長田 たくや ブログ

【地下鉄サリン事件】 サリンの毒性を知ろう

2025/3/21

こんにちは。兵庫県川西市議会議員の長田たくや(ながたく)です。

今から30年前の1995年3月20日、地下鉄サリン事件(東京)が起こりました。当時12歳だった私は、初めて”サリン”という言葉を知りました。
サリン工場とカナリア(①なぜカナリア?
サリンの毒性を解説(今回)
オウムという組織(③宗教組織なのか

サリン

ちょっとだけサリンに詳しくなってみましょう。1936年12月23日にナチス・ドイツにて、殺虫剤の合成中偶然に発見されました。第1次大戦時に、ヒトラー自身が毒ガス被害者でもあったため、戦争での毒ガス使用には最後まで消極的だったとのこと。

構造式はシンプルなもので、アセチルコリンという物質に非常によく似ています。これがキーになります。なお、サリン自体は非常に不安定で、水や熱ですぐに分解されてしまいます。そのため、熱保護をしなければミサイルに搭載できず、ダムなどに混入もできないそうです。

しかし、毒性は非常に強く、吸入だけでなく皮膚からも吸収され、致死量はたった1.5mlとのこと。そのため、ガスマスクだけではなく防護服が必須でした。

なぜ毒なのか?

アセチルコリンと似ていると書きました。このアセチルコリンという物質は、神経と神経の間の橋渡し役の物質です。Achと略しますが、下図は、人間の神経になります。ほぼすべてにAchが関連していることになります。身体にとって、とても重要な物質ですね。

参照:看護roo

アセチルコリンは、増えすぎると神経がめちゃくちゃになってしまうため、制御機能が存在しています。つまり、増えすぎたアセチルコリンをしばき倒す役目をもった酵素がいるのです。それをアセチルコリンエステラーゼと言います。エステラーゼとは、エステル結合を切ると言う意味です。ァ~ゼは、酵素を意味します。

アセチルコリンエステラーゼの働き

増えすぎたアセチルコリンを消すために、アセチルコリンエステラーゼは以下のような働きをします。下図を見ますと、Achのエステル結合が切り離されていることがわかります。こうやってアセチルコリンはその機能を失います(失活)。

サリンはアセチルコリンとよく似ていると言いました。サリンが吸収されると、アセチルコリンの代わりにコリンエステラーゼにくっつくのです。しかも、P=O結合は非常に強く、切れないためにずっと離れてくれません。つまり、アセチルコリンエステラーゼが機能不全に陥ります。するとアセチルコリンが分解されずに増え続けてしまうのです。

アセチルコリンが増えすぎることを、コリン作動性クリーゼと言います。
最初は、下痢やめまいと言った症状ですが、筋肉がけいれんを起こし、最終的には死亡してしまいます。解毒薬もあって、アセチルコリンエステラーゼにくっついているサリンを分解することができます(プラリドキシムヨウ化メチル:PAM)。時間との勝負なのは明らかですよね。

有機リン系の殺虫剤も、似たような構造をしています。パラチオンは有機リン系殺虫剤ですが、殺人にも使われてしまい使用禁止になりました。殺虫剤の研究で生まれたというのがよくわかるほど、核となる構造は同じですね。

このことから、有機リン系農薬からサリンがつくれる!とマスメディア様たちがデマの大騒ぎをしていたそうです。サリンは不安定な物質で、プラント施設がなければ簡単には製造できないそうで、当時も専門家がそのことを指摘していました。

それにも関わらず、インターネットがなかった時代です。普通はそんなアホなこともすぐにわかるのでしょうけど、当時はテレビと新聞だけが情報源でした。結果として、第1発見者でもあった河野義行氏は、警察・マスコミからの冤罪被害者となってしまいました。コロナの時も似たようなことになってたな・・・
「会社員宅から薬品押収 農薬調合に失敗か 松本ガス中毒」(朝日新聞 1994年6月29日朝刊1面)
参照:報道の在り方に警鐘 松本サリン事件第一通報者 河野さん
参照:平成22年度「犯罪被害者週間」国民のつどい実施報告

医薬品にもなっているコリンエステラーゼ阻害

サリンはくっついたら離れないという”不可逆性”の阻害反応ですが、くっついたり離れたりできる”可逆性”ならば医薬品に活用できるとされ、以下のような薬剤があります。実は、認知症の薬も根本のメカニズムは同じく、コリンエステラーゼ阻害になります。エステル結合が必ずありますね。

ウブレチドというお薬でありえないことが起こりました。マグミット錠という白いお薬と間違って機械に装填されてしまい、そのまま患者に払い出されてしまう事件がありました。先ほど説明した毒性の”コリン作動性クリーゼ”が発生し、お亡くなりなっています。

サリンのコリンエステラーゼ阻害作用というメカニズムは、医薬品にもよくあるものです。毒ガスには他にも違ったメカニズムがあり、よく似た医薬品も存在します。つまりは、程度の違いが益となすか害となすかなのですね。そのような薬については、またの機会に書きましょう。需要があるかわかりませんが^^;

次はオウム真理教を組織として考えてみたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
素敵な1日になりますように。ご意見・ご感想はこちらまで
takuya_nagata_1026@yahoo.co.jp

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