2026/7/1
介護の現場で20年以上、最前線を見つめ続けてきました。そしてこの18年間、私は仕事や視察で何度も中国へ足を運んでいます。
今、介護の世界に身を置く私たちが知っておくべき、巨大な地殻変動が隣国で起きています。
2026年3月25日、中国政府は「長期介護保険制度」を3年以内(2028年末まで)に全国展開すると正式に発表しました。
中国では「第6の社会保険」と呼ばれるこの制度。高齢者人口3億2千万人、要介護者(失能者)約4,500万人という気が遠くなるような巨大な分母を支える制度ですから、日本の現場を知る身としては「費用も人材も、一体どうやって支えていくのか」と、その凄まじい大変さに圧倒されます。
しかし、この18年間リアルな中国の爆発的な進化を目撃してきた私には、一つの確信があります。 彼らは、テクノロジーの力を最大限に発揮して、あっという間に日本の介護技術を追い抜いていくだろうということです。
翻って、我が国・日本の現状はどうでしょうか。
私は介護業界におけるICT化の取り組みで雑誌に取り上げていただき、全国で講演活動を繰り返し行ってから、早いもので10年が経ちます。しかし、現場の基本的な取り組みは、この10年間ほとんど進歩していないというのが私の実感です。
多くの現場では、せっかく導入したタブレットに向かう時間を、ただ現場のスタッフ任せにしてしまっています。これでは業務効率化どころか、ただ書面の記録がデジタルに置き換わっただけで、現場の負担は変わりません。
なぜ、そんなところで足踏みしてしまうのか。理由は明確です。 現場をマネジメントする「中間管理職」が圧倒的に不足していること、そして個々の介護企業の運営規模が小さすぎることにあります。
日本にはすでに、ベッドや部屋に設置したセンサーから自動で生体バイタルや行動を記録し、そのまま介護保険請求まで一気通貫で行える素晴らしい技術が存在します。しかし、これが現場に普及しません。なぜなら、「個人のプライバシー」や「見守りに対する心理的抵抗」といった壁が立ちはだかり、なかなか前に進められないからです。
こうした日本のハードルを、一気に飛び越えて進めることができるのが中国です。これは、国の制度やプライバシーに対する考え方の違いが大きく影響しています。
昨年、私は中国に渡った際、タクシーの進化に言葉を失いました。 街を走るタクシーは完全に電気自動車(EV)化され、完全なライドシェア(配車アプリ管理)へと移行していました。
かつて中国のタクシーといえば、激しい相乗り、定員オーバー、料金のふっかけなど、お世辞にも統制が取れているとは言えない状態でした。それが今や、テクノロジーの力によって、運行のすべてが可視化され、「人のミスや悪意を最初から排除して、規制を守らざるを得ない仕組み」へと完全に激変していたのです。
彼らはこの強力なトップダウンとテクノロジーの仕組みを、そのまま「介護」にも適応してくるでしょう。介護記録の自動化、センサーによる管理、中抜きの排除など、凄まじいスピードで「スマート介護」の実装を進めていくはずです。
しかし、ここで立ち止まって考える必要があります。 「テクノロジーによる完全な効率化=人間の幸せ」なのでしょうか?
世界の医療・介護関係者が日本の現場を見て一様に羨むのは、最新の医療機材やハードウェアの面ではありません。 「誰も見ていなくても、高い誇りを持って自分の仕事をやり抜く”人(ソフト面)”の質」であり、妥協のない「衛生面」です。
どれだけ中国がテクノロジーで猛追してきたとしても、この「現場の人間力」や「細やかなおもてなしの精神」というソフト面をキャッチアップするには、相当な時間が必要なはずです。
だからこそ、日本にはまだ大きなチャンスが残されています。 私たちが今まで愚直に、真面目に守り続けてきた「介護記録」という膨大な財産。これをただの紙切れや、眠らせたデータにしておくのはもったいない。
これらをしっかりとデータ化して高度に分析し、「同じアジア人として、どのような予防やケアを行えば、要介護度を悪化させずに健康寿命を延ばせるか」という知見をパッケージ化し、商業化(ビジネス化)していくこと。
これこそが、超高齢社会の先駆者である日本が、これから世界、そしてアジアの巨大市場に向けて提示できる「最後の切り札」ではないでしょうか。
効率化の中国、質の日本。激動の時代を迎える介護業界の中で、私たちは今一度、自分たちの強みがどこにあるのかを見つめ直す時に来ています。
だからこそ、私は政治の世界を志し、皆様から温かいご支援をいただきました。
現場で23年間、最前線を見つめ続けてきた私だからこそ、この日本が持つ「現場の力」と「データの価値」を国政の場で活かし、制度として守り抜く責任があると確信しています。今、皆様からお預かりしているこの政治家という社会的役割を、現場の皆様、そして国民の皆様と共に最大限に活かしていきたいと考えています。
日本が誇る「最後の切り札」を活かし、持続可能で世界に誇れる介護の未来を創るために。
ぜひ、現場のリアルな声や、これからの日本の介護ICT・データ活用に対する皆様のご意見、ご提案をお寄せください。皆様と共に、この国の新しい福祉の形を形作っていきたいと願っています。
ご意見はこちらから↓是非、お願い致します。
#第6の社会保険 #スマート介護 #介護ICT #介護現場のリアル #介護の未来 #日本の現場力 #最後の切り札 #介護DX
#一谷勇一郎

この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>一谷 勇一郎 (イチタニ ユウイチロウ)>中国で介護保険が本格始動、日本の現場が変わらない本当の理由と、私たちが持つ「最後の切り札」