2025/10/17
| 小森さだゆき|参政党所属/高槻市議会議員
まず最初にお伝えしておきたいのは、私は議員になる前に イギリス、タイ、シンガポール、マレーシア、オーストラリアの5カ国で約18年間 生活していたということです。 その中で各国の文化や宗教、教育制度を肌で感じ、多くの国籍の友人と共に働いてきました。 ですから、これから述べることは決して差別的な意図ではなく、現地での体験と実際に見た現実をもとに、日本の人材受け入れ政策のあり方を率直に考えたいという問題意識から書くものです。
ニューデリー郊外で訪問したのは、インド政府公認の技能開発機関 NSDC(National Skill Development Corporation)。 ここは政府が主導する「スキル開発と海外就労のための人材育成」の中核機関で、日本やドイツ、中東諸国など海外で働くことを前提に語学・職業訓練を行っています。
中でも「NSDC International Academy」では、日本語やドイツ語教育に加え、介護・建設・農業などの分野で実践的な訓練が進められていました。 日本ではすでに大手介護事業者との協定が進み、技能実習や今後導入される「育成就労」制度に合わせたカリキュラムが整えられています。 日本語の授業では「おはようございます」から始まり、介護現場での基本会話や文化教育まで行われており、まさに“日本で働くための教育インフラ”が整いつつある印象を受けました。

現地で特に印象的だったのは、北東インド(ナガランド、マニプル、アッサムなど)出身者が多いことです。 彼らはモンゴロイド系の民族で、外見的にも日本人に近く、食生活や文化の違いが少ないため、受け入れ環境に適応しやすいと感じました。 看護学部を卒業して看護師資格を持つ人もいれば、数か月の短期研修を経て介護を目指す人もおり、教育水準には差がありますが、総じて真面目で温厚な性格の人が多い。 田舎出身の女性も多く、素朴で実直な印象で、質の高い教育と管理体制を整えれば日本でも十分に通用する介護人材になると感じました。

画像引用元
https://www.zenken.co.jp/news/5491
一方で、北インドの人々はアーリア系民族に分類され、人口が2億4000万人を超えるウッタル・プラデーシュ州など、人口密度が極めて高く競争も激しい地域では、気質的にせっかちで自己主張が強い印象を受けました。 また、宗教上の理由からベジタリアンも一定数おり、食文化の違いが生活面での障壁になることがあります。 宗教的背景や家族観なども日本とは異なり、受け入れの際には文化的理解が欠かせません。
南インドの人々はドラヴィダ系で肌の色が濃く、英語教育の水準が高いため、ITや研究職などの分野では高い評価を得ています。 しかし、一般的な労働層になると文化的・外見的な違いもあり、日本社会に自然に溶け込むには高い語学力と教養が必要だと感じました。 インドという国の中でも地域差が非常に大きく、「インド人材」とひとくくりにすること自体が誤解のもとになりかねません。

介護分野では、医療や看護の基礎教育を受けた人材が多く、教育水準も比較的高い傾向にあります。 日本語や文化理解を深める教育が徹底すれば、質の高い人材として定着する可能性があります。
一方、農業・建設分野では状況が異なります。 農学を学んだ大学出身者は理論に強い一方で、現場労働への適応が難しく、実際に日本へ来るのは農村出身の層が中心です。 教育水準が高いとは言えず、単純労働者として扱われるケースも少なくありません。 建設現場でも日本語力や安全教育が不十分なまま働くケースがあり、事故や離職のリスクも高まっています。
また最近は、物流(トラック・バス運転手)などの職種にも関心が高まっています。 しかしこの分野は社会的地位が低く、教育水準も十分とは言えません。 交通法規や安全意識、日本語理解の欠如は重大事故に直結するため、農業や物流に限定せずこれらの層の受け入れには明確に反対です。
日本政府は「技能実習」「特定技能」「育成就労」などを「移民政策ではない」と説明しています。 しかし現場では、明確に日本での長期就労や定住を目指す人々が増えています。 理由は単純で、介護や建設、物流といった職種は母国に帰っても社会的な地位や給与が低い。 つまり、「日本で技術を学び、帰国後に生かす」という本来の理念はすでに形骸化しており、 制度は実質的に“長期滞在型の労働受け入れ”へと変質しています。
特に懸念されるのが、特定技能1号制度の農業分野です。 この分野では技能評価試験が現地言語(ヒンディー語やベンガル語など)でも受験可能であり、 日本語能力も JFT-Basic または JLPT N4 という、日常生活レベルの日本語理解があれば合格できます。 つまり、極めて低い日本語力でも「特定技能」として日本で就労できるのです。
一方で、介護分野では「介護技能評価試験」と「介護日本語評価試験」への合格が求められ、一定の教育水準と語学力が不可欠です。 この差は非常に大きく、結果として農業分野の門戸が広すぎることで、 事実上、無制限に人材が流入し得る構造が生まれつつあります。 制度上は1号が最長5年、2号では在留期間の上限がなく、家族帯同も認められるという特徴があります。 つまり、特定技能2号へ移行すれば実質的な永住と家族移住が可能となり、 農業分野での拡大は地域社会の治安や労働環境にも長期的な影響を及ぼす恐れがあります。
政府は「人手不足解消」を理由に制度拡大を続けていますが、 日本語教育、生活オリエンテーション、労働安全教育など、受け入れの前提となる環境整備が追いついていません。 理念よりも数合わせが優先されているのが現状で、日本の受け入れ先が大手企業であれば管理や教育も一定水準を確保できますが、 中小企業などではパワハラやコミュニケーションの問題など、現場トラブルが多発しています。
NSDCを訪問して痛感したのは、インド国内の教育格差と地域差の大きさ、 そして日本がその現実を十分に理解しないまま、「人手不足」という言葉のもとで制度を拡大している危うさです。
これから必要なのは、「どの層を、どの分野で、どのように受け入れるのか」という国家戦略の明確化です。 分野ごとに条件を整理し、一定期間の就労後は帰国を前提とするか、 もし永住を認めるのであれば、国家資格の取得や納税状況、遵法意識などを基準にするべきです。
まずは日本人の雇用機会を確保し、それでも不足する分野に限って海外人材の力を借りる。 そうした順序と哲学が日本には必要です。
今のままでは、「技能移転」という理想が「低賃金労働力確保」の道具にすり替わり、無秩序な移民受け入れになっている。 日本社会がどのような未来を描くのか――いまこそ、その覚悟が政治家のみならず国民にも問われています。
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