2026/9/10
先日、兵庫県立こども病院に隣接する「ドナルド・マクドナルド・ハウス 神戸ハウス」を訪問し、現場の取り組みや現状について深く意見交換をさせていただきました。
「マクドナルド・ハウス」という名前は多くの方に知られていると思いますが、単なる宿泊施設ではありません。病気で入院・治療を受けるお子様と、それに付き添うご家族が「第2の我が家」として滞在し、温かい日常に近い生活を取り戻すための「家族滞在施設」です。
今回、ハウスの現場スタッフの皆様から直接伺ったお話を通じて、小児医療を取り巻くご家族の過酷な現状と、私たちが国政で取り組むべき明確な課題が浮き彫りになりました。
マクドナルド・ハウスは50年以上前、アメリカ・フィラデルフィアで白血病のお子さんを持つフットボール選手の付き添い体験から始まりました。「付き添う家族にもくつろげる場所が必要だ」という思いに、医療従事者、地元のマクドナルドフランチャイズオーナー、市民の募金活動が集まり、第1号ハウスが誕生したのです。
ここで知っていただきたい大切な視点があります。
現場のスタッフの方が仰っていたのは、「マクドナルドという1企業の利益で運営されているわけではない」ということです。
マクドナルド様は人的・物的な大切なミッションパートナーですが、ハウスの運営費は100%皆様からの寄付と募金で成り立っています。
また、世界380箇所以上、日本国内にも12のハウスと2つのファミリールームがありますが、特に神戸ハウスは兵庫県が建物を設置し、運営を財団が担う形で西日本の高度小児医療を支えており、常に高い稼働率となっています。
さらに今年4月からは、経済的負担を少しでも減らすため、利用料の完全無償化に踏み切られました。神戸ハウスだけでも年間約800万円(全国では約6,000万円)の滞在費収入をカットし、すべて自主的な寄付・支援で補う決断をされたのです。
今回の訪問で、現場のスタッフ様から投げかけられた切実な問題意識や課題は、以下のようなものでした。
病院内の過酷な付き添い環境
病院側も病気を治すことに全力を尽くしていますが、大人が入れるシャワーが1台、洗濯機が2台といった環境で、毎日40〜50名ものご家族がお子さんの狭いベッドの横で過ごされています。ハウスがあることで、隙間時間に体を休めたり仮眠をとったりできる「リセットの場所」が必要不可欠になっています。
ボランティア活動の工夫と「交通費負担」の課題
ハウスの清掃やミールプログラム(手作り夕食の提供)などは、多くのボランティアに支えられています。
長年活動を続けてもらうため、「あえて少し物足りない(また来たいと思える)ペース」でシフトを組む工夫がなされていますが、一方でボランティアの方々が毎回交通費を自己負担して参加されているという現実があります(神戸の場合はポートアイランドへの交通費など)。善意だけに頼る運用には限界があります。
行政補助金・公的支援申請の「ハードル高さ」
小児がんのターミナルケアやお看取りに伴う外泊支援など、公的な支援制度や補助金が存在していても、「医師の意見書」「ソーシャルワーカーの介入」「チーム編成」など申請プロセスがあまりに煩雑でハードルが高いという指摘がありました。小さな団体や個人で活動している支援者ほど、せっかくの制度を使えていないという実態があります。
高度小児医療の「集約化」に伴う長距離移動
国の指定病院の集約化(15病院から12病院等への集約など)が進む中、地方の大学病院でも確定診断が難しい症例が神戸のような専門病院に集まってきます。遠方からの移動・滞在コストは増大し、移住を余儀なくされるご家族もいらっしゃいます。
私自身、長年介護事業所を運営してきた経験や、子育て支援・小児医療の課題に向き合ってきた立場から、現在の日本の小児医療制度には大きな歪みがあると感じています。
現在の医療報酬制度は基本的に「大人」を基準に設計されています。小児医療は手厚い看護師や院内学級の先生など多くの人手が必要ですが、病院が手厚くすればするほど赤字になるという構造があります。結果として、「親の付き添い(添い寝や世話)」に過度に依存する構造が昔から続いてしまっています。
身体的・精神的限界: 簡易ベッドでの付き添い、コンビニ弁当中心の偏った食事による健康悪化。
きょうだい児の問題: 入院したお子さんに親がつきっきりになることで、家に残されたきょうだいが孤立・寂しさを深める問題。
経済的困窮: 長期療養に伴う付き添いのため、共働きのご家庭でもどちらかが離職を余儀なくされ、家庭経済が破綻してしまうケース。
子どもの病気は決して生活習慣病ではなく「不可抗力」です。にもかかわらず、その負担がすべてご家族個人・自己責任に委ねられている現状は、先進国として変えていかなければなりません。
現在、私は財務委員として予算編む側の議論にも関わっています。国家予算から見れば、現場が必要としている支援額は決して不可能な数字ではありません。
今回の視察と現場からの声を携え、私は以下の取り組みを国政・政府へ力強く働きかけてまいります。
ボランティア活動への実費(交通費等)支援の創設
地域社会の共助・ボランティア文化を根付かせるためにも、社会福祉協議会などを通じて「せめて交通費程度の実費支給」が国や自治体からスムーズに出る仕組みを作ります。
補助金・支援制度の申請プロセスの簡素化・ハードル緩和
こども家庭庁等に対し、現場の支援団体やご家族がスムーズに使えるよう、手続きの標準化とハードル低減を直接質疑・要請します。
骨太の方針・予算への盛り込みと小児医療報酬の見直し
来期の「骨太の方針」に、小児医療における患者家族への包括的ケア支援や診療報酬の適正化に向けた文言を書き込み、明確な予算根拠を作ります。
「子ども保険」等の財源確保と社会全体での支え合い
介護保険ができたことで「家族だけで抱え込まなくていい」という意識変化が生まれたように、子育て・小児医療・育児支援を社会全体・税で分担して支える大きな枠組みの実現を目指します。
病気と闘うお子様はもちろん、その横で必死に支えているお父様、お母様、そしてご家族全員が孤立せず、安心して医療を受けられる社会を作ること。
現場で汗を流すボランティアやスタッフの皆様の思いを無駄にせず、制度や予算という「形」にして届けるのが政治家の責務です。
引き続き、現場の声を国政へ届けるため全力を尽くしてまいります。皆様のご意見やご感想もぜひお寄せください。
【ハートフルカートの役割と特徴】
院内・病棟訪問のための移動カート 寄付で寄せられたお菓子や日用品、おむつ、おもちゃなどを載せて病棟内を巡回し、入院中のお子様や付き添いのご家族に自由にお選びいただいてプレゼントする活動に使用されます。
社会経験・疑似体験の機会を提供 長期間の入院生活で「自分で選んで買う」という日常の買い物の機会が減ってしまうお子様にとって、カートから好きなお菓子やおもちゃを自分で選ぶこと自体が貴重な社会体験や気晴らしになります。
ご家族への精神的支援 見知らぬ誰かからの温かい応援(寄付品)が形となって届くため、付き添いで疲弊している保護者の方々にとっても大きな精神的支えや安心感につながっています。
認知拡大の役割 病院内をカートが走ることで、隣接するマクドナルド・ハウスの存在を知らない患者さんやご家族にハウスの認知を広げるきっかけにもなっています。
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