2026/4/28
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
1929年、世界を襲った「ブラック・サーズデー(暗黒の木曜日)」。アメリカに端を発した世界大恐慌は、それまでの経済学の常識を木っ端微塵に破壊しました。失業率は25%を超え、街には仕事を探す人々が溢れかえる。この未曾有の危機に立ち向かい、経済学に「革命」を起こしたのがジョン・メイナード・ケインズです。
ケインズ以前、アダム・スミス以来の古典派経済学には、ある絶対的な「信仰」がありました。それは「市場は自動的に調整される」というものです。「失業者がいれば賃金が下がり、賃金が下がれば企業はまた雇い始める。だから失業は一時的なものだ」と信じられていました。
ケインズの師匠筋にあたるピグーも当初は、最低賃金の保証や解雇制限といった労働者保護を「厚生」の観点から認めつつも、不況に対しては「賃金さえ下がれば雇用は回復する」という立場を崩しませんでした。しかし、現実は残酷でした。賃金を下げても失業者は減らず、景気は底なし沼のように沈んでいく。それまでの「教科書通りの経済学」が、現実の危機を前に全く役に立たなくなったのです。
ケインズは、従来の考え方を根本からひっくり返しました。失業が起きるのは、賃金が高いからでも労働者が怠慢だからでもなく、社会全体の「需要(買い手)」が足りないからだと見抜いたのです。
この「不況の悪循環」に陥ると、市場の力(見えざる手)だけでは二度と抜け出せません。ここでケインズは、禁断ともいえる解決策を提示しました。「市場がダメなら、政府が借金をしてでも無理やりに仕事(需要)を作り出せ」という財政出動の理論です。
ケインズがこれほどまでに雇用にこだわったのは、失業が単なるお金の問題ではないことを知っていたからです。失業は人間の尊厳を奪い、絶望を生み、やがてそれは社会不安や暴力的な革命、ナチスの台頭のような極端な政治勢力を招きます。
「失業を放置することは、民主主義そのものを崩壊させる」。
彼にとっての経済学は、単なる数式のパズルではなく、平和な社会を維持するための「武器」だったのです。ピグーたちが「賃金の調整」を議論している間に、ケインズは「社会の安定」を救おうとしていました。
| 比較 | ピグー・古典派(それまで) | ケインズ(革命) |
|---|---|---|
| 不況のとき | 賃金が下がるのを待てば治る | 政府が財政出動で仕事を作れ |
| 失業の原因 | 名目賃金の調整不足 | 有効需要の不足 |
| 政府の役割 | 余計な干渉は避けるべき | 積極的に市場へ介入せよ |
「長期的には、我々は皆死んでいる」。これはケインズの最も有名な言葉の一つです。「いつか市場が回復するのを待つ」のではなく、「今、目の前で苦しんでいる人を救うために動く」ことの重要性を説いています。
現在の日本も、長く続くデフレや格差、そして将来への不安という「静かな恐慌」の中にあります。数字の帳尻を合わせるだけの政治ではなく、「国民が安心して働き、消費できる環境を政府が責任を持って作る」というケインズの情熱。この視点こそが、今の日本再生の鍵を握っているのではないでしょうか。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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