2026/4/27
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
ピグーといえば「環境税」の生みの親として有名ですが、彼の真の功績は「経済の目的は人々の幸福にある」と定義したことにあります。その視点は当然、労働の現場にも注がれました。彼は、市場に任せるだけでは労働者が不当に扱われ、結果として国全体の活力を削いでしまうと警告したのです。

古典的な経済学では、「賃金は市場で勝手に決まるものだ。無理に上げれば失業が増える」と考えられてきました。しかし、ピグーはこれに異を唱えます。彼は、労働者が弱い立場にある場合、資本家によって賃金が「労働が生み出した価値」よりも低く抑えられてしまう(搾取に近い状態)ことが起きると指摘しました。
そこでピグーは、国家が「最低賃金」を定めることで、労働者の生活水準を底上げし、それが労働意欲の向上や健康維持につながり、最終的には社会全体の生産性を高める(社会的厚生の増大)と考えたのです。
また、ピグーは安易な解雇にも慎重な立場を取りました。企業が不況だからといってすぐに労働者を放り出せば、その労働者が生活苦に陥るだけでなく、社会全体で失業対策費などの「外部コスト」が発生してしまいます。
「企業が解雇によってコストを削減しても、そのしわ寄せが社会全体に行くのであれば、それは経済的に正しいとは言えない」。この考え方は、現代の「解雇制限」や雇用保険の議論の先駆けとなりました。
しかし、ここで弟子筋にあたるケインズと激しくぶつかります。大恐慌の際、ピグーは「名目賃金(額面の給料)を下げれば、企業は人を雇いやすくなり、失業は解決する」という古典派的な主張も持っていました。これに対しケインズは「給料を下げたら消費が減って、余計に不況になる!」と猛反論したのです。
| 論点 | ピグー(厚生経済学) | ケインズ(一般理論) |
|---|---|---|
| 最低賃金 | 生活保障と生産性向上のために必要。 | 需要(消費)を支えるために不可欠。 |
| 不況時の賃金 | 賃金を下げれば雇用が回復する(ピグー効果)。 | 賃金を下げれば需要が冷え込み、逆効果。 |
| 政策の主眼 | 所得の再分配による幸福の底上げ。 | 有効需要の創出による雇用回復。 |
ピグーの理論は、単なる「労働者保護」の慈悲心ではなく、「国民一人ひとりが健やかに暮らせることが、国家にとって最大の経済的利益である」という合理的な計算に基づいています。
現代の日本において、実質賃金が上がらず、雇用が不安定化している現状は、ピグーのいう「厚生の損失」そのものです。数字上のGDPだけを追うのではなく、働く人々の生活の質を担保することこそが、巡り巡って強い日本経済を作る。100年前の「厚生経済学」は、今まさに私たち政治家が立ち返るべき原点ではないでしょうか。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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