2026/8/6
<日程>令和8年7月29日(水)
<主催者>地方議員研究会
<講師>元・廿日市市副市長 川本 達志
1期目議員のための議員活動新人研修 1
研修概要
【新人議員の疑問】
議員は何を決める人なのか?・・・議会と首長の関係は?・・・会派に入るべきか?・・・議会事務局にはどこまで頼んで良いのか?・・・執行部職員にはどこまで聞いて良いのか?・・・要望と政策提案は何が違うのか?・・・議案に賛否を決める基準は何か?・・・住民相談と口利きの境界はどこか?・・・SNSで何を書いて良いのか?・・・先輩議員の助言をどこまで聞くべきか?・・・事務局、職員、住民との距離感はどう取るか?
これらはすべて重要かつ根本的な疑問。即席の答えを求めない。しっかりした根拠を確認して自分なりの答えを見つけることが大切。先輩議員から聞いた答えを安易に受け入れないこと。
セミナー1でお話しすることは
・あなたは何のために議員になったのか
・自己認識:議員の役割と責任
・するべきは課題の発見と仮説の提案
・財政制度と予算の理解は基本
研修内容
1.議員としての本来の存在意義を自己認識すること
○首長は提案と執行をする。議員は対話と討論、調査そして意思決定をする。
地方自治法第1条の2 地方自治体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
第89条 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織される議会を置く。
※議事機関
国家、公共団体などの団体において意思決定をする合議制の機関。国会、地方議会、株主総会などをいう。
○二元代表制は地方自治の役割分担
地方議員はあくまでも「行政のなかの人」であることに注意が必要。
執行部と議会という二つの代表機関=役所(行政機関)
○議会の権限と議員の権威について
議会は、議決をする権限を持つ代表機関であるが、議員個人に法的な決定権限はない。
議員は住民から信頼されてこそ活動ができる。これを権威という。選挙で選ばれたから権威があるのではない。だから議員は行政に関する適切な専門知識を持ち、法や倫理に従って活動しなければならない。
※学習せず「常識で判断しました」などと言うのは、住民にとって不幸
○行政の内部で重要な意思決定を行う議員として「自主的、総合的に」職務を遂行するためには、基礎知識として、まず、
・地方自治とは何か
・地方財政の仕組みはどうなっているのか
・議決機関である議会はどのようにしてその機能を発揮するのか
・議員として行使できる権能は何か
・首長はどのようにして施策決定し、職員はどのような仕事をしているか
を知る必要がある。これらは、これまでの生活にはあまり必要ではなかったことだが、1期目はまずはこれらを学ばねばならない。
2.地方議員として最低限必要な基礎知識(ルール)
・地方自治の本旨
・地方公共団体の事務
・地方議会の権限
・長と議会の関係
・住民の権利義務
・地方財政制度
・予算編成の手順と決算 etc.
こうしたことを体系的に学ぶべき。先輩議員に聞いても判らない(人が多い)。
3.学ばなければ「ゲーム」には勝てない
○議員が役所の意思決定に影響を及ぼそうとするのはある種の「ゲーム」
・議会の議決には執行部は従う義務がある。議決に影響を与えるような議員活動は有効。
・一方、議員の「提案」「要望」「陳情」は、執行部にとって従う法的義務はない。
○ゲームに参加するための「ルール」をまず知ろう
・地方自治制度、地方財政制度、そして議員の権能はゲームに参加するための基本的なルール。
・議会活動という「ゲーム」で最も役立つ武器は、知識と情報と仲間。
・キャラクター(経歴、押しの強さ、脅しすかし、ユーモア、など)は選挙には重要だが、それでは議員の役割は果たせない。(知識的には常識人であれば良いというのは大間違い)
福岡県議会は古い議会の典型。ああなってはいけない。知識と情報と仲間で時代を変えて下さい!
