抗策」について詳しく掘り下げてまいります。
政府が今回の法改正で、外国人に的を絞ったマンション取得規制の導入を断念した背景には、日本の実務上・法制上の極めて高い壁が存在します。
最も大きな理由は、「抜け穴」を防ぐ実効性のある仕組みを現在の日本が持ち合わせていないという点です。もし国籍だけで一律に取得を制限しようとしても、海外の投資家が日本国内に設立したペーパーカンパニー(ダミー法人)を経由したり、日本人の代理人を立てて名義を偽装したりした場合、現在の行政システムではその「真の所有者(実質的支配者)」をリアルタイムで追跡・捕捉することが極めて困難です。結果として、真面目にルールを守る者だけが制約を受け、悪意を持った資本が裏道を抜けるという「実効性の担保できないザル法」になってしまうリスクが判断の根底にあります。
また、日本がこれまで批准してきた国際的な条約、とりわけサービス貿易における「内外無差別(外国人を自国国民と差別なく扱う)」の原則も大きな国際法上の障害となっています。安易な外国人一律規制は国際摩擦を生むリスクがあり、政府は法的ハードルの高さから一歩を踏み出せずにいるのが現状です。
そもそも、なぜ日本政府は誰が不動産を買っているのかを正確に把握できないのでしょうか。そこには、長年放置されてきた日本の不動産登記制度における致命的な脆弱性があります。
第一に、従来の日本の不動産登記簿には「国籍」を記載する欄そのものが存在しなかったという驚くべき事実があります。登記簿に記載されるのは所有者の「氏名」と「住所」のみであり、字面だけではその人物が日本人なのか、在日外国人なのか、あるいは海外在住の外国人なのかを判別することがシステム上不可能な構造になっていました。
第二に、日本の行政手続きにおける個人識別の一元管理が極めて遅れている点です。マイナンバー制度が導入されたものの、不動産登記へのマイナンバー紐付けは任意にとどまっており、個人の資産や土地の所有状況を行政が瞬時に横断照会できる体制は整っていません。さらに、海外在住の外国人にはマイナンバー自体が発給されないため、外資の捕捉には全く機能しないという構造적欠陥があります。
第三に、所有者不明土地問題に代表されるように、これまですべての不動産登記が「任意」とされてきた歴史的背景です。2024年4月からはようやく相続登記の申請が義務化されましたが、過去数十年間にわたり「誰の土地か分からない」状態を放置してきた日本の不動産行政の基盤は、海外の洗練されたマネーロンダリングや投資スキームに対抗するにはあまりにも脆弱です。
不動産の所有実態を国が把握できないというのは、決して世界の常識ではありません。お隣の韓国では、日本とは比較にならないほど厳格で網羅的な管理システムが構築されています。
韓国では、国民全員および中長期滞在する外国人に対して強力な識別番号である「住民登録番号(RRN)」や「外国人登録番号」が付与されています。この個人番号が、金融口座はもちろん、不動産登記、税金、あらゆる行政手続きと完全に紐付けられています。
さらに韓国では、1995年に制定された「不動産実権利者名義の登記に関する法律(不動産実名法)」により、他人の名義を使って不動産を登記する行為(名義信託)が厳格に禁止されており、違反した場合は重い刑事罰や不動産価格の最大30%にのぼる課徴金が科されます。この徹底した実名制と個人番号システムがあるため、韓国政府は「どの個人・法人が、どこに、どれだけの不動産を所有しているか」をシステム上で瞬時に、正確に把握することができます。ダミー法人や日本人代理人を立てられてお手上げになってしまう日本とは、国家としてのインフラの強度が根本から異なっていると言わざるを得ません。
以前、私のブログ記事(https://go2senkyo.com/seijika/185873/posts/1190437)でも強くお伝えした通り、国際ルールやシステム上の制約から外資による購入を直接「禁止」することが当面難しいのであれば、日本政府はただ指をくわえて実態把握を進めるだけでなく、今すぐ導入可能な「税制を活用した実効性のある防衛策」へ舵を切るべきです。私はかねてより、以下の2つの具体的な税制対抗策を提言しています。
| 提案する税制対策 | 具体的な仕組みと狙い | 期待される効果 |
|---|---|---|
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非居住者向け 「限定付加印紙税」の導入 |
日本国内に居住実態がない個人や海外法人が不動産を購入する際、売買契約書に課される「印紙税」を通常の数十倍〜数百倍に引き上げる税制。 | 購入時の初期コストを大幅に高めることで、投機目的の短期転売や爆買いを強力に抑制する。 |
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「非居住者不動産保有税」 (空き家過重課税)の新設 |
日本の住民票を持たず、実際にそのマンションに住んでいない(または適正な賃貸を出していない)所有者に対し、毎年の固定資産税とは別に高率の増税を課す仕組み。 | 資産隠しや投機目的での放置を赤字化させ、日本の良質な住宅市場が海外資本のマネーゲームの道具にされるのを防ぐ。 |
これらの税制の最大のメリットは、国際条約上の「国籍による差別(外国人規制)」という批判を回避できる点にあります。世界的に見ても、カナダやオーストラリア、シンガポールといった諸国では、外国人や非居住者による不動産取得に対して「追加の印紙税」や「不申告税」を課すことで、自国の住宅価格の高騰を抑え、自国民の住環境を守るための実効性のある税制障壁を敷いています。
国籍ではなく、あくまで「日本に居住して生活を営み、納税義務を果たしているか否か(居住性の有無)」を基準にすることで、正当な経済活動は保護しつつ、日本の不動産を「安全な資産の逃避先」として利用する海外の投機マネーにのみ、重いコストを課すことが可能となります。ここで得られた税収は、日本のインフラ維持や若年層の住宅補助へと還元すれば一石二鳥です。
もちろん、国も全く動いていないわけではありません。2024年4月からは不動産登記の手続きにおいて、取得者が海外法人や外国人の場合に「国籍」や「設立された国」を証明する書面(パスポートや法人の資格証明書など)の添付が義務化されました。これにより、今後は新たに取得される不動産について、ようやく最低限の国籍情報が蓄積される第一歩が踏み出されました。
しかし、これはあくまで「これから買われる不動産」の一部を捕捉し始める段階に過ぎず、過去にダミー名義で巧妙に買い進められた既存の物件や土地に対しては、依然として追跡の網が届いていません。また、秋の臨時国会で提出予定の「重要土地等調査・規制法改正案」により、自衛隊基地周辺などの安保上重要なエリアでの取引を「許可制」に格上げする検討が進んでいますが、対象エリア外の都市部マンションや水源地などに対する包括的な防衛策としては、未だ不十分と言わざるを得ません。
安全保障の危機や、都市部の急激な地価・マンション価格高騰による自国民の住居喪失を防ぐためには、単に「仕組みがないから規制を見送る」という消極的な姿勢では国を守れません。登記制度の不備という弱点を突かれている今こそ、国籍を問わない網羅的な所有者把握システムの構築(デジタル一元管理の断行)を急ぐとともに、即効性のある「居住性に基づく税制の壁」を毅然と築くべきです。日本の国土と、次世代が豊かに暮らせる不動産市場を守るため、私たちの立法能力と国家としての覚悟が今まさに問われています。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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