2023/9/29
「戦争反対!」に反対する人はいないのではないでしょうか?
4年前に全衆議院議員の丸山穂高さんが「北方領土を戦争で取り戻すことに賛成ですか?反対ですか?」
と質問しただけで大騒動になりました。戦争に対する日本人のアレルギー反応だったと思います。
では、戦争っていったいなんでしょうか?
交通戦争、受験戦争、にゃんこ大戦争など多くの場面で「戦争」という言葉が使われています。
ここでは、国家間の戦争について考えてみたいと思います。
国家間のことは国際法というルールに基づいて行われます。
では、国際法上の「戦争」とはなんでしょうか。
戦争というと、兵隊や戦車、戦闘機が出撃して、攻撃しあう状態を想像すると思います。
武力行使=戦争、と考えている人が多いと思います。
丸山穂高さんが「北方領土を戦争で取り返す」というテーマを投げかけたとき、多くの人は「軍隊(自衛隊)を派遣して武力行使で取り戻す」ことを想像したのだと思います。
サンフランシスコ平和条約は、日本と連合国との戦争状態を終結するために締結された条約です。条約締結国には、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカなど南米の国が含まれています。でも、私の理解では、日本はこれらの国と1発の銃弾もかわしていません。つまり、武力行使を相互に行っていないのです。でも、日本とこれらの南米の国は確かに戦争状態でした。
戦争とは、戦時国際法が適用される法的状態を言います。
平時であれば、外国の軍人を殺したら問題になります。でも、戦争になればそれが許されます。
戦争であっても民間人を殺すことは許されていません。第三国は中立国となり、戦争当事国に武器の供給などができなくなります。
戦争は、宣戦布告に始まり、講和条約(平和条約)で終結します。
日本は、明治維新後、4回戦争を始めています。日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦(対ドイツ)、第二次世界大戦(対米英)です。
「日中戦争」といわれますが、戦前は、「支那事変」と呼んでいました。これは閣議決定された正式名称です。宣戦布告をしていないので、「戦争」ではありません。大日本帝国時代、宣戦布告の文書は4つありますが、日清、日露、第一次、第二次大戦に関するものであり(「救国のアーカイブ」倉山満著参照)、中国に対して宣戦布告したものはありません。
第二次世界大戦で、日本はアメリカとイギリスに宣戦布告をしましたが、サンフランシスコ平和条約は、49カ国が署名しました。日本が戦争に負けるとわかった段階で、世界各国が日本に対して宣戦布告をしたからです。
「戦争放棄」を謳っている憲法9条を守れ!という意見がありますが、日本が戦争を放棄して宣戦布告を禁じたとしても、他国から宣戦布告をされたら「戦争」になります。戦争は、双方の同意で成立するものではなく、一方の宣戦布告で始まってしまうものだからです。憲法9条を守ったからといって、戦争にならないわけではありません。
サンフランシスコ平和条約の署名国には、中国の名前がありません。1972年に締結された「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」がありますが、そこには、戦争を終結するという文言はありません。日本は中国と戦争をしていないから、と私は解釈をしています。
(2023年訂正)1941年12月8日、中国が日本に宣戦布告していました。1952年4月28日の日華平和条約第一条「日本国と中華民国との間の戦争状態は、この条約が効力を生ずる日に終了する」とありました。支那事変は日本がアメリカに宣戦布告した日に、中国の対日宣戦布告によって日中戦争になっていたようです。1972年の「日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約」は、中華人民共和国が中華民国の後継政府なので、新たに戦争終結を条約で決める必要がなかったようです。
ソ連は、1945年8月8日に日本に対して宣戦布告をしたので、日本とソ連は戦争状態になりました。日ソの戦争状態を終結させた平和条約は「日ソ共同宣言」です。
「1 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は、この宣言が効力を生ずる日に終了し、両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される」。
と明記されています。
宣言という名称ですが、「平和条約」です。
歯舞群島及び色丹島は「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする」。
と、日ソ共同宣言に書いてあり、まだ日本とロシアは平和条約を締結していないため戦争状態が続いている、と著書に書いている大物政治家がいますが、政府の見解とは異なっています。
日ソ共同宣言という「平和条約」を締結して日本とソ連(ロシア)は戦争を終えています。
歯舞、色丹を返還するための「平和条約」という名前の条約はまだ締結されていませんが、これは戦争を終結するための「平和条約」とは別のものです。
ソ連がサン・フランシスコ平和条約への署名を拒否したため、我が国はソ連との間で平和条約交渉を別途行うこととなり、1956年、日ソ両国は日ソ共同宣言を締結して、戦争状態を終了させ、外交関係を再開しました。日ソ共同宣言は、日ソ両国の立法府での承認を受けて批准された法的拘束力を有する条約です。
外務省ホームページ「北方領土問題に関するQ&A」
この国際法上の「戦争」は、不戦条約と国連憲章によって禁じられました。
日本が憲法9条で放棄した「戦争」も国際法上の戦争です。
武力行使が国際法上許されていた「戦争」は今は、禁止されていますが、
自衛権行使による武力行使と国連憲章42条に基づく武力行使は禁止されていません。
つまり、今の世界では、場合によっては今でも武力行使が必要です。
そして、国際法の解釈は、どこがするのかという問題があります。それは、主権国家がします。
なので、「これは自衛権の行使だ」とある国が言えば、それに対して他の国が別の解釈を強要することはできません。
結局、人類がやめたかったのは、国同士が人を殺し合うことだったのだと思います。
以前の戦争は、国家間の戦争をする際のルールを決めたものでした。そのルールが廃止され、ただ、武力行使が残ったのですから、なんなのこれ?とは思います。
一方、例えばですが、羽田空港に着陸している飛行機をテロリストが人質をとって立てこもっているとします。
日本政府としては、人質の解放とテロリストの逮捕を目的として、警察を派遣します。
警察は、粘り強く交渉を行います。しかし、交渉は難航し、人質の命が危ないとなって、
警察が飛行機に突入し、発砲などの実力行使をして、テロリストを殺害し、人質を救出したとします。
私は、このような場合、警察が実力行使にでることを容認します。
国家間での武力行使もこれに近いものがあります。
世界には、国家を超える上位組織がありません。
世界には、警察官がいないため、自分たちで守らなければならないのです。それが自衛権だと理解しています。
国際法上の「戦争」に関しては、私が大学生の頃に、法政大学杉山茂雄教授の国際法のゼミで教わった内容です。30年近く前の知識になりますが、最近読んだ倉山満氏の本にも同様の内容が書かれていました。
国際法に関しては、色々な解釈があります。学者の数だけ国際法がある、という人もいるくらいです。
杉山茂雄教授は、「学者は国際法の立法者ではない」という考えの立場であり、現実に即して国際法を解釈するという立場でした。上に書かれた内容は、現実の証拠を根拠として、「戦争」とはなにかを書きました。
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モリヤマ ヒデキ/歳/男
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