○職員はプログラム通りにしか動かない、不都合なことは言わない
・既存の制度の修正、改善の要求、提案のためには、既存制度を根本から知る必要がある。しかし、職員は「議員は学習しない」と高を括っているから、制度が現状に則していない場合も不都合なことは言わない。
・新たな制度や政策導入の提案をしたい場合も、既存の制度では解決できないことを示すことが重要であり、既存の制度は新たな制度提案の基礎になる。既存制度の学習は必須。これをやらない議員は職員に馬鹿にされている。
4.学習方法
○基礎知識は基本的には「専門書」を読む事から しかし理解することは中々難しい
・例えば「議員必携」を読んで用語の意味を知っておく。その後、こうしたセミナーを受ける。
・本セミナーの評価が比較的高いのは、必要なことをピンポイントで押さえ、現場を踏まえた実学が学べるから。解らないところを聞きながら基本から学ぶ。
・JIAMの講師陣は大学の教授等非常に優秀。しかし内容は中級者向き。今回のセミナー後半で「決算カード」の基礎知識を教えるのも、1期生がいきなりJIAM研修を受けても理解できずに立ち往生してしまう。
○先輩議員に教えてもらってダメになる例
①質問の“型”だけ覚えて、課題設定をしなくなる
「一般質問は、本市の現状は、課題は、今後の取り組みは、の順でやれ」
⇒一見、質問らしく見えるが、実際には行政の説明を引き出して終わり
②「波風を立てるな」を覚えて、住民の違和感を議場に出せなくなる
「最初のうちは執行部と揉めるな」「あまり厳しく言うと嫌われる」
⇒住民から見れば何もしていない議員になる
③行政に教えてもらう議員になってしまう
「担当課に聞けば教えてくれる」「質問は職員に相談して作ればいい」
⇒議員がすべきことは、行政の説明を理解した上で課題を明確にすること
④“根回しこそ議会”と覚えて、公開の討議を軽視する(昭和型)
「議場で議論する前に裏で決めておけ」「本会議、委員会では揉めるな」
⇒議会が決めたことになっても、何故そう決めたかを説明できない
⑤“住民要望の取次ぎ”が議員の仕事だと思い込む
「住民の声を役所につなぐのが仕事」「住民要望を早く動かせる議員が強い」
⇒個別要望を政策課題に翻訳(政策提案)出来なくなる
5.既存の制度等の内容は「係長」に聞こう
○メリット
①役所内でもっとも制度に精通しているは担当係長
②係長に聞くことで執行部とのコミュニケーションが生まれ、周りの職員(課長等)との関係も築きやすくなる。
※控室に呼んではいけない。密室でやるな。職員は見ている。
○留意点
①係長とは学習目的で教えを乞う。制度の改善などの要望は課長以上に。
②最も忙しいポジションなので、煩雑に聞きに行かないこと。予備学習は必須。理解力のある人には係長も教えやすい。
6.役所内に人脈を作ろう
1期目は役所の職員の中に人脈を作り、上手に使い、政策提案をする準備を。
職員とのコミュニケーションによって、課題が見えてくることもある
○議員と職員の関係
※職員からみた議員の見え方

7.基礎知識としての予算・財政のポイント
✔議員が最低限知っておくべき予算のルール
◎予算議決は「予算書」=「款・項」まで
※目・節は説明資料=事項別明細書
執行部で目間流用可能(学術的には)だが、議会的には説明を求めるべき。
・地方自治法第97条第2項(予算への関与)
議会は、予算について、増額してこれを議決することは妨げない。但し、普通公共団体の長の予算提出の権限を侵すことは出来ない
※増額修正も可能。但し、財源を示す必要がある(財政調整基金等)。
・地方自治法第115条の3
普通公共団体の議会が議案に対する修正の動議を議題とするに当たっては、議員の定数の十二分の一以上の発議によらなければならない
※議案修正も可能。但し、仲間が必要。
✔予算審議とは
◎予算とは、一年間に実施する事業を「歳入(財源)」と「歳出(事業計画)」の両面から表したものである。それらの事業の束が「款」や「項」。
※地方公共団体は「入るを計りて出るを制す」。
国はこの逆。まずやるべきことを先に決める。「出るを計りて入るを制する」
○予算審議とは、「財源(特に一般財源)」を確認し、「事業計画」(歳出)を、必要性、効率性、有効性の視点から審議するもの。
「事業計画」の内容である「事務事業」が適切であるか審議する。
✔予算審議の視点
・経常収支比率…予算編成の自由度はどれくらいあるか
・実質公債費比率…借金の負担は他の支出の自由度を制約するほど大きいか。
これらを頭に入れながら、それぞれの市町の決算カードの見方を説明
✔「予算がない」とは
人口減少・高齢化の現状と課題に対応した新しい施策(DX・環境・教育など)に十分な予算を配分できていますか?
出来ていない?=予算がない
・財政の弾力性がない(収支の逼迫) 自由に使えるカネがない
・貯金がない(備えがない) 財政調整基金は標準財政規模の10~20%
・政策の優先順位が低い(必要性が低い)
【質疑応答】
Q:実質収支比率が10%超えてる市の議員からの質問。実質収支比率が高いというのは余裕があると解釈して良いか?
A;財政に余裕があるわけではなく、10%以上水増しされた予算を示されている可能性を疑いましょう。まず決算をきちんと審査することです。過大な見積もりだったのではありませんか。そうした場合、役人は楽ですが、住民福祉の向上にはつながりません。
Q;例えば中心市街地活性化について、当局に調査をしろという提案はしやすい。 こちらで調査したいが、データは執行部が持っている場合、どうすれば良いか?A;調査を議員側ができないわけではない。 ただ、どこの市町も議会事務局機能が弱い。人流データなども事務局が調査してあげれば良い。しかしアウトプットは全ての議員で共有しなければならない。それを持って何を解決するかが重要。
Q;議事調査担当に投げても一行回答しか来ない。
A;そこがひとり会派の弱点。まともな調査予算(政務活動費)がつかない。
Q;議会だよりが見難い。変えていきたいけどひとり会派はどうすれば良いか?A;会派に入ってみたらどうですか。 1人で戦う限界があります。参加しなければ変えられません。そこには我慢も必要。
Q;決算予算委員会はあった方が良いのか
A;監査委員も入れて常任委員会を分科会にすれば良い。予算を審議した人が決算も見た方が良い。
Q;議会事務局人事は議長人事だというが、増員したい場合はどうすれば?
A;定数条例を確認してください。条例を改正し予算化すべきです。
Q;○○県では最大会派にだけ事前に予算説明していたり、他の会派の質問を横流ししていたと報道されている。これをどう思うか?
A;最大会派に説明することで議会運営をスムーズにできるのだろう。但し、デメリットは大きい。機関への議論にかからないので一切記録に残らない。常任委員会に説明すれば議事録に残る。会派というのはあくまでも事実行為にすぎない。
考察
付き添いひとりまでOKというので、人気の新人議員向け研修に参加してみた。 職員からみた議員という説明には耳が痛かった。こういう議員になってはいけませんという警鐘。
参加費が1000円と格安なのも、「このセミナーによって日本の民主主義を守りたいんです」という川本講師の熱のこもった説明に納得。川本講師は広島県に入庁され、長く市町村の行財政指導をしていた方と伺った。元廿日市市副市長でもあり、最近マスコミを賑わせている県議会の話を「民主主義の危機」だと力説されていた。○○県議会は古い議会の典型。ああなってはいけない。知識と情報と仲間で時代を変えて下さい!といった悲痛な叫びには深く共感させられた。
ひとりで闘うな!仲間を作りなさい、という主張は、先日の静岡県市町議員研修会の片山元鳥取県知事のご説明とは全く異なっていて興味深いが、こちらは受講者のメインが新人議員という事で、「一人で勉強するには限界がある」という優しいアドバイスなのだろう。
